【佐藤一郎】投稿一覧

佐藤一郎
佐藤一郎

佐藤一郎

国立情報学研究所 教授

国立情報学研究所 教授

1991年慶應義塾大学電気工学科卒、96年同博士課程修了、博士(工学)。2006年より国立情報学研究所教授、また総合研究大学院大学教授(併任)。専門は情報学、特にOSやミドルウェアなどのシステムソフトウェア。この他、個人情報保護法の改正作業を含む、数多くの府省の政府検討会構成員、またデジタル庁政策評価に関する有識者会議座長などを歴任。
【注目するニュース分野】コンピュータサイエンス、テクノロジー、デジタル政策、科学技術政策

1991年慶應義塾大学電気工学科卒、96年同博士課程修了、博士(工学)。2006年より国立情報学研究所教授、また総合研究大学院大学教授(併任)。専門は情報学、特にOSやミドルウェアなどのシステムソフトウェア。この他、個人情報保護法の改正作業を含む、数多くの府省の政府検討会構成員、またデジタル庁政策評価に関する有識者会議座長などを歴任。
【注目するニュース分野】コンピュータサイエンス、テクノロジー、デジタル政策、科学技術政策

2022年

  • AI利用において高い倫理が求められることは共通認識となっているのだろう。その一方で、何が正しいのか、何が倫理的なのかもわからないし、倫理を守らせる手立てもわからない状態。その難しさを実感していただくために例題をあげてさせてもらう。記事ではAIによるローン審査に言及しているが、データに基づくと審査では、女性より男性の方が与信スコアが高くなる。その理由はこれまで男性の方が高給な職業に就く比率が高かったから。その結果、男性の方がローンや融資が受けやすくなり、さらに経済的にも有利になる。つまり、現状を表すデータに正確に判断すると、現状の格差を広げてしまう。データに正確であることが倫理的とは限らない。

  • 日本は都会よりも地方が高齢者比率が高いことがあり、介護の人材と施設不足は地方が先に深刻化したが(全国平均は2021年は29.1%)、今後、都会も高齢者比率は高くなる。例えば東京の高齢化比率は23.5%(2022年)であるが、東京都の予測では2040年には28%近くに上昇し、そのうちの後期高齢者比率も高まる。都会の場合、高齢者だけの世帯が多く、さらに持ち家の割合も低い。このため、介護の人材と施設不足は、将来、東京を含む都会は地方以上に深刻化する可能性が極めて高い。人材も施設も急には増やせないことから、長期的な対策を立てる必要がある。

  • 大学入試でも危惧されている問題だ。ただ、IT系の研究者として残念な表明だが、デジタルが生み出した不正を、AIを含めてデジタルを駆使して解決・抑止することは仮に可能だとしても、その手間やコストは大きくなるし、その回避策も出てきてしまう。結局、オフライン試験や検査の方が公平で、手間が小さい場合もある。さて就活のウェブ適性検査の場合、正直に検査を受けて落とされた学生さんは気の毒だが、企業視点で見れば面接などの選考フェーズは続くわけで、後でふるいに落とせるのであれば、ウェブ適性検査の不正の抑止にどこまでコストをかけるべきかは判断が難しい。さらに今回のような摘発による抑止効果で十分な場合もあるだろう。

  • メタバースが流行るか否かは別にして、VR用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)は高性能化と安価化が進んでおり、家庭でも没入感のあるゲームを楽しめる。例えばHMD向けジェットコースターなどを模したゲームであれば、本物の独特の浮遊感はないものの、酔った感じにはなれる。記事中のゴーグルやHMDによる没入感に頼ったアトラクションは、今後、特別な体験ではなくなくなり、前述のジェットコースターなどの物理的アトラクションも差別化のために見直しが迫られるだろう。そう考えると、やはり記事中のジブリパークをはじめとして、現実において非現実的な世界を物理的に体験させるアトラクションはひとつの方向性かもしれない。

  • 現在の介護保険法に基づく介護制度は民間の取り組みを法制化した背景があり、既存の民間事業者の都合を尊重した制度設計となっている。さらに一部の宗教団体系の介護事業者は介護時従事者が苦労することを良しとする風潮が残っているところもあり、デジタル化以前に効率を上げることに否定的なケースもある。また、介護事業者向けのデジタル化を担うIT業者は、公共や一般企業などのIT業者と顔ぶれが大きく違うなど、独自性も高い。介護のデジタル化はボトムアップではなかなか先に進まないだろうが、トップダウンでも不整合が生じやすい。デジタル化の進めやすい地域などで先行事例を作っていくしかないのではないか。

  • 一連の大規模解雇を受けて、テック系企業の人件費が注目が集まっているが、アマゾン、メタ、グーグルに限れば、人件費よりも設備投資が大きい。その背景は甘い成長見込みに基づいて、巨大データセンター(DC)などの大型設備投資を続けてきたからだ。今後の問題は、①DCは電気代と維持費もかかることから、過剰なDCは財務を悪化させること。②大型DCは、各社にカスタム化された半導体により性能的な差別化を図っているが、先端半導体製造は最少注文数が大きく、サーバ導入数が下がると最先端の半導体の導入が困難となり、DCの性能改善にブレーキかがかかること。従業員数だけでなく、設備と技術面でも曲がり角に来ているとみるべき。

  • 米エヌビディア(NVIDIA)を「謎のAI半導体メーカー」と称したメディアもあったが、GPUの最大手だ。機械学習などのAIではGPUの利用が前提となり、ここ数年のAIの発展においてNVIDIAのGPUが牽引役だった。さて今回の同社の決済内容はゲーム向けGPUが売上が落ちたという内容だが、AI向けの高性能GPUの研究開発はゲーム向けGPUに大きな需要があったから可能になっていた。従って、同社のゲーム部門の落ち込みは、AIを中心としたデータセンター向け製品の研究開発にも影響を与えることになる。

  • マイナンバーとマイナンバーカードの普及・利用が進まない背景には、メディアの記事を含めてマイナンバーとマイナンバーカードの混同があげられる。自治体におけるマイナンバーに対する認識不足はあるにしても、「マイナ保険証」は、マイナンバーではなく、マイナンバーカードに関してであり、「マイナ保険証」の問題は、交付ベースの保険証の代わりに申請ベースのマイナンバーカードに利用することにより、病気などでマイナンバーカード申請ができない方々の対応、通信インフラがない離島などの医療でマイナンバーカードが利用できないことにある。しかもそれを「面倒くさいと感じる人がいる」と片づけていては、解決できる問題も解決できない

  • 日本の自動車産業では自動車部品会社は自動車会社の系列に組み込まれている。一方で電気自動車(EV)に移行により、仮に自動車の基幹技術が、電子部品や電池に移行するのであれば、デンソーをはじめとして電子部品や電池に関わる自動車部品会社が系列の枠を超えて、部品供給を供給した方が、日本の産業競争力が高まる可能性もある。 今後のEVの時代に、企業規模の大小、親会社・下請けなどを問わず、 どんな企業が生き残るのかを予想した上で、大胆な産業政策を考えるべきではないだろうか。

  • ネット広告は、サードパーティクッキーと呼ばれ、ウェブに貼られた、ネット広告事業者などが付けた、ある種の識別子により、利用者(ウェブブラウザ)が訪問したウェブページの訪問履歴を収集し、その履歴に基づいて利用者ごとにターゲッティング広告を表示してきた。ただ、世界的にはサードパーティクッキーは制限される方向であり、ターゲッティング広告の精度が落ちることから、多様な別手段を模索中だ。それには例えば記事にあるような広告主に対する分析支援、新たな識別子相当の模索、ウェブブラウザ側で履歴収集する方法などがあるが、いずれも大量データ保有している大手に有利といえ、ネット広告の寡占化は進むと予測される。