【田中道昭】投稿一覧

田中道昭

立教大学ビジネススクール 教授

立教大学ビジネススクール 教授

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスMBA(企業戦略・ファイナンス・計量経済専攻)。専門は企業・産業・技術・金融・経済等の戦略分析。日米欧の金融機関にも長年勤務。主な著作に『GAFA×BATH』『2022年の次世代自動車産業』『アマゾン銀行が誕生する日—2025年の次世代金融シナリオ』『ソフトバンクで占う2025年の世界』『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』などがある。テレビ東京WBSコメンテーター。
【注目するニュース分野】企業戦略、マーケティング、産業

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスMBA(企業戦略・ファイナンス・計量経済専攻)。専門は企業・産業・技術・金融・経済等の戦略分析。日米欧の金融機関にも長年勤務。主な著作に『GAFA×BATH』『2022年の次世代自動車産業』『アマゾン銀行が誕生する日—2025年の次世代金融シナリオ』『ソフトバンクで占う2025年の世界』『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』などがある。テレビ東京WBSコメンテーター。
【注目するニュース分野】企業戦略、マーケティング、産業

2022年

  • 数十年単位で小売業界を俯瞰すると、“何でも売っている”はずの百貨店の業界規模は縮小し、“自らの専門に特化”した専門店チェーン、カテゴリーキラーの業界規模が増大しています。百貨店が得意としてきた“買回り品”消費、即ちファミリーと一緒に週末に“買い回って”同時に楽しく“時間消費”する場所は、百貨店から超大型ショッピングセンターにその主役を奪われています。そしてそれ以上に脅威となったのがデジタルでの買い物や時間消費です。現在の消費者が求めているのは「総花的」なものではなく「専門性が高く」「自分にカスタマイズしてくれること」。様々な二極化・多様化が起きている中でも若年層・トレンド対応も大きな課題です。

  • 日本でのアップル製品価格は、国内の景気状況や所得水準などから、海外と比較してかなり低めに設定されてきました。加えて、サプライチェーン混乱等により各国でアップルの製品が品不足になっていた一方、円安の進捗によって内外価格差が拡大、日本は同製品最安国の状況になっていました。品不足と日本の販売価格“割安化”に伴い、需要が増大している中国に中古製品が転売されているとも見られており、中古価格は高騰、アップルとしては日本と海外との裁定取引が進むのに対応したかったというのも値上げの大きな理由ではないかと分析されます。各国の物価を測るビッグマック指数低下が著しい日本、アップル価格も安過ぎる日本を表象しています。

  • “宇宙レベルで考え物理学レベルで突き詰める”マスク氏は06年8月発表のマスタープラン1を全て有言実行しEVの収益化・量産化を実現、現在は20年7月発表の同2の実行に従事。その一つが「世界中のテスラ車の実走行から学び、人が運転するより10倍安全な自動運転機能を開発する」という計画。同社は世界中を走るテスラ車から走行データを収集し、自動運転機能オートパイロットを進化させています。各四半期決算では自動運転開発の進化を愚直なまでに報告し続け、直近決算ではFSDベータ版を年内に全米顧客へリリース予定と発表。今回の自動運転拠点閉鎖の意味もマスタープランを着実に有言実行してきた文脈で読み解くことが重要です。https://tesla-cdn.thron.com/static/IOSHZZ_TSLA_Q1_2022_Update_G9MOZE.pdf?xseo=&response-content-disposition=inline%3Bfilename%3D%22TSLA-Q1-2022-Update.pdf%22

  • 増資やIPO等の株式調達の状況は、株式市場と景気のバロメーターとも言われています。資金の出し手である投資家側で見ると、景気や株式市場への見通しが楽観的で資金も潤沢な状況においては、増資やIPOに積極的に応じることになります。一方、同見通しが厳しいものとなり投資スタンスが保守的になると株式調達は減少します。これを資金の取り手である企業側で見ると、景気の見通しが楽観的であると設備投資等への意欲が旺盛となり、株式調達のニーズも増大する一方、同見通しが厳しい状況では反対の事業及び資金ポジションとなります。現在の低水準な株式調達の状況は、投資家側に加え企業側の要因も加わってきていることが要注意点です。

  • 「もっと暑くなる」「もっと足りなくなる」「もはや隠せない」時代において、企業には会社の芯からESGに取り組むことが求められている中、社員のESGへの取り組みを賃金に反映させるという動きは本質的なものであると思います。海外でもアップル、ユニリーバ、シーメンス等がすでに実施していますが、これらの企業の特徴は、ESGへの取り組みが企業文化や会社の価値観、世界観にまでなっていること。現代の消費者、特にZ世代のような若い層では、企業が環境問題や人権問題に積極的か否かを見て購買を行う消費アクティビズムの動きが顕在化している中、企業にも求められているのは実際のアクション、行動なのではないかと思います。

  • 米国での選挙戦略で最も重要な基軸の一つはポジショニングです。直近の大統領選では、「強くて×本音」のトランプ氏に対して、「正義をもって×よりよい復興を実現(Build Back Better)」のバイデン氏が勝利しました。昨日の第一声から与党と野党第一党の党首のポジショニングを読み解くと、(物価高・ウクライナ情勢・コロナ等の)重要課題に対して「実績×信頼」の岸田首相、同重要課題に対して「もっとみんなで声を上げて×変化を起こす」立憲民主の泉党首という構図。物価高に「万全の体制用意」と述べた前者と「岸田インフレ」を訴えた後者。実績を評価するのか、変化を望むのか、それを選ぶのは有権者です。【選挙戦略】https://toyokeizai.net/articles/-/406293

  • ネット・個人に強みのSBIと法人・リアルに強みのSMBCの組合せは合理的だと思います。北尾代表の野心には総合証券として野村を凌駕することがある。SMBCの法人顧客層は引受業務等で魅力的。そして北尾代表の使命と優先事項にはMUST戦略として掲げる地銀再編・強化がある。新生銀買収でグループ全体の利益の構成比は銀行41.3%・証券28.7%と銀行業重視は鮮明。足元で「リージョナルからネーションワイドへ」というビジョンを掲げた中での今回の提携。SMBCを主要株主に加えて地銀再編も加速されると思います。課題はSBI、両者、地銀、銀行証券業界全体何れにおいても収益力向上と株式市場での評価向上だと思います。

  • 昨年のデジタル課税合意の背景となったのは米大手IT企業によるダブル・アイリッシュ&ダッチ・サンドイッチスキーム等を活用しての市場国・税収なしという税務戦略でした。同戦略のスキームでは、無形資産を軽課税国の子会社に移転し税負担軽減、市場国である日本では物理的拠点がないため課税できないといったことが問題とされてきました。背景は、企業の競争力の源泉が無形資産に転化、サービスがデジタルで提供されていること。ここに市場国に拠点をもたない真因がある。私自身、公正取引委員会・独占禁止懇話会メンバーを務めていますが、日本ではGAFAMに対抗するような企業を育成することと規制の両面が求められていると思います。

  • ヘルスケア業界でもコロナ禍を機にDXへの取り組みが加速。デジタル製薬企業を標榜するモデルナは、mRNAの開発手法を元にDXを土台にしたR&Dプロセスや製造流通システムを強みにして既存製薬企業に先行してワクチン提供。GAFAMも本格的にヘルスケアに参入、特にアマゾンは昨年夏から社員向け医療サービス「アマゾン・ケア」の米国企業への提供を開始。AWS医療データ関連サービスやオンライン薬局展開、ウエアラブルデバイスの開発等サービスを拡大。「一人ひとりの患者を医療サービスの中心におくDX戦略」がヘルスケア産業の競争の条件になってくると思います。その他詳細は日経電子版小職記事をご参照いただければ幸いです。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26D6A0W2A420C2000000/

  • 株価の日々の乱高下に一喜一憂するよりは、大きな変化が起きていないか見極めることが重要な局面だと思います。2008年頃からの低金利・低インフレの時代が終わり、高金利・高インフレの時代へのレジームチェンジが起きているという見方をする大物市場関係者が増えています。世界最大のヘッジファンドのブリッジウォター創業者レイダリオ氏もファンダメンタルズの変化や新たな世界秩序と表現。現在の市場関係者の見方の違いの重要点はインフレ懸念が短期的なもので収束するか否か。5月末にイエレン財務長官が見通しの間違いを認める発言をする中、サマーズ氏やダリオ氏等の重鎮がより大きな変化が起きていると見ていることに要注意です。https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-05-31/yellen-says-i-was-wrong-last-year-on-the-path-of-us-inflation