【鈴木智子】投稿一覧

鈴木智子

一橋大学 准教授

一橋大学 准教授

実務とアカデミズムの両面からマーケティングを解き明かす。日本ロレアルやボストン・コンサルティング・グループを経て一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士(経営学)。京都大学特定准教授などを経て2017年から現職。消費者行動やブランド戦略に詳しく、ローソンの社外取締役なども兼務。主著に「イノベーションの普及における正当化とフレーミングの役割」(白桃書房、2013年)
【注目するニュース分野】マーケティング、消費者行動、ブランド戦略

実務とアカデミズムの両面からマーケティングを解き明かす。日本ロレアルやボストン・コンサルティング・グループを経て一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士(経営学)。京都大学特定准教授などを経て2017年から現職。消費者行動やブランド戦略に詳しく、ローソンの社外取締役なども兼務。主著に「イノベーションの普及における正当化とフレーミングの役割」(白桃書房、2013年)
【注目するニュース分野】マーケティング、消費者行動、ブランド戦略

2022年

  • PBの品質が高まり商品力が高まる中、主要なブランドメーカーは市場競争力を維持するために、更なる価値の創造・提供・維持を続ける必要があります。PBと共存あるいは対抗するためには、①ブランドに象徴的・情緒的なイメージを付与し、機能面だけで戦わない、②革新的なイノベーションを生み続け、消費者に大手ならではの安心感と新鮮さを与え続ける、③消費者・小売り・株主などすべてのステークホルダーに付加価値を提供できる分野(PBに勝てる分野)で選択的に戦う、④小売業のPBを補完する戦略を通じて、小売業とWin-Winの関係を模索し、効果的なパートナーシップを構築する、といった戦略的アクションが考えられます。

  • PBの市場は、国によって異なる成熟段階にあるといわれています。日本や米国は成熟度が中で、低価格の訴求だけではない、より幅広い顧客ニーズに対応するPBが生まれています。成熟度がさらに高くなると、PBがナショナルブランドと競争できるほどの高い認知度・ブランドアドボカシー・ブランドロイヤルティを持っています。カナダや欧州の多くの国がこの段階にあり、こうした市場ではPBが革新的な製品を発売したり、NBよりも高い品質や機能を提供することが多く、「同じ値段でより多くのものを」という価値観を打ち出しています。このような進化を遂げる中で、PBは店舗ロイヤリティを高める強力な原動力となっています。

  • 個人的な見解ですが、日本企業の多くには「良いものを安く提供」ということがDNAのように浸透していると思います。そして日本人消費者も、良いものを安く求める傾向が強いと思います。世界一、目の肥えた消費者と言われるゆえんでしょう。しかし企業が無理をして良いものを安く提供し続けると、賃金を上げることも難しくなるのではないでしょうか。世界では、価値に対する価格をしっかりと取っています。無形価値を具現化するブランドの力もこうしたところに関係しています。日本企業のモノやサービスの品質は素晴らしいので、付加価値や無形価値を高めることで、脱コモディティ化が進むと良いなと思います。

  • マーケティングの基本に立ち返らせてくれる事例だと思います。マーケティングの最も有名な格言のひとつに、「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」という言葉があります。制汗デオドラントを買う人が欲しいのは、汗やにおいを長い間(外出中)抑えたいということですね。この事例が重要なのは、さらにその一歩先の顧客ニーズにまで応えていること。なぜ汗やにおいを抑えたいのか。周囲の人に迷惑をかけたくない、周囲の人に自分の体質を知られたくない、といったニーズがあるということです。顧客の深層心理にたどり着くのはなかなか難しいのですが、それがわかるとヒット商品につながることを示してくれている事例です。

  • 買物の消費者調査を行うと、オンラインショッピングの不満として試せないことが必ずといっていいほど出てきます。こうした消費者の要求に応えるように生まれたのがショールーム型店舗でしょう。しかしアマゾンの事例から、試せるだけでは価値にならないということを実感しました。Amazon Booksは、Barnes & Noble’sの売上の5%にも満たなかったそうです。やはり消費者に感動や驚きを与えるような顧客体験が重要なのではないでしょうか。考えてみれば、無料で返品できるので、店舗で試せること自体は価値にならないのかも。消費者の声を聞いただけではイノベーションは生まれないことを、改めて感じさせられました。

  • ビジネスシーンでパーパスが注目を集めていますが、企業が自らの存在意義を明確にすることで、市場や消費者、そして社員の支持を得ることが、これからは大切になります。就職活動においても同じです。企業が新入社員を選ぶだけでなく、入社を希望する人も企業を選ぶのです。一人ひとりの活躍を期待する企業の多くは、採用プロセスに時間をかけ、お互いの理解を深めることを重視しています。個人のパーパスが企業のパーパスと共鳴すると、働くことを通じて自らのパーパスを実現することにつながり、結果、従業員満足も企業経営も良くなるというロジックがあるためです。そのためには、私たち一人ひとりも、自らのパーパスを考えることが大切です。

  • Statista社が実施したグローバルAI調査によると、AI採用がコスト削減で最も恩恵を受けるのはサービス業務と製造部門であることが明らかになりました。回答者の51%が、組織内のサービス業務機能が20%以上のコスト削減を目の当たりにしたと回答しています。
    AI導入というとコスト削減に目がいきがちかもしれませんが、サービスのパーソナライズ化など、顧客体験の向上にも使われています。業スーの「宝探し」もそうですが、お客様がその店に行きたいと思うのは優れた顧客体験がカギになることが多いです。
    小売業のAI導入はますます進みそうですが、コストを削減しつつ、いかに顧客満足を高めるか、注目していきたいです。

  • ブランド論に「起源の忘却」という話があります。イノベーションがブランドに進化する際には、もともとの話は忘れられ、その後の活動によって確立されたイメージが中心になるという話です。例えば、マクドナルドがどのようなイノベーションを起こしたか、多くの消費者は知りません(1940年代に、マクドナルド兄弟によって画期的な製造とサービスのシステムが考案されたことがイノベーションでした)。マルゲリータの話もそうですが、起源がどうだったかということよりも、その後の事業活動やマーケティング活動によって創り出されるイメージの方が、ブランドを大きく成長させるためには大事になってくるということです。

  • サービスにおけるデジタル化の研究を行っていますが、IoTにせよ、ロボット活用にせよ、現段階ではユーザーの「感情」をどうマネジメントするかが鍵になると感じています。完全自律型ロボの接客が技術的に可能だったとしても、消費者がロボットに接客されることを不気味に感じ、人による接客をより好むことが、実証研究でも明らかにされています。しかし、ロボットを動かしているのが人だとわかると、消費者は安心するようです。まずは人とロボットの協働が一般化することで、その次のフェーズとして、完全自立型ロボによるサービスが広まっていくのではないでしょうか。ロボットとの協働で、日本のサービスがどのように進化するか楽しみです。

  • ダイナミックプライシングが注目を集めていますが、歴史を紐解くと、実は定価制は産業革命後に生まれた大量生産の産物であることが分かります。それまでは変動価格制が当たり前でした。
    環境問題やSDGsなどに対する関心の高まりを背景に、大量生産・大量消費が見直されています。そうした中では、今度はダイナミックプライシングがまた当たり前になるのかもしれません。
    ただし、情報の透明性や入手可能性が高まっている現代では、ダイナミックプライシングを成功させるためには、消費者に不公平感を与えないなど、丁寧な設計が必須になります。ダイナミックプライシングをいかにうまく導入できるか、企業の手腕が問われそうです。