【原武史】投稿一覧

原武史

放送大学 教授

放送大学 教授

1962年東京都生まれ。日本経済新聞社勤務などを経て、東京大学大学院博士課程中退。明治学院大学名誉教授。日中文化交流協会理事。講談社本田靖春ノンフィクション賞選考委員。専門は日本政治思想史。著書に『大正天皇』(毎日出版文化賞)、『滝山コミューン1974』(講談社ノンフィクション賞)、『昭和天皇』(司馬遼太郎賞)、『皇后考』、『歴史のダイヤグラム』など。
【注目するニュース分野】皇室、政治、宗教、鉄道、住宅、ジェンダー

1962年東京都生まれ。日本経済新聞社勤務などを経て、東京大学大学院博士課程中退。明治学院大学名誉教授。日中文化交流協会理事。講談社本田靖春ノンフィクション賞選考委員。専門は日本政治思想史。著書に『大正天皇』(毎日出版文化賞)、『滝山コミューン1974』(講談社ノンフィクション賞)、『昭和天皇』(司馬遼太郎賞)、『皇后考』、『歴史のダイヤグラム』など。
【注目するニュース分野】皇室、政治、宗教、鉄道、住宅、ジェンダー

2022年

  • 江戸時代には地方に藩校のほか高度な学問を教える私塾があったり、破格なスケールをもった個性的な思想家が多くいたりしました。ところが明治になって中央集権国家が確立されたのに伴い、帝国大学を頂点とした学校の階層化が進み、優秀な人材は地方を捨てて東京に集まるようになりました。地方に個性的な書店が増えるということは、再び江戸時代のようにその地方ならではの個性的な学問や思想家が生まれる種を提供することを意味しないでしょうか。盛岡の「BOOKNERD」もそんな書店の一つになっていただきたいと切に願っています。

  • この問題の背景には、男系男子だけに皇位継承権を認めている現行の皇室典範を踏襲するのか、それとも皇室典範を改正して女性天皇や女系天皇にも皇位継承権を認めるのかをめぐる対立がある。トーンの違いはあるが、大きく言って与党は前者、後者は野党と色分けできる。憲法に対する姿勢とは対照的だ。憲法は戦後に全く新たに制定されたのに対して、皇室典範は根幹の部分を明治の旧皇室典範から受け継いでいる。これを守りたいのが自民党の保守派の考えだろう。しかし他方、前の天皇が退位したことで、終身在位を定めた皇室典範は絶対のものではなくなっている。これ以上切り崩されることを保守派は危惧しているのだろう。

  • 与野党の間で合意に達するのは難しいでしょう。与党と野党の間に考え方の隔たりがあるのに加えて、有識者会議が示した2案そのものにも問題があるからです。「女性皇族が結婚後も皇室に残る案」については、眞子さんの結婚が当事者はそう考えない前例を作ってしまいました。また「旧皇族の男系男子を養子にする案」については、これまで皇室と縁のない生活を送ってきた男性を、「男系男子」の皇統を守る理由から養子にするというわかりにくさが伴いますし、当事者が養子になりたがるかという問題もあります。こうした問題をきちんと踏まえないまま、どちらがよいかを国会で議論することは果たして適切でしょうか。

  • 1950年に朝鮮戦争が勃発し、米軍基地のある立川の風紀が乱れたとき、隣町の国立にも米軍兵士を相手とする店ができたことに反発する浄化運動が起こり、国立は文教地区に指定された。当時はまだ敗戦から5年あまりしか経っておらず、戦争体験に根差した反米感情が住民の間に根強かった。今回は米軍基地からオミクロン株が染み出し、基地のある県やその隣県の感染者数が激増している。戦争から75年あまりが経ち、反米感情がすっかりなくなった本州の県でかつての国立と同様の運動が起こることは考えにくいが、沖縄は明らかに本州とは違う。今後の沖縄の動きに注目しなければならないと思う。

2021年

  • 2019年に天皇が退位して上皇になったのは、江戸後期の光格天皇以来のことだった。そのときに懸念されたのは、過去の院政のように上皇が隠然と権力をもち、令和になっても引き続き存在感を示すことだった。報道を見る限り、上皇は上皇后とともに仙洞仮御所で静かな生活を送っていて、天皇や皇后に会うこともほとんどない。コロナという状況が移動の自粛を促している面もあるが、少なくとも退位前の懸念は全く感じられない。ただ上皇が健在でいる限り、天皇は上皇の動静を気にしなければならないとは言える。「平成流」に代わる新しいスタイルを積極的に打ち出すことは難しいのではなかろうか。

  • 小学6年だった1974年に中央線の武蔵小金井から中野まで、毎週日曜日に中学受験のための進学教室に通っていたことを思い出しました。当時の武蔵小金井ー中野間の運賃は70円で、子どもは30円でした。国鉄は5円以下を切りすてていたのです。小田急が子ども運賃を一律50円にすれば、電車に乗って新宿や町田などの中学受験塾に通う子どもが増えるのではないでしょうか。ロマンスカーは子どもにとって非日常の乗り物ですが、毎週乗る電車は日常の乗り物になるはずです。小田急沿線にある私立中学の受験者数が増えるかもしれません。

  • 鉄道会社は運行コストを減らすことばかり考えているようですが、他方で首都圏では踏切を減らさない限り、あるいはホームドアを設置しない限り、人身事故などの事故を防ぐことはできません。今回ワンマン運転を検討している南武線や横浜線にも、踏切やホームドアのない駅はけっこう残っています。小田急線や京王線の車内で無差別の刺傷事件が起こったのもまだ記憶に新しいところです。こういう事故や事件が発生した場合、乗務員を減らしても十分な対応がとれるのか。きちんと検証することが求められていると思います。

  • 成年皇族は宮中祭祀や皇居宮殿での行事に出席する。愛子内親王の場合、さっそく今月中に宮中三殿で行われる賢所御神楽の儀や大正天皇例祭に出席するだろう。ただこれらはすべて「お濠の内側」で行われる祭祀や行事であって、国民の目に直接触れることはない。たとえコロナの状況が落ち着き、国民生活が平静を取り戻しても、天皇や皇族が「お濠の外側」に出る機会は限られ、公務で地方を訪れるのはコロナの収束が宣言されてからになるだろう。それまでは天皇や皇后らと同様、オンラインが活用されるのではないか。愛子内親王の等身大の姿を各地の人々が目にするのは、もう少し先になりそうだ。

  • なぜ四国の山中からこのような世界最先端の町が出てくるのかに関心をもちました。数年前にも、同じ山中にある高知県大川村で、日本のどこにも実現されたことのない直接民主制の村民総会を検討しているというニュースがありました。ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎もまた同じ山中にある愛媛県大瀬村(現・内子町)の出身で、その小説世界が四国の山と森に深く規定されていることはよく知られています。政治学者として、四国の山中という固有の場所に興味をそそられています。

  • これまでに女性天皇は飛鳥・奈良時代と江戸時代に合わせて10代8人いた。それが断絶したのは、明治時代に旧皇室典範が制定され、男系の男子に皇位継承者を限ったからだ。その背景には、京都に長らくいて中性的だった天皇を「男性」化させることで、軍事国家のシンボルにしようとする政治的意図があった。戦後に陸海軍が解体され、憲法が改正されて男女平等がうたわれたが、新たな皇室典範のもとでも女性天皇は認められなかった。これを改正して女性天皇を容認すること、すなわち愛子内親王に皇位継承権を認めることは、戦後に民主国家になりつつもなお継承された軍事国家の「残滓」を捨て去ることを意味する。だがその道は険しいだろう。