【白井さゆり】投稿一覧

白井さゆり
白井さゆり

白井さゆり

慶應義塾大学総合政策学部 教授

慶應義塾大学総合政策学部 教授

国際派エコノミスト。国際通貨基金(IMF)エコノミストや日銀審議委員を歴任。金融政策や国際金融に精通し、脱炭素・ESGに詳しい。多数の海外メディアに英語で情報発信し多くの国際会議で講演。パリ政治学院客員教授、アジア開発銀行研究所の客員研究員も務めた。2020-21年には英国のESGスチュワードシップサービス会社EOS at Federated Hermes上級顧問を兼任。米コロンビア大博士(経済学)。
【注目するニュース分野】金融政策、ESG投資・経営、国際経済

国際派エコノミスト。国際通貨基金(IMF)エコノミストや日銀審議委員を歴任。金融政策や国際金融に精通し、脱炭素・ESGに詳しい。多数の海外メディアに英語で情報発信し多くの国際会議で講演。パリ政治学院客員教授、アジア開発銀行研究所の客員研究員も務めた。2020-21年には英国のESGスチュワードシップサービス会社EOS at Federated Hermes上級顧問を兼任。米コロンビア大博士(経済学)。
【注目するニュース分野】金融政策、ESG投資・経営、国際経済

2022年

  • トルコ市民の生活環境はかなり苦しいと思われます。海外からの資本流入に依存する経済なので、海外投資家の信頼回復が必要で、そのためには利上げをすることが必要です。先日、トルコの経済学者と議論をする機会がありましたが、低金利を維持することで倒産の拡大を抑制するプラスの面もあり、従来型ではない経済政策もありうると主張していました。コロナ危機以降、大半の新興国はエネルギー危機と食料危機に加え、気候危機や欧米の利上げによる打撃があり苦しい状態にあるかと思います。なかでもトルコの政策は異質で、とはいえなかなか政策転換をするのが難しい状況にあるようです。

  • 中国では、長く不動産業界を支えてきた住宅価格上昇とレバレッジの拡大、地方政府の税収増加という連関を一変させており、住宅建設が未完成のままになる物件も増えており住宅所有者が住むことができない事態に陥っている。住宅バブルとレバレッジの抑制を目指して2020年に導入にした金融規制だったが、住宅問題で消費者の不満も高まっており、今年後半にあまり景気が持ち直さない可能性がある。中国経済の減速が世界のコモディティ価格の最近の下落傾向に影響しているようにみえる。ディカップリングについてはまだ起きていないが、西側による半導体製造を自国・地域で拡大する動きがようやく始まったところで影響がでるには時間がかかる。

  • 猛暑でせっかくの夏休みでも外出がしにくい状況になっていますね。世界でも大変な猛暑と水不足になっています。日本も電力不足の懸念の中で節電が必要になっています。この際に、その根本的な温暖化の原因についても一緒に考える機会にしていきませんか。ウクライナ戦争でロシアがエネルギーを武器としてつかっており、世界的エネルギー不足もあって化石燃料の生産・消費は増えていますが、その結果、地球温暖化はさらに進んでいます。地球温暖化による豪雨や熱波や洪水などの現象が感染症の半分以上を説明できるとする論文が発表されています。そろそろ真剣に根本的な対応策を皆で考え採用していく時期が来ているのではないでしょうか。
    https://www.nature.com/articles/s41558-022-01426-1

  • 4-6月の実質GDP成長率は、年率で2.2%で、市場予想(2.5%よりもかなり低かった。また1~2か月前までは3%台の予想だったので、思ったほど景気回復が強くないということになる。消費がまん延防止措置が3月に解除され人の動きが活発になったため消費が拡大していることが大きいが、物価の高騰による買い控えや自動車などでは供給不足などもあって需要に応じられない成長制約の状況が反映されているとみられる。設備投資はマイナスからプラスに転じ、デジタル関連投資や更新投資などもあるため今後も継続されるとみられる。製造業は中国経済の回復やサプライチェーンの打撃が緩和されており、受注もあり持ち直しつつあるようだ。

  • 地政学リスクを意識して半導体を自国で製造する能力を高めるため米国では半導体関連の法案が成立した。EUでも同様な法案を欧州委員会が提案している。アジアで集中して半導体を生産すると、コロナ感染症の広がりで工場がとまったり、台湾海峡をめぐる安全保障上の緊張が高まり生産が打撃を受けると世界経済に打撃が及ぶことがG7の間で急速に意識され始めている。半導体は脱炭素に不可欠なので分散投資は必要になっている。日本でも半導体だけでなく、バッテリー関連や鉱物資源を使わない素材の開発など研究・生産活動が進むことが期待される。そのためにも大学の奨学金の充実や外国人採用を含め理数系の人材育成を急ぐ必要があると思います。

  • 中間選挙が近づくなかで、政治的動きととらえられてしまうことを覚悟のうえで捜査に踏み切ったとみられます。国家の重要機密の取り扱いで犯罪の証拠をそろえて提訴できるかにかかっていると思います。下院で超党派で実施している特別委員会による昨年1月の議会襲撃事件に関する調査でも提訴できるかどうかが重要です。現在は共和党支持者の間では政治的動きととらえて反発し団結力が高まっていますが、きちんと証拠をつみあげ法律で対処していくことで、共和党議員や支持者の間でも冷静な見方が増えていく可能性もあるかと思います。ただそうなっても論理ではかたづけられない感情に根差した分断が修復されるのは容易ではなさそうです。

  • 7月消費者物価につづき、7月の卸売物価の上昇率も低下し、今後の消費者物価の上昇率がさらに低下していくことが明確に見込まれる。卸売物価が前月比で下落したのは、エネルギー価格の下落が主因だ。サプライサイド側が主な原因であるコモディティ価格の下落傾向が明確になってきたことで少しずつインフレ圧力が緩和されていくと見られる。サプライサイド側がインフレ圧力を高める要因が和らげば、その分、急速な利上げで需要側でインフレ圧力を抑えなくて済むため、景気後退がさけられる可能性も高まると思われる。ただインフレ率はまだ高い水準なので、極端に楽観的にはならないほうがよいであろう。

  • もともと年初来の円安は米国の10年金利との相関が大きかった。しかし、国際コモディティ価格は下落しており、しかも米国の10年金利の上昇は一服しており、大幅な円安ドル高にはなりにくい状況にはなっていた。予想されていたとはいえ米国の7月CPI上昇率が市場予想を下回ったことが、米国の10年金利の一段の低下につながっており幾分円高ドル安へつながっている。これまでの米国のインフレ率が市場予想よりも上回る傾向が続いていただけに、市場の反応は敏感になっており今回は強く好感された。ただ年末までのFRBの利上げ見通しが変わったわけではない。今後もインフレが市場予想を下回る状況が続けば株価には追い風となるであろう。

  • 米国の7月CPI上昇率は総合とコアともに市場予想よりも低かった。それが9月以降のFOMCの利上げが0.75%ほどの上げ幅にならないとの見通しにつながり、株式市場では好感された。もともとインフレのピークが近いと予想されており、年末にかけて7%前後まで低下していくと予想される。エネルギー価格の伸び率が41%から33%程度に低下したことが大きいが、そのほか新車・中古車および衣服の価格上昇率も幾分低下したことが原因である。その一方で、食料価格は10.4%から10.9%へ上昇し、医療サービスや家賃の伸び率も上昇している。幾分インフレが和らいだ程度なので米国市民の生活苦は大きくかわっていないと見られる。

  • 中国ではESG投資家の影響は日米欧ほど大きくはならないのではないか。環境課題への企業の対応は政府主導でおこなわれており、欧米のように市民社会が成熟しているわけではなく、投資資金もベンチャー資金を含め国内に潤沢にあるが民間主導とはいえない。人権を含むセンシティブな社会的課題についてはESG投資家の影響は限定的な印象がある。中国の上場企業は海外のESG投資家とのエンゲージメントや情報開示には慎重だとみられ、米中対立激化でより慎重になっている可能性もある。ペロシ下院議長の台湾訪問で米中の環境対話は中断されたが、世界共通の環境課題を中心にG7は中国と協力関係を維持していくことが予想される。