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為末大

元陸上選手/Deportare Partners代表

元陸上選手/Deportare Partners代表

スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダルを獲得。オリンピックに3度出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年3月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。東京大学 未来社会協創推進本部 アドバイザリーボード委員。
【注目するニュース分野】東京五輪、教育、哲学・心理学

スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダルを獲得。オリンピックに3度出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年3月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。東京大学 未来社会協創推進本部 アドバイザリーボード委員。
【注目するニュース分野】東京五輪、教育、哲学・心理学

2021年

  • 一番大切な点は子供は親の所有物ではなく、社会全体で育てる存在だという感覚だと思います。うちの子もあの子も、私たちの子供だと思う感覚です。米国の子供達の状況を描いた「Our kids 我らの子供」という本があります。高速道路一本隔てて貧富の差が拡大しまるで別世界のようになってしまっている現状が描かれています。どうすれば解決されるのか。著者はヒントは過去の教会システムにあり、それがさまざまな階層の人たちが繋がり合える場所だったと言っています。社会側にもできることがたくさんあるように思います。

  • 最近、アメリカ、ヨーロッパ、中国のスポーツ関係者から五輪はどうなっていると聞かれることが増えました。東京五輪は日本のために行うのではなく世界のスポーツ大会のホスト国であるという感覚は重要だと思います。その上で中止も視野に入れて判断すべきです。日本の選手だけに五輪のコメントを求めることが多いですが、あくまで二百カ国のうちの一国です。

  • 山本七平氏が空気の研究の中で、「この国の権力の中枢には誰もいない。この国は空気によって支配されている」といった主張をしています。目に見えないものを信じる力がデータやファクトよりも優先される、恐れが一旦刷り込まれると恐れそのものが暴走し始める、空気が一度できあがると「しょうがない」と言って個人が軽んじられることは今も変わっていないように思います。過去を分析する際も決定者なき決定なので「あの時はああするより仕方がなかった」という感想に着地し、結局のところなぜそうなったのかについてはよくわからないということが起きがちです。日本を理解する上で空気はとても重要な言葉だと感じています。

  • 人類史を見てみると人類が適応した環境は農耕ではなく、狩猟採集、小さな群れ、と言われています。狩猟はゆっくりと獲物が疲れるまで追いかける長距離走的であり、限りある食物を群れの中でシェアすることでカロリーが一部の個体に偏ることを避けていたと言われています。私たちが適応した環境からすると、孤独と二足歩行が減ることは反対の環境であり、当然健康に問題が出てくるのだろうと思います。健康は血液検査の結果だけに意識がむかいがちですが、実際には社会との繋がりも健康の指標として重要だという認識がもっと少し広がるといいなと思います。

  • 情報がきちんと揃い人々に伝われば、人はより良い意思決定ができるという前提で民主主義は作られています。しかし、マイケル・サンデル氏の新書では、学歴が低いより高い方が、科学的知識が少ないより多い方が、気候変動に対する意見が分極化することが示されています。つまり、知っている人たちの方が意見が偏っているということになります。Googleは世の中の情報を整理することを目指していますが、整理できた時には人々の分断は小さくなるどころか大きくなっている可能性があります。情報プラットフォームと民主主義の関係は始まったばかりですが、少なくとも現在のところは楽観的にはなれない状況です。

  • 多様性の本質は価値観の違いです。同じものを見ても違うように捉え、違うように判断し、違う行動をするということだと思います。倫理観という文脈で捉えられがちですが、実際のところはこれまで同じ状況では人々が同じ行動を取るという前提で日本が来られたのは、皮肉なことに多様性がないからこそだったのではないでしょうか。一方多様性がある文化圏では強い強制力を持った方法や、きっちりとしたルールで縛る方法が取られる傾向にあります。もちろんそれでも多様性を重んじる方向が望ましいと思いますが、綺麗事だけではなく、きちんと多様性が生み出す混沌への対処も整えていく必要があると思います。

  • トマピケティはr>gというシンプルな数式で長期的には「持てるものはより豊かになる」ことを示しました。rは資本から生み出される年間収益率で、gは所得や産出の年間増加率です。アメリカの実態は、貧困層から富裕層に移動することが多くの先進国よりも難しく、格差が固定化しつつあります。一方で、国民の7割近くは努力すれば夢は叶うと考えていて、思想と実態の差が大きく開いています。努力すれば夢は叶うという考えは、裏を返すと夢が叶っていない人は努力していない人だという烙印を押し自信を失わせます。今のアメリカのリーダーにはこの矛盾と人々の怒りをどう受け止め対処するかが問われているのだと思います。

  • ゴルフはメンタルスポーツで、相手との物理的対峙がないために自滅以外の敗因はないとも言える競技です。松山選手が究極の勝負の状況で、どのように心を捉えて操っていったかはとても興味深く、ぜひどこかで語ってほしいです。そこから人間の可能性が拓かれるのではないかと期待します。

  • 1980年のモスクワのボイコットは今でもスポーツ界に傷として残っています。日本では当時マラソンで金メダル確実と言われた瀬古さんが五輪に出場できませんでした。五輪のように政治に影響を受けない大会をということで、世界陸上が作られ、1983年に第一回大会が行われています。もしボイコットになれば、五輪に人生を賭けている選手にとってはまさに人生を取り上げられるような感覚だと思います。

  • 1964年の東京五輪でNHKだけが国民アンケートを実地しています。五輪1,2年前までは国民の半数が開催に反対で理由は「それどころじゃない」というものでした。それが一転して9割以上が開催に賛成になったのが、聖火リレーが各地を回ったあとだと言われています。当時と今とではメディアの状況が大きく違いますが、聖火が回っていく様子は今回どのような受け止められ方をするのでしょうか。