【竹中治堅】投稿一覧

竹中治堅
竹中治堅

竹中治堅

政策研究大学院大学 教授

政策研究大学院大学 教授

日本政治、比較政治の研究、教育をしています。関心は首相の指導力、コロナ危機への対応過程、参議院の役割など。著作に『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』『参議院とは何か – 1947〜2010』(2010年度大佛次郎論談賞受賞)『首相支配 —日本政治の変貌』など。
【略歴】東京大学法学部卒。スタンフォード大学政治学部博士課程修了。大蔵省、政策研究大学院大学助教授、准教授を経て現職。
【注目するニュース分野】政治・外交

日本政治、比較政治の研究、教育をしています。関心は首相の指導力、コロナ危機への対応過程、参議院の役割など。著作に『コロナ危機の政治:安倍政権vs.知事』『参議院とは何か – 1947〜2010』(2010年度大佛次郎論談賞受賞)『首相支配 —日本政治の変貌』など。
【略歴】東京大学法学部卒。スタンフォード大学政治学部博士課程修了。大蔵省、政策研究大学院大学助教授、准教授を経て現職。
【注目するニュース分野】政治・外交

2022年

  • 第二次政権の下での日本経済新聞の世論調査によれば、内閣支持率は35%を切ることはなかった。だが、国葬に賛成と答えた人は直近の調査で33%。岸田首相は強固な安倍政権支持層も賛成で固めることができなかったとも言える。いくつかの要因がある。まず、事件後、自民党や安倍元首相と旧統一教会のつながりに強い関心が集まった。また、国葬決定過程で事前に野党に説明するなどの機会を設けず、手続き面での批判を招く余地を作った。さらに、岸田首相は批判が高まると理由として海外からの弔意を強調するようになり、功績を十分説明したとは言えない。集団的自衛権の解禁など安全保障面での貢献を強調すれば世論の反応は違ったであろう。

  • 豪州からアルバニージー首相、インドからモディ首相が参列することに注目したい。両国ともクアッド=日米豪印協力枠組みのメンバーであり、日本が「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する上で米国と並んで最重要視する国々である。両国とはマラバールに象徴されるように安全保障協力も深化させている。両国首脳の来日は安倍晋三元首相の大きな貢献が「自由で開かれたインド太平洋」構想の提唱やクアッドの推進であったことを示している。また、各国、就中、東アジア各国に両国と日本の緊密な関係を改め示すことになった。

  • 国葬への反対が賛成を大きく上回ることになった要因として、記事が指摘する以外に二つある。一つは銃殺事件後、旧統一教会と自民党の関係が連日報じられたこと。もう一つは、岸田首相が安倍元首相の功績を十分説明しなかったことである。功績は集団的自衛権の解禁、「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進、クアッドの創設を通じ、国際環境が不安定化する中で、日本の安全保障を強化したことである。元首相は1990年代来の懸案である集団的自衛権の問題をほぼ解決し、以後の政権の負担を緩和した。首相は左派への刺激を懸念して、説明を尽くさなかったのだろうが、逆に保守層を含め、国葬への理解を広めることができない結果になった。

  • 専門家有志による提言の主な内容は最終的に①より多くの医療機関での入院を可能にすること、②一般施設での診察を「極力」可能にすること、③保健所ではなく医療機関相互が入院調整をすることである。こうした内容について政権側と専門家の間に大きな齟齬はないはずである。最大の課題は②だ。日本経済新聞の記事によれば内科の数は6万ある一方で、発熱外来は4万に留まる。発熱外来の中にも実際には診察制限を設けている場合もある。医療保険制度の上で運営される医療機関の一部が保険料を払っている人々の診察を未だに拒むことは問題である。専門家には診療を拒む医療機関をなくすために有効な方策についてさらに踏み込んだ提案を期待したい。

  • これまでは冬に感染が拡大した。従って、秋から接種を進めることはタイミングとしては適切だ。記事は高齢者から接種を始めると伝える。だが、60歳以上の高齢者の6割以上が4回目の接種済みである。このため、5ヶ月の間隔を置くと実質的に60歳未満の層を中心に接種を進めることになる。年齢層が若いほど接種率が低く、感染が続く一つの要因とこれまで考えられている。実質的に60歳未満から接種を始めれば、この層の接種期間はこれまでよりは長くなる。この結果、接種率が上がり、感染の抑制効果が高まることを政府は期待しているのかもしれない。ただ、7波も収まりつつあり、若年層を含め、全体として接種が伸びるか不透明である。

  • 岸田首相は基本的にこれまでの説明を繰り返し、質疑の間でも答弁が変わることはなかった。もっとも従来よりも海外から多くの弔意寄せられたことを開催を決定した理由としてより強調したように感じられる。気になるのは岸田首相が冒頭説明の中で挙げた安倍元首相の実績である。元首相の功績を一つ挙げるとするならば、やはり集団的自衛権の行使を可能にしたことであろう。この政策は戦後安全保障政策の分水嶺であり、この結果、日本の対外政策の幅は大きく広がった。しかし、岸田首相は触れなかった。国葬への反対論は多い。開催理由について丁寧に説明することは大切である。同時に主張すべきは主張してくれることを期待したい。

  • 2類相当ということになっている新型コロナウイルス感染症も自宅療養のあり方の見直しなどの積み重ねを通じて、5類の扱いに近づいていく。ただ、最大の課題は診療する医療機関の数が限られることである。日本経済新聞の記事によれば内科の数は6万に上り一方で、発熱外来は4万あるという。しかし、多くの発熱外来は診療時間を制限し、診察の対象をかかりつけの患者に限る。この壁をクリアできない限り実質的に5類の扱いにすることは難しい。多くの人が健康保険料を払っている。にもかかわらず、保険医がそうした人の診察を拒むことは問題である。健康保険制度の原点に立ち返り、政府は診察する医療機関の数を増やすよう努めるべきである。

  • 世論との関係で見れば自民党としての調査はより早く実施することが望ましかった。今回、茂木幹事長は講演、選挙協力、資金のやり取りなどについては個人名を公表する方針を示した。しかし、これまでの報道は旧統一教会関連の団体は相当の数があることを示している。短期間に相当の年数を遡って調べきることができるのか疑問である。公表後も五月雨式に公表した以外の関係が明らかになると当該議員も自民党もさらにダメージを受けるだろう。この問題は相当長引くのではないか。

  • 来月接種開始となると記事も指摘するように4回目接種が始まったのが5月末であるために接種済みの60歳以上の人は当初は対象とならない。当初は若年層を含め、60歳未満の人が主な対象となる。この年代の3回目以降の接種率は相対的に低い。オミクロン対応ということで関心が集まり、接種が伸びれば、秋以降の感染拡大抑止にかなりの効果を発揮するだろう。今後はウイルスの変化に合わせて対応するワクチンを投入し、感染拡大が予想される時期に先んじて接種するインフルエンザのような対応になっていくだろう。課題はモルヌピラビルなど抗ウイルス剤の投与が限定的にしか行われていないことでより広範な投与を可能にするべきである。

  • 記事が指摘する通り、首相は挙党体制を構築した。ただ、ここ数日の世論調査で支持率は低下している。統一教会問題に加え、感染が収まらず、医療が逼迫していることも背景にあるだろう。首相は防衛力強化、コロナ感染症、ウクライナ戦争、電力問題、物価高など数多の課題に直面している。ただ、首相が掲げる「新しい資本主義」の取り組みが国民に十分伝わっているわけではない。実際には科学技術開発・経済安保では半導体開発促進など、デジタル改革ではアナログ規制の包括的見直しなど岸田政権は相当の試みをしている。問題は国民に理解してもらうことである。首相は「聞く力」をアピールしてきた。あわせて必要なのは「伝える力」である。