【池上彰】投稿一覧

池上彰

ジャーナリスト・東京工業大学特命教授

ジャーナリスト・東京工業大学特命教授

1973年に記者としてNHK入局。東京社会部などで報道に携わった。94年から11年間、「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年、フリーに。コラム、書籍、テレビなどでのわかりやい解説が幅広い世代の支持を得ている。12年から日本経済新聞及び日経電子版にて、若者向けコラムを連載している。
【注目するニュース分野】政治、経済、社会、教育、歴史

1973年に記者としてNHK入局。東京社会部などで報道に携わった。94年から11年間、「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年、フリーに。コラム、書籍、テレビなどでのわかりやい解説が幅広い世代の支持を得ている。12年から日本経済新聞及び日経電子版にて、若者向けコラムを連載している。
【注目するニュース分野】政治、経済、社会、教育、歴史

2022年

  • 日本でも菓子やカップ麺の値上げが続きますが、これはウクライナ情勢より前のアメリカやカナダでの天候不順が原因。ウクライナ情勢が反映されて価格が上昇するのは、まだ先です。心配なのは中東諸国。パンが大好きでたくさん食べる人たちが多い国は小麦を輸入に頼っています。ここでパンの値段が高騰すると、住民の抗議行動が増え、治安の悪化や政情不安につながります。それがIS(イスラム国)などの過激組織が勢力を盛り返すきっかけにならないか心配です。先進諸国も小麦値上げの影響を受けますが、これら諸国への支援も考えないとなりません。

  • 柯 隆さんの「張子の虎」という表現を読んで、思い出したことがあります。この言葉は、中国が毛沢東時代、米軍に対して使った言葉です。米中の国交正常化の前、中国が「アメリカ帝国主義」を激しく非難していた時代のことです。「強そうに見えても、実際にはたいしたことがないから米軍など恐れる必要はない」との文脈の中に登場しました。今回、世界の軍事関係者は、ロシア軍の予想外の苦戦に驚いていることでしょう。1939年、ソ連がフィンランドに侵攻したときも、ソ連軍は「戦争は数日で勝利に終わる」と高を括り、フィンランド軍の抵抗に苦戦しました。ロシアは歴史に学んでいないとつくづく思います。

  • 私は酒が体質的に飲めず、新人時代は、先輩や上司、取材先から酒を強要され、辛い日々でした。仕事で遅くなっても酒なしで食事ができるようなファミレスもなく、無理に酒も頼んで食事するという悲しい体験もしています。取材先で酒を飲まされ、特ダネを取ったものの、酔いが醒めるまで原稿を書けずに横になるという有様でした。でも、酒を飲まなかった(飲めなかった)おかげで、ふだん就寝時まで素面でいられましたから、勉強や執筆に専念できました。その積み重ねは、とても大きなものがあったと思います。

  • ロシアと宇宙での協力を進めると、何が起きるかわからないリスクがあることを世界に知らせる発言です。ロシアは、国内から撤退する外国企業の資産を差し押さえることや、ロシアの航空会社が海外企業からリースで運用している航空機を返却しない方針をほのめかしています。ロシアはこんな国だと国際的な評判を落とすと、いずれロシアがウクライナ侵攻を止めても、世界の企業はロシアへの経済的進出や貿易再開に二の足を踏むでしょう。短期的な報復が、長期的にはロシアの成長を妨げるのです。

  • 地球温暖化対策は待ったなしなのですが、ロシアへの制裁で国際協力が遅れそうです。しかし、物事は考えようです。日本も含め各国は「再生可能エネルギーへの転換には時間がかかるから、とりあえず石炭や石油よりは二酸化炭素の排出量の少ない天然ガスに切り替えよう」としてロシア産の天然ガスに頼ってきました。それに頼るわけにはいかなくなった以上、再生可能エネルギーへの転換を急がざるを得なくなりました。2050年にカーボン・ニュートラルが実現した時に、「ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに温暖化対策が進むことになった」と総括できるようにしたいものです。

  • プーチン大統領の、かつてのロシア帝国の栄光を取り戻し、歴史に名を残したいという思いは、別の形で実現しそうです。みずから「兄弟国」と称していたウクライナに攻め込み、ウクライナ国民を反ロシアの立ち場に追いやり、NATOに加盟しないことを選択していたスウェーデンやフィンランドの国民をNATO加盟へと駆り立てる。いまフィンランドには、ロシアに見切りをつけた大勢のロシア国民が駆け込んでいます。「ロシアを破綻の淵に追い込んだ独裁者」として歴史に刻まれることでしょう。

  • 数字上、治安は改善されているのに体感治安は悪化している。その理由は記事の通りなのでしょうが、報道の変化もあるように感じています。私が警視庁捜査一課担当の記者だった1980年と81年、東京都内で起きた殺人事件は全てローカルニュースでした。当時、全国各地で起きた殺人事件も、その地方のニュースに留まり、滅多に全国ニュースになりませんでした。テレビのニュース時間が限られていたこともあり、取り上げられなかったのです。その後、民放のニュース時間が増え、ワイドショーなどでは北海道や九州の事件も全国ニュースになるようになりました。結果、「殺人事件が増えている」という印象が生まれたようにも思えます。

  • この記事を読んで論評する気になれません。宇宙から見ても、これだけの熱を感知できるのですから、地上でどれだけの人が亡くなり、どれだけの住宅が破壊されていることか。それを考えると、心が張り裂ける思いがします。プーチンは(敢えて呼び捨てにしますが)、「民間は標的にしていない」などと言っていますが、発射されたミサイルや砲弾は、人間や住宅を識別できないのです。こういう手法でも被害を知ることができると世界に伝えなければ。

  • 日本政府がロシアへの経済制裁を決めたことを受けて、経済産業省が国内の企業にサイバー攻撃に気を付けるように呼びかけていました。今回の原因はまだ不明であるにせよ、ロシアへの経済制裁をすると、日本国内にも悪影響が出る覚悟が必要になるでしょう。ほかの企業の皆様、個人のパソコンも含めて、どうぞご注意を!

  • 投稿された映像のメタデータで、映像が撮影された場所や時間を特定し、ロシア側の嘘を見破る。これは民間の「べリングキャット」(鼠たちが猫に鈴をつけようと衆議一致するが、誰も怖がってやらなかったというイソップ童話から命名。誰もやらないことは我々がやろうという心意気を示す命名)がこれまで多くの実績を上げてきたことです。これを日経新聞も実行してみた。ネット時代の新しい取材手法として注目されてきただけに、この取り組みに拍手です。