阪神大震災28年

地域に眠る歴史的価値のある建造物の発見から活用までを担うヘリテージマネージャー（HM）の資格を持つ建築士らが、各地で活動している。阪神大震災で多くの建造物が失われた教訓を踏まえて誕生した。廃虚と化したホテルの文化財登録を実現したケースもある。 北海道北部の中頓別町の国道沿いにたたずむ「旧丹波屋旅館」。木造で一部が3階建て、和洋折衷の趣ある外観が特徴だ。築100年を過ぎ老朽化するなか、札幌市の1級

阪神大震災で市民の救出などに当たった兵庫県警が、若手警察官らに経験や教訓を伝える取り組みを進めている。職員約1万3千人のうち約8割が震災後の採用で、当時を直接知らない世代も増えた。「1月17日は忘れてはならない日」。証言の記録や語り部活動を通じ、突然の事態に備えてバトンをつなぐ。 「災害はいつ起こるか分からない。心構えと市民を救う使命感を忘れないでほしい」。県警OBの山崎保さん（64）は話す。2

阪神大震災から28年となった17日、被災各地で人々が犠牲者を悼んだ。発生当初は全国から延べ137万人超が支援に集まり、1995年は「ボランティア元年」と呼ばれた。国内で復旧・復興を支える意識が広がる契機となった一方、近年は高齢化や新型コロナウイルス禍が重なり担い手は減っている。災害に備えるには次代を育成し、教訓や記憶をつなぐ取り組みが欠かせない。 2022年11月、東日本大震災で被災した高齢者ら

■国際協力機構関西センター（JICA関西、神戸市）は途上国などから行政官を研修や留学で毎年招き入れ、日本の技術を伝えている。所長の木村出さん（48）は「防災や企業振興など、関西の知見と強みを生かした支援を」と意気込む。 JICAは国内に15拠点あり、それぞれの特色を生かして途上国の課題解決を後押ししてきた。JICA関西の強みは、防災、企業振興、水の3分野。とりわけ防災面では1995年に阪神大震災

6434人が亡くなった阪神大震災は17日、発生から28年となった。最大震度7の揺れが襲った神戸市では未明から多くの人が犠牲者を悼み、街は鎮魂の祈りに包まれた。志半ばで犠牲となった家族の無念さを胸に、遺族は「生きることの意味を伝えたい」と決意を新たにした。 暗闇を照らすともしび、静寂が包む被災地 犠牲者の名前を刻んだ銘板がある神戸市中央区の東遊園地では地震発生時刻の17日午前5時46分、集まった数

6434人が死亡した阪神大震災から17日で28年。震度7を記録した都市直下型地震では100カ所超で盛り土の地滑りが起き、人工で造成された住宅地に潜むリスクを浮き彫りにした。国は対策工事を求めるものの、費用負担への抵抗感から動きは鈍い。災害のたびに同様の被害が繰り返されるなか、いかに地域全体で危機意識を共有するかが課題として横たわる。 押しつぶされた13戸 1995年1月17日、兵庫県西宮市の仁川

日本酒を企画・販売するClear（クリア、東京・渋谷）は24日、1995年の阪神大震災当時から28年間熟成した日本酒「現外」を発売する。酒造会社の沢の鶴（神戸市）が当時被災し、醸造途中だった酒を熟成させた。価格は24万2000円（500ミリリットル）で、クリアのオンラインショップで販売する。 沢の鶴は震災当時、醸造設備が破損し、電気なども止まったため酒造りができなくなった。タンクに日本酒となる前

阪神大震災28年を翌日に控えた16日夕、神戸市中央区の公園「東遊園地」で市民らによる追悼行事「1・17のつどい」が始まった。灯籠に灯がともされ、集まった市民らが犠牲者の冥福を祈った。追悼行事は例年、地震が起こった17日早朝に開くが、新型コロナウイルス対策で分散来場してもらうため、2021年以降前倒しで開催されている。17日には同公園のほか、県内各地でも追悼の行事が開かれる。 発生時刻の12時間前

旧耐震基準で建設された分譲マンションの改修や建て替えが進まない。17日で28年となる阪神大震災では被害が深刻化したうちの約9割を旧基準の建物が占めた。首都直下地震が懸念される東京都も2021年末時点で、旧基準の16%でしか耐震性が確認されていない。工事の要否をはかる耐震診断の実施でさえ全国的に低調だ。診断結果が資産価値に与える影響への懸念が根強い。 不動産関連調査会社「東京カンテイ」（東京・品川

戦火を逃れて来日したウクライナ避難民の支援に、阪神大震災を経験した女性が奔走している。災害支援に取り組む「日本避難所支援機構」（神戸市）の事務局長、金田真須美さん（63）。先の見えない避難生活を少しでも快適にしようと自転車を調達して無償で提供し、交通ルールを教える講習会も企画した。「避難民が次の一歩を踏み出す助けになれば」と願う。 「日本の法律では自転車は車と同じ扱いです。自覚を持って運転して」