物語や実記が描く「戦争犯罪」 和歌山 章彦 編集委員 コラム 8月14日 ロシアのウクライナ侵攻を機に、私たちは「戦争犯罪」という言葉に接するようになった。 この言葉には、いくつかの含意がある。まず、戦争自体は犯罪ではない。自衛のための武力行使は正当行為だ。が、戦争にもルールがある。非戦闘員の殺傷や捕虜の虐待は、国際人道法に反する。一切の罪悪を含まない「公正な戦争」が推奨されるのだ。 そんなバカな、と叫び、刑場の露と消えた人びとがいる。総力戦に動員された私たちの祖父、 物語や実記が描く「戦争犯罪」
迫る「スポーツベッティング」という黒船 北川 和徳 コラム 8月7日 「ベッティング(賭け)」という言葉は聞き流せても、「賭博」となると途端にネガティブなイメージが広がる。ましてや「スポーツ賭博」となれば、日本人の多くが顔をしかめることだろう。 大谷翔平(大リーグ・エンゼルス)が次の打席でホームランを打つか否か――。スポーツのプレーの行方や試合結果にお金を賭けるスポーツベッティングの市場は世界で急拡大している。 伝統的にギャンブルが盛んな英国を除けば、欧米でも日本 迫る「スポーツベッティング」という黒船
昆布不作が映す食文化の危機 堀田 昇吾 コラム 7月31日 日本近海の水産資源に異変が起きている。北海道函館市では6月に漁が解禁された名物のイカが今年も不漁になり、7月解禁の天然真昆布(まこんぶ)も海中で昆布が育っておらず、収穫はほとんど見込めない状態だ。近年は他地域でも、サバやサケ、サンマといったなじみのある魚で漁獲量が減少している。 数十年単位で海水温や海流などが変化し、とれる魚の種類が変わる魚種交代と呼ばれる現象がある。マイワシとカタクチイワシの交 昆布不作が映す食文化の危機
大物ミュージシャン「楽曲売却」の行方 吉田 俊宏 コラム 7月22日 ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、ポール・サイモン、ニール・ヤングら、多くの大物ミュージシャンが楽曲の権利を相次ぎ売却して話題になっている。 海外メディアが報じた推定売却金額はほとんどが数百億円規模と巨額になっている。買い手はユニバーサル音楽出版グループ(UMPG)、ソニー・ミュージックエンタテインメント、音楽特化型ファンドの英ヒプノシス・ソングス・ファンドなどだ。 ノーベル文学賞 大物ミュージシャン「楽曲売却」の行方
マスクとコロナと日本人 矢野 寿彦 Think! コラム 7月15日 5月20日、後藤茂之厚生労働相が記者会見でマスクに関する政府の見解を示した。これからは熱中症のリスクが高くなる、屋外では距離をとれば着用する必要はない――。 以来、「脱マスク」へ後押しする記事を書いた手前、記者は外では外すことにした。目算だが今でも9割の人が律義にマスクをしている。炎天下、顔を半分隠して自転車のペダルをこぐという、不自然な光景もなかなか減らない。 マスクなしで外出しても周囲の視線 マスクとコロナと日本人
ダークパターンは悪者か 瀬川 奈都子 コラム 7月8日 「ネット通販で1回限りの買い物をしたつもりが定期購入を申し込んでしまった」「入るつもりがなかった有料サービスの会員になってしまった」――。こんな経験はないだろうか? これらは決済画面で定期購入や有料サービスの申し込みボタンを目立たせるなどして、消費者を惑わせるようにウェブ上のデザインが設計されているためにおきる間違いだ。こうした、意図に反する行動を誘うデザインを「ダークパターン」と呼ぶ。 ダーク ダークパターンは悪者か
戸籍法改正で問われる命名文化 小林 明 小林 明(記者紹介) コラム 7月1日 光兜、児輝、天、波亜、絆希、音暖、希星、輝星、咲恋、心詩――。これらは実在する新生児の名前である。それぞれどう読むのか、お分かりだろうか? 答えは、らいと、るき、しえる、なろあ、ばき、のの、きらら、きあら、えれん、こんず――。前半5つが男児名、後半5つが女児名だという。うまく読めずに戸惑う人が多いかもしれない。 近年、こうした読みが分かりにくい名前が急増している。極端な例は「キラキラネーム」など 戸籍法改正で問われる命名文化
メタバースで広がるファッションの未来 大岩 佐和子 Think! コラム 6月24日 モードの国、フランスで今年、企業が売れ残った新品の服を廃棄することを禁止した世界初の法律が施行された。売れ残ればリサイクルや寄付をし、違反すれば罰金が科せられる。欧州のほかの国でも同様の動きがみられ、その波はいずれ日本にも訪れるだろう。これまで大量に捨てられてきた服が捨てられなくなると、ファッションのあり方はどう変わるのか。 新しい未来を切り開こうと、国内でも様々なプレーヤーが動き出している。都 メタバースで広がるファッションの未来
トクサツは日本の伝統文化である 滝 順一 Think! 編集委員 コラム 6月17日 「トクサツ(特撮=特殊撮影技術)とコンピューター・グラフィックス(CG)は対立させて考えるものではないでしょう」 CGを駆使した映画の全盛時代にあって、かつて「ゴジラ」など怪獣映画で子供たちを熱狂させ世界から注目された日本のトクサツの魅力は何か。 そんな問いかけに、日本の特撮に深く関わり続けてきた原口智生さんは、そう答えた。 原口さんは子供のころ、縁あって映画会社の特撮美術部門に出入りし、怪獣に トクサツは日本の伝統文化である
アトムに学ぶ未来の苦さ 岡松 卓也 コラム 6月10日 ウクライナ側がロシアの戦車隊列を爆撃――。ニュース番組でその画像が流れた瞬間、我を忘れて快哉(かいさい)を叫んだ。一方的な理由で攻め入り、市民をも容赦なく攻撃するロシア軍なのだから、これぐらいは当然の報いと思ったためだ。だが、ふと我に返って、テレビゲームのように軽々しく片付けてしまう自分に決まりの悪さを覚えた。 爆撃されたロシア軍戦車の乗組員にだって、親や兄弟もいれば、故国に残した恋人や妻・幼子 アトムに学ぶ未来の苦さ