コロナで変貌した世界、どう生きる 識者7人のまなざし カバーストーリー 2月5日 2年にわたる新型コロナ下での生活は私たちの価値観を変え、社会の諸問題もあらわになりました。パンデミックの中から立ち上がった新たな思想について、7人の識者に聞きました。 これほど人類が同じ生き方を強いられたことはなかっただろう。様々な思想、信条、信仰を持ちながらみなマスクをしている。ひとつのウイルスにより、私たちはつながっていたんだということを、徹底的に教えられた。 コロナ前の我々は「私(わたし) コロナで変貌した世界、どう生きる 識者7人のまなざし
支え合うケア、新たな共助 宗教学者・島薗進氏 カバーストーリー 2月1日 苦しく困難な日々が長期にわたって続いている。こういう苦境にこそ、宗教は大きな役割を果たさなくてはならない。2011年の東日本大震災の際は、被災地での追悼集会や支援、人々の心のケアなどキリスト教、仏教など信教を超え、宗教者は積極的に活動した。 しかし、人と人が接触することで感染が広がるいまの状況では、諸宗派の活動自体がしにくくなった。コロナの流行は、社会の中で居場所を失っている人々がいることを改め 支え合うケア、新たな共助 宗教学者・島薗進氏
ノイズが生む他者との信頼 美学者・伊藤亜紗氏 カバーストーリー 1月30日 人類は今「ともに集まる」共生の場を失っている。「他人の体は命を脅かすリスクだ」という認識は新しい生活様式を生み出した。外出自粛を前提に、マスクの着用やパーテーションの設置など社会的距離の確保が活動の条件になった。社会的動物としてのヒトの根幹に関わる営為が大幅に制限されたと考えてよい。 もっとも、こうした動きは今に始まったわけではない。中世に描かれた絵画「最後の晩餐(ばんさん)」を想像してほしい。 ノイズが生む他者との信頼 美学者・伊藤亜紗氏
災害下、建築の役割再考 建築家・坂茂氏 カバーストーリー 1月28日 「コロナで都市と人の関係は変わるか」。そんな質問を受けることがある。問題になっている都市の一極集中は、なにもコロナで急に生じたわけではなく、表面化したにすぎない。満員電車などの問題はもちろん改善されなくてはならないし、単身赴任などの制度も見直されるだろう。 ひとりの建築家、ひとつの建築物だけで解を出すのは難しい。それでも「建築家は社会の役に立っているのか」という問いと常に向き合ってきた。米国留学 災害下、建築の役割再考 建築家・坂茂氏
クリエーティブの火を探す 作曲家・藤倉大氏 カバーストーリー 1月27日 人間は強い。パンデミックという最悪の境遇でも、進むことができる。 「大ちゃんさ、Zoomのための曲って書けないの?」。同世代で仲がいい指揮者の山田和樹君から電話がきたのは、一昨年の4月だった。 そのころオンラインで演奏家がつながり、画面上でシンフォニーを合奏する動きがあった。でも通信の時差で音がズレてしまい、完璧な演奏はのぞめない。待てよ、ズレを前提とした曲って作れないか? その晩、お風呂の中で クリエーティブの火を探す 作曲家・藤倉大氏
人間中心主義に疑問を 劇作家・岡田利規氏 カバーストーリー 1月26日 「来年にはコロナが終息する」と考えるのが人間の性(さが)だ。こんなことあと1年もやってられないし、おかしいと思う。今年は実家に帰れなかったけど、来年は帰りたい。だから「来年には」と考える。 でもウイルスは本来、人間の都合とは関係がない。人間の尺度、目線では捉えられないはず。それなのに人間中心主義的に考えて、対処できると考えてしまう。そんな私たちを俯瞰(ふかん)できたら面白いのではないかと、コロナ 人間中心主義に疑問を 劇作家・岡田利規氏
転倒した労働の価値 社会学者・酒井隆史氏 カバーストーリー 1月25日 人間は労働からの解放を目指して産業と社会機構を発展させてきた。経済学者のケインズは、自由な市場原理に基づく経済成長や産業合理化、日進月歩の科学技術を根拠に「孫たちの経済的可能性」(1930年)を書いた。世界を成立させるのに不可欠な労働は減少し、週15時間働けば十分な時代が到来する、と予言した。 ところが、現実は異なる。コロナ禍では在宅ワークなどの新しい生活様式が生まれ、仕事の要否を検討する必要に 転倒した労働の価値 社会学者・酒井隆史氏
自らの弱さ知り他人思う 批評家・若松英輔氏 カバーストーリー 1月23日 2年にわたる新型コロナ下での生活は私たちの価値観を変え、社会の諸問題もあらわにした。パンデミックの中から立ち上がった新たな思想について識者に聞いた。 これほど人類が同じ生き方を強いられたことはなかっただろう。様々な思想、信条、信仰を持ちながらみなマスクをしている。ひとつのウイルスにより、私たちはつながっていたんだということを、徹底的に教えられた。 コロナ前の我々は「私(わたし)」の幸せを考えて生き 自らの弱さ知り他人思う 批評家・若松英輔氏