ロボットが働くトマト農場 省力化で有機農業を推進 食の進化論 コラム 編集委員 6月3日 愛知県知多市にあるミニトマトの栽培ハウスを訪ねた。横にはオープンしたばかりの直売所があり、大勢の買い物客でにぎわっていた。ごくふつうのトマト農場に見えるこの施設で、日本の農業のかたちを変えるような挑戦が始まっている。 ハウス内の温湿度や中に差し込む日射量、二酸化炭素(CO2)の濃度などが、トマトにとって最適な状態になるようにコンピューターで自動で調節している。いわゆる「環境制御型」の栽培施設だ。 ロボットが働くトマト農場 省力化で有機農業を推進
YouTubeで「明るい農業」 情報発信で共感の輪 食の進化論 コラム 編集委員 5月27日 農協などに販売を任せるのではなく、農産物を自分で売ろうと思えば売り先にどうアピールするかが農家にとって大きな課題になる。「YouTube(ユーチューブ)」などのSNS(交流サイト)はそのための有力なツールになる。 奈良県葛城市。市街地を見下ろす山あいの場所に、石井悠勢さんの畑はある。大学生のときに畑を借り、野菜をつくり始めた。 ブロッコリーやトウモロコシ、ダイコン、キャベツなどを栽培し、直売所や YouTubeで「明るい農業」 情報発信で共感の輪
AIでイチゴの収穫量を予測 大阪ガスとイオンの農場 食の進化論 コラム 編集委員 5月20日 千葉県柏市にあるイオンの子会社、イオンアグリ創造(千葉市)の農場。同社は大阪ガスと組み、栽培ハウスが立ち並ぶこの農場で人工知能(AI)を使って農業の収益性を高める実証実験を行っている。10日先までのイチゴの収量予測だ。 収穫量の予測は大阪ガスが担当する。まず気象庁が発表するデータをもとに日射量や二酸化炭素(CO2)濃度、温湿度を予測し、葉っぱ1枚ごとの光合成量の見通しを出す。ここまでは理論モデル AIでイチゴの収穫量を予測 大阪ガスとイオンの農場
胸肉を熟成で食べやすく 徳島のブランド「阿波尾鶏」 食の進化論 コラム 編集委員 5月13日 山あいの地域の農業生産は、平地と比べて効率化が難しい。コストを下げにくいというハンディを乗り越えるには付加価値を高め、価格競争に巻き込まれるのを避けるのが王道だ。養鶏でそれを実現したケースを紹介したい。 徳島県美馬市。カーブが続く細い山道を車で登っていくと、貞光食糧工業(徳島県つるぎ町)の養鶏場が現れた。飼っているのは地鶏の「阿波尾鶏」。肉用鶏として一般的なブロイラーと比べると、すらりとしている 胸肉を熟成で食べやすく 徳島のブランド「阿波尾鶏」
豚に優しい飼育環境 時代を先取りした「経営の必然」 食の進化論 コラム 編集委員 4月29日 家畜にストレスを与えずに育てる「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を求める声が高まっている。欧米で広がり、日本にも入ってきた考え方だが、多くの人がこの言葉を知るようになる前から実践している農場がある。養豚を手がける丹沢農場(神奈川県愛川町)の取り組みを紹介したい。 丹沢農場がアニマルウェルフェアに取り組むようになったのは、いまから10年余り前。豚の肥育場を新設するのを機に、1頭当たりの面積を1. 豚に優しい飼育環境 時代を先取りした「経営の必然」
農業で進める脱炭素 フルーツ王国・山梨が認証制度 食の進化論 コラム 編集委員 4月22日 農業をもっと環境に優しいものにすべきだという機運が国内外で高まっている。だが政府や世論に背中を押されるより先に、脱炭素に資する農法を実践している農家たちがいる。彼らの取り組みに、国際潮流が追いついたという面もある。 そんな農業者のひとり、久津間紀道さんの桃畑を山梨県笛吹市に訪ねた。すぐ気づくのは、桃の木の下にびっしり草が生えている点だ。ふつうの農場は作物以外の草を除草剤などを使って取り除く。ここ 農業で進める脱炭素 フルーツ王国・山梨が認証制度
カラフルな干し野菜 加工で広がる自給の楽しさ 食の進化論 コラム 編集委員 4月15日 埼玉県ときがわ町の人家のまばらな森の中に、農家民宿「楽屋」はある。運営している金子勝彦さんと阿部由佳さんが目指すのは、食べるものを自分たちでつくる自給自足の暮らしだ。 阿部さんが最近、力を入れているのが干し野菜だ。野菜を薄く切り、太陽の光を使って乾かす。ふつうに外で干すと約1週間、陽光を木箱の中で集める「ソーラーフードドライヤー」という装置を使うと2〜3日でできあがる。 試食してみて、まず驚いた カラフルな干し野菜 加工で広がる自給の楽しさ
国産100%ウイスキーに挑戦 背中押した北海道コーン 食の進化論 コラム 編集委員 4月8日 新潟県村上市の郊外に、ウイスキーの製造を2022年秋に始めたばかりの新しい蒸留所がある。名前は「吉田電材蒸留所」。運営しているのは、産業機器の設計や製造を手がける吉田電材工業(東京・台東)だ。 一面が黒塗りであか抜けた外観の建物の中に入ると、ウイスキーを詰めたばかりの樽(たる)が並んでいた。奥には穀物を粉砕する機械があり、隣の部屋には原料を発酵させたり、蒸留させたりする機械がある。 できたばかり 国産100%ウイスキーに挑戦 背中押した北海道コーン
とろ〜り食感の大豆ヨーグルト 酸味抑えた「新食品」 食の進化論 コラム 編集委員 4月1日 兵庫県西宮市。食品メーカーなどの工場が立ち並ぶ一角に、フジッコの鳴尾工場がある。建物に近づくと、食欲を刺激する香りが辺りにほのかに漂っていた。同社の主力商品のひとつ、つくだ煮だ。 今回取材したのは、つくだ煮とは別の商品。その製造ルームに入ると、さっきとはまったく違う香りが満ちていた。大豆の香りだ。3月に発売した新商品「まるごとSOYカスピ海ヨーグルト」をここで製造している。 どんな味なのか試食し とろ〜り食感の大豆ヨーグルト 酸味抑えた「新食品」
鳥インフルで減った鶏と卵 岐阜の企業が担う供給回復 卵不足 Think! Nikkei Views 編集委員 3月28日 高病原性の鳥インフルエンザが猛威をふるい、多くの鶏が殺処分になって卵の値段が高騰している。事態を打開するうえで大切なのは、鶏の数をできるだけ早く回復させることだ。その役割は誰がどのように担うのだろうか。そのことを考えるために、一般的に知られていない鶏の供給の仕組みを調べてみた。 卵の値段が上がり続けている。鶏卵の販売会社のJA全農たまご(東京・新宿)が発表する相場情報によると、目安となる東京地区 鳥インフルで減った鶏と卵 岐阜の企業が担う供給回復