崩れた不敗神話、タクシン氏「選挙の天才」が失う神通力 高橋 徹 Think! コラム 東南アジア 編集委員 5月23日 14日のタイ総選挙(下院選、定数500)は革新系の前進党が第1党に躍り出る「まさか」の結果となった。同党の次期政権構想にタクシン元首相派のタイ貢献党などの野党勢力が呼応し、1週間後の時点で連立の枠組みは計8党・313議席まで広がった。 前進党のピタ党首を首相とする政権樹立にはまだ足りない。国会の首相指名選挙は上院(定数250)との合同投票。下院の与党勢力や国軍任命の上院議員の切り崩しが不可欠だ。 崩れた不敗神話、タクシン氏「選挙の天才」が失う神通力
バングラデシュ「遅咲きのフロンティア」に脱炭素の試練 高橋 徹 コラム 南西ア・オセアニア 編集委員 5月16日 見渡す限りに塩田地帯が広がっていた。所々に積まれた塩の白い小山を横目に、でこぼこ道を車で走っていくと、まず排気塔、続いて巨大な建屋が輪郭を現してきた。バングラデシュ南部で日本の官民が進める「マタバリ超々臨界圧石炭火力プロジェクト」である。 送電網との通電試験は途中の変電所トラブルで予定より半年ずれ込み、筆者の訪問前日の4月15日に完了したのだという。3月末時点の工事進捗率は93%。「新型コロナウ バングラデシュ「遅咲きのフロンティア」に脱炭素の試練
秒読みタイ総選挙、「水と油」大連立の現実味 高橋 徹 コラム 東南アジア 編集委員 5月2日 先週、1年ぶりにバンコクを訪れた。かの地の4月は真夏だが、今年はタイ気象局が何度か熱波警報を発する、尋常ではない暑さ。おまけにまだ乾期なのに、短い滞在中に2度もスコールに見舞われた。 不安定な気象、さらに4月中旬のタイ正月(ソンクラン)に4年ぶりに再開された水掛け祭りのけん騒の余韻が残る中で、3月20日の下院解散から50日以上も続くマラソン選挙戦は、5月14日の投開票へ向けて最終コーナーに差し掛 秒読みタイ総選挙、「水と油」大連立の現実味
幻の「アジア通貨基金」構想、米中対立下で再燃? 高橋 徹 コラム 東南アジア 編集委員 4月11日 懐かしさを伴うその名称は、象徴的といえる場所で、しかし意外な人物の口から飛び出した。 「我々の国際的なインフラを部外者が決めてはいけない。必ずしも競合するためでなく、バッファーとして、国内、域内、アジアで独自の力を持つべきだ」 2月10日、マレーシアのアンワル首相は訪問先のタイで、今後の新たな経済危機に備えるためだとして、唐突に「アジア通貨基金(AMF)」の必要性に言及した。 AMFは1997年 幻の「アジア通貨基金」構想、米中対立下で再燃?
号砲タイ総選挙、名門「民主党」は消え去るのか 高橋 徹 コラム 東南アジア 編集委員 3月28日 4年ぶりのタイ総選挙(下院選、定数500)の号砲が鳴った。プラユット首相が20日に下院を解散し、投開票は5月14日と決まった。タクシン元首相派の最大野党・タイ貢献党、親軍派の最大与党・国民国家の力党(PPRP)を軸とする戦いは前回と同様だ。 国政選挙で実に5連勝中のタイ貢献党の優位は動かない。タイ国立開発行政大学院による最新の世論調査では政党支持率が49.8%、首相候補の支持率もタクシン氏次女の 号砲タイ総選挙、名門「民主党」は消え去るのか
米国陣営に戻るフィリピン、墓穴を掘った中国 高橋 徹 米中衝突 コラム 中国・台湾 東南アジア 編集委員 3月14日 超多忙な国家指導者にとって異例の長さの滞在は、しっかり成果を伴った。2月8〜12日に就任後初めて日本を訪問した、フィリピンのマルコス大統領である。 240人もの企業関係者を同行し、日本の官民から130億ドル(約1兆7500億円)規模の投資や援助を引き出した。岸田文雄首相との首脳会談では、人道支援や災害援助で自衛隊をフィリピンへ派遣する際の手続きを簡素化する取り決めを交わした。 マルコス氏は1月、 米国陣営に戻るフィリピン、墓穴を掘った中国
ベトナムは安全か、政変が問う「フレンドショア」の行方 高橋 徹 米中衝突 コラム 東南アジア 編集委員 2月21日 新年早々、まるで健在ぶりを誇示するかのような外交攻勢だった。 ベトナムの旧正月「テト」が明けて間もない2月8日から11日、ファム・ミン・チン首相はシンガポールとブルネイを歴訪した。前者は昨年まで3年連続で最大の対内投資国。デジタル経済やグリーン経済の協力促進の覚書へ署名し、リー・シェンロン首相を年内の自国訪問に招待した。 続く13〜14日は最大の輸出相手である米国だ。キャサリン・タイ通商代表部( ベトナムは安全か、政変が問う「フレンドショア」の行方
泥沼のミャンマー危機、インドネシアが救えるか 高橋 徹 ミャンマークーデター コラム 東南アジア 編集委員 2月7日 いよいよ真打ちの登場である。2023年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国として3〜4日に最初の外相会議を招集したインドネシア。1年の議論の方向を固める場の最大の焦点は、ミャンマー情勢への対応の仕切り直しだった。 国軍に「5項目の合意」の履行をあくまで迫ることを再確認し、議長国がそのための計画表を提示した。いつまでにどうやって、といった詳細は明かさなかったが、インドネシアのルトノ外相は「広範 泥沼のミャンマー危機、インドネシアが救えるか
インドの世紀が到来? 中国とは異質の「厄介な大国」 ウクライナ侵攻 米中衝突 高橋 徹 Think! コラム 南西ア・オセアニア 編集委員 1月17日 ウクライナ情勢が泥沼化したまま越年し、中国は新型コロナウイルスの遅れた感染爆発のただ中にある。分断と不穏で始まった2023年の世界で「大国」の地位固めに動き出した国がある。 「あなた方の声はインドの声であり、あなた方の優先課題はインドの優先課題だ」。インド政府が12~13日にオンラインで主催した「グローバルサウスの声サミット」。招待した約120の途上国が10の分科会で討議に臨んだなか、開幕セッシ インドの世紀が到来? 中国とは異質の「厄介な大国」
ラオス「一帯一路」鉄道1年、連結目指す小国の賭け 高橋 徹 コラム 中国・台湾 東南アジア 12月27日 「両国の国民に恩恵をもたらすだけでなく、人気の国際公共財、そして国際協力のプラットフォームとなった」 中国・雲南省から南下し、ラオスを縦断する全長1035キロメートルの国際長距離鉄道が、開業から1周年を迎えた12月3日。中国国営の新華社は「乗客850万人、貨物1120万トン」という輸送実績を紹介したうえで、その国際的な意義をことさら強調した。 習近平(シー・ジンピン)国家主席肝煎りの広域経済圏構 ラオス「一帯一路」鉄道1年、連結目指す小国の賭け