政変への序曲、ミャンマー「熱狂の5年」の功罪 東南アジア コラム 2月23日更新 軍事クーデターから3週間が過ぎ、ミャンマーの政治危機は一段と深まっている。抗議デモに業を煮やした治安当局が武力行使に動き、一般市民に犠牲者が出始めた。 首都ネピドーで銃撃され重体だった女性が19日に亡くなり、20日には中部マンダレーと最大都市ヤンゴンで計3人が射殺された。当局は発砲をためらわなくなりつつあり、極めて危険な情勢だ。 最初の犠牲者がネピドーで出たのは皮肉だ。かつての軍事政権末期の20 政変への序曲、ミャンマー「熱狂の5年」の功罪
ミャンマー軍政「後見役」の中国、愛憎と打算の関係史 ミャンマークーデター 中国・台湾 東南アジア コラム 2月8日 2160キロメートルもの国境を接する国で起きた政変を、さすがに手放しで歓迎はできなかったのだろう。1日にミャンマーで起きたクーデターについて、中国は「友好的な隣国」と述べるにとどめ、静観を決め込んだ。 政府の公式見解より、御用メディアの報道の方がわかりやすい。国営通信の新華社はミャンマー国軍による政権転覆を「大規模な内閣改造」と表現した。共産党系の環球時報は「選挙での敗北を認めず、首都での暴動を ミャンマー軍政「後見役」の中国、愛憎と打算の関係史
バイデン外交が探る新たな「アジア・リバランス」 バイデン政権 中国・台湾 東南アジア コラム 1月26日 トランプ前大統領の扇動が招いた米連邦議会占拠事件の衝撃が冷めやらぬなか、1月20日に就任したバイデン新大統領。民主主義や人種差別、貧富の格差など国内問題に焦点を当てた就任演説が、ようやく対外関係に触れたのは、終盤に差し掛かってからだった。 「同盟関係を修復し、もう1度世界に関与していく」。第2次世界大戦後、自由主義陣営の盟主として時に行き過ぎとも思える介入姿勢を是としてきた超大国の指導者があえて バイデン外交が探る新たな「アジア・リバランス」
「アジアの工場」主役交代? タイよりベトナムは本当か 東南アジア コラム 1月12日 東南アジアで新型コロナウイルスの感染抑制に成功してきたベトナムとタイ。世界保健機関(WHO)から模範と称賛された両国はしかし、2021年の幕開けに合わせたように差が生じ始めた。 ベトナムは市中感染が出るたびに厳格に封じ込め、累計感染者は1500人余りにとどまる。一方、タイは昨年12月19日、バンコク近郊の水産市場で働くミャンマー人の出稼ぎ労働者の間で大規模なクラスターが確認されたのを境に、感染が 「アジアの工場」主役交代? タイよりベトナムは本当か
「損して得とる」ASEAN、8年越しのRCEP合意 中国・台湾 東南アジア コラム 12月22日更新 世界の人口や国内総生産(GDP)の3割をカバーする東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が、8年間のマラソン交渉の末に決着した。米国を筆頭に保護主義が台頭するなか、アジア発で自由貿易の砦(とりで)を守ったという「総論」での意義は大きい。ただし「各論」にあたる利害得失は、当然ながら国によって異なる。 交渉妥結の成果を殊更に誇示するのは中国だ。新型コロナウイルス禍のためオンラインでの協定署名式に臨ん 「損して得とる」ASEAN、8年越しのRCEP合意
復活した「電電ファミリー」、アジアでの過去・未来 高橋 徹 ネット・IT コラム(国際) 東南アジア 12月8日 幸先としては悪くない。11月30日、英政府が次世代通信規格「5G」のインフラから中国の華為技術(ファーウェイ)を排除する行程表を示し、通信機器の調達多様化へ向けた資金支援先のひとつにNECの研究拠点を選んだ。 NECは6月にNTTと資本・業務提携し、共同開発する通信機器のグローバル展開に踏み出した。安全保障上の懸念から米国が旗を振り、オーストラリアや英仏も同調するファーウェイ外しの動きを千載一遇 復活した「電電ファミリー」、アジアでの過去・未来
スー・チー氏「地滑り勝利」では埋まらぬ軍との相克 高橋 徹 コラム(国際) 東南アジア 11月17日更新 まさに「地滑り的」という形容がふさわしい圧勝だった。 11月8日に投開票されたミャンマー総選挙で、アウン・サン・スー・チー国家顧問率いる与党、国民民主連盟(NLD)は改選議席の83%の396議席を制した。半世紀を超す国軍の政治支配に終止符を打った2015年の前回総選挙(79%)をも大きく上回った。 実質的な勝敗ラインは70%(332議席)だったといえた。全体の4分の1を占める非改選の軍人議席16 スー・チー氏「地滑り勝利」では埋まらぬ軍との相克
タイ王室改革、「モノ言わぬ多数派」の実相 高橋 徹 コラム(国際) 東南アジア 11月3日更新 タイで続く反体制デモは、対抗して体制支持派も街頭に繰り出し、示威活動の応酬となってきた。 学生主導の反体制派は、販売収益を運動資金に充てるという黒いTシャツを着て、プラユット政権の退陣、憲法改正、そして王室改革を要求する。体制派は王室護持を声高に叫び、王室カラーの黄色を身にまとう中高齢層が多い。 タイでは過去に「赤」のタクシン元首相派と「黄」の反対派が政争を繰り広げ、大規模なデモを競ってきた。今 タイ王室改革、「モノ言わぬ多数派」の実相
混沌のタイ反体制デモ、見当たらぬ「出口戦略」 コラム(国際) 東南アジア 10月20日更新 路上を埋め尽くす人、人、人。地響きのような喚声。人いきれをかき分けるうちに、かつて同じ場所で体験した混沌の記憶が鮮明によみがえってきた。 10月15日夕、反体制集会の参加者がバンコク都心のラチャプラソン交差点に集まり始めた。日が暮れると数は膨らみ、警察推計で1万人規模に達した。独裁国家への抵抗を描く映画「ハンガーゲーム」に登場し、今回の抗議のシンボルとなっている3本指を掲げて「プラユット(首相) 混沌のタイ反体制デモ、見当たらぬ「出口戦略」
中銀は財布役? インドネシア法改正が映す民主化逆行 高橋 徹 コラム(国際) 東南アジア 10月13日 「東南アジアで最も民主化が進んだ国」といまや自他共に認めるインドネシアで、その称号に似つかわしくない事態が勃発した。 首都ジャカルタなど主要都市で10月8日、ジョコ政権への抗議デモを開いた労働者の一部が暴徒化し、バス停や車に放火するなどして治安部隊と衝突。4千人近くが警察に拘束された。3日前に国会で可決した外資誘致強化のための制度改正が、自分たちの権利を損なうと反発したためだ。政治集会は民主国家 中銀は財布役? インドネシア法改正が映す民主化逆行