スリランカ経済危機 「債務のワナ」以前の手痛い失政 高橋徹 アジアBiz Think! コラム 南西ア・オセアニア 5月10日 1948年の独立以降、最悪とされる危機である。人口2200万人の南アジアの島国・スリランカの経済が破綻の淵にひんしている。 3月に前年同月比18.7%を記録した最大都市コロンボの消費者物価指数は、4月には29.8%へ跳ね上がった。一方、2019年末に76億ドル(約1兆円)あった外貨準備は足元で18億ドルまで目減りし、輸入に頼る燃料や医薬品の欠乏が深刻になっている。 「国際通貨基金(IMF)にもっ スリランカ経済危機 「債務のワナ」以前の手痛い失政
米市場に挑むベトナム「EV国民車」の虚実 高橋徹 東南アジア 4月19日 「矢継ぎ早」の形容がふさわしいだろう。ベトナムの大手企業ビングループ傘下の自動車メーカー、ビンファストの対米進出戦略である。 1月にラスベガスで開いた世界最大のテクノロジー見本市「CES」で電気自動車(EV)を公開し、販売予約を始めた。当初はベトナムから輸出するが、3月末には20億ドル(約2500億円)を投じてノースカロライナ州に年産15万台の量産工場を建設し、2024年から現地生産に切り替える 米市場に挑むベトナム「EV国民車」の虚実
ミャンマーを去る石油メジャーの冷徹な計算 ウクライナ侵攻 ミャンマークーデター 環境エネ・素材 コラム 東南アジア 3月22日 世界秩序を根底から揺さぶるロシアのウクライナ侵攻は、東西冷戦後にグローバル化へひた走ってきた多国籍企業に軌道修正を迫る。エネルギー分野は典型だろう。英BPやシェル、米エクソンモービルなどのメジャー(国際石油資本)がすぐさまロシアからの撤退を表明した。 「責任ある撤退」を迫られるのは、2021年2月に軍事クーデターが起きたミャンマーでも同じだ。年間15億ドル(約1800億円)ともされる石油・天然ガ ミャンマーを去る石油メジャーの冷徹な計算
ウクライナ侵攻で露呈したインド「戦略的自律」の限界 ウクライナ侵攻 Think! コラム 南西ア・オセアニア 3月1日 まさかと思われたロシアのウクライナ侵攻は、地理的に隔たったアジアにも衝撃を与えた。 「我々は遠く離れた小さな国だが、非常に心配だ」。侵攻が始まった2月24日。マレーシアのイスマイルサブリ首相をプノンペンに迎え、首脳会談に臨んでいたカンボジアのフン・セン首相が語った。 侵攻を「正当だ」と支持したミャンマー国軍は論外だが、東南アジア諸国連合(ASEAN)でロシアを非難したのはインドネシアとシンガポー ウクライナ侵攻で露呈したインド「戦略的自律」の限界
インド太平洋を結ぶタイ「陸上橋」構想、日本は動くか コラム 東南アジア 2月15日 西に広がるインド洋への「玄関口」の候補地は、アンダマン海へ突き出た小さな半島だった。 タイ南西部ラノーン県のアオアーン地区。市街地から30キロメートルほど南下した一帯は原生林に覆われ、海からしか近づけない。「港湾の建設予定地だとか言って、視察に来る人が増えているよ」。近くの村でチャーターしたボートを操る漁民が、往復2時間の船旅の途中で教えてくれた。 地元の人にもあまり知られていなかったアオアーン インド太平洋を結ぶタイ「陸上橋」構想、日本は動くか
カンボジア和平30年、独裁首相がミャンマーに重ねる幻影 ミャンマークーデター 東南アジア 1月25日 2022年の東南アジア諸国連合(ASEAN)は波乱の幕開けとなった。世界遺産「アンコールワット」で有名なカンボジア北西部のシエムレアプで、18~19日に開催を予定していた定例の外相会議が、直前に延期されたのだ。 最初の外相会議はその年のASEANの議論の方向を固める重要な場だ。新型コロナウイルス「オミクロン型」の猛威なども理由に挙げられたが、ならばオンラインという手もあったはずだ。延期の主因はミ カンボジア和平30年、独裁首相がミャンマーに重ねる幻影
タイに延びない中国「一帯一路」鉄道 すれ違う思惑 中国・台湾 東南アジア 1月11日 中国雲南省から南下し、ラオスを縦断する長距離鉄道が開業して1カ月余りが過ぎた。隣国タイに住む筆者は乗車してみたくてうずうずしているが、新型コロナウイルスによる出入国の制限下では思うに任せない。 中国の環球時報によれば、最初の1カ月間に旅客67万人、肥料や野菜などの貨物17万トンを輸送し、中国国家鉄路集団は「東南アジア諸国連合(ASEAN)との新たな物流ルートの形成を加速した」と自賛しているという タイに延びない中国「一帯一路」鉄道 すれ違う思惑
米国主導の民主主義サミット、「違和感」の正体 米中衝突 コラム 東南アジア 南西ア・オセアニア 12月21日 世界が新型コロナウイルスとの闘いに明け暮れた2021年は、同時に「民主主義」の価値観を巡る闘いが激しさを増した1年だった。 対立軸に持ち込んだのは米国だ。1月に就任したバイデン大統領は、米中対立を「民主主義と専制主義の闘い」と表現し、トランプ前政権の強硬姿勢を承継した。年の瀬の12月9~10日には、約110の国・地域を招いて「民主主義サミット」を主催した。 世界の分断をあおるやり方を疑問視する声 米国主導の民主主義サミット、「違和感」の正体
フィリピン「国民の拳」は大統領になれるか コラム 東南アジア 11月30日 注目された「ドゥテルテ劇場」は半ば肩透かしに終わった。 2022年5月に6年ぶりの大統領選挙が迫るフィリピン。10月上旬にいったん締め切った正副大統領への立候補者は、11月15日まで変更が可能だった。大統領は憲法で再選が禁じられ、現職のロドリゴ・ドゥテルテ氏は出馬できない。10月時点で南部のダバオ市長の再選を目指すとしていた長女サラ氏が大統領選に、同じく政界引退を表明したロドリゴ氏が副大統領選へ フィリピン「国民の拳」は大統領になれるか
AUKUSが問う「豪州はアジアの一員か」 米中衝突 東南アジア 南西ア・オセアニア 11月16日 先週の前半、駆け足で4カ国をまわったオーストラリアのペイン外相の東南アジア行脚は、時期も訪問先もいささか奇異に映った。 先週後半のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の直前の慌ただしい時期に、10月末の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連のオンライン首脳会議で顔を合わせたばかりのマレーシア、カンボジア、ベトナム、インドネシアへわざわざ足を運んだからだ。 豪外務省は「新型コロナウイルス禍からの経済 AUKUSが問う「豪州はアジアの一員か」