支持基盤が溶けている 選挙戦術だけで野党は勝てない 坂本 英二 Think! 編集委員 コラム 5月27日 本格的な登山の経験はないが、関連のドキュメンタリーをよく見る。田中陽希さんの日本百名山の踏破に密着したNHKの「グレートトラバース」はシリーズ化され、各地でファンがまち受ける人気だった。 ふもとから一気に駆け上がる驚異の体力と、山頂からの絶景はもちろん素晴らしい。しかし示唆に富むのは「失敗」の方だ。 第1シリーズの最後は北海道の利尻岳。8合目あたりまで来た田中さんは、天候悪化を感じ取り下山を即決 支持基盤が溶けている 選挙戦術だけで野党は勝てない
自民党の「勝利の方程式」 反映されぬ無党派層の民意 岸田政権 大石 格 Think! 編集委員 コラム 政治 5月20日 日本で選挙があると、翌朝の新聞にこんな分析がよく載る。自民党が勝利すると「保守地盤を手堅くまとめ……」、負けると「固めきれず……」。こんな通り一遍の記事を読んでも、何が勝敗を分けたのか、さっぱりわからない。 世論調査の政党別支持率で、ほとんどの地域は自民党が1位だ。その意味で若干の濃淡はあれ、全国どこもが保守地盤である。 では、なぜ自民党が負けることがあるのか。ご存じの通り、自民党支持層と同じく 自民党の「勝利の方程式」 反映されぬ無党派層の民意
習近平氏と徳川家康の分かれ道 力に頼る政治の限界 高橋 哲史 政治 外交・安全保障 5月13日 4月末に訪れた静岡県の浜松市は、大勢の観光客でにぎわっていた。お目当てはもちろん、大河ドラマで脚光を浴びる徳川家康が築いた浜松城である。 家康は29歳からの17年間をここですごし、天下人への足がかりをつかんだ。浜松城は江戸時代になってからも歴代の城主が相次いで幕府の要職に就き、いつしか「出世城」の異名を持つようになったという。 城内のあちこちで外国人の姿を見かけた。「入場券はどこで買えますか?」 習近平氏と徳川家康の分かれ道 力に頼る政治の限界
「厄介な国」と米大統領候補 消えぬ「トランプ」の残像 永沢 毅 ドナルド・トランプ 米大統領選 北米 政治 5月6日 岸田文雄首相は4月下旬、来日した米南部フロリダ州のロン・デサンティス知事と面会した。「近隣には厄介な国が多いと聞いています」。デサンティス氏はこう語りかけた。 政府高官によると、同氏は首相をはじめ林芳正外相や自民党の茂木敏充幹事長との会談でいずれも相手方を質問攻めにした。中心となったのは中国や北朝鮮、ロシアといった日本が直面する安全保障上の課題だ。 ウクライナ戦争で揺らぐ国際秩序を維持するため米 「厄介な国」と米大統領候補 消えぬ「トランプ」の残像
「新ココム規制」の足音 デカップリング懐疑論の危うさ 赤川 省吾 ヨーロッパ 編集委員 政治 4月29日 フランスのマクロン大統領は4月上旬の訪中時、台湾情勢を巡り「対米追従せず」とのメッセージを発して批判を浴びた。実はドイツにも対中融和と受け止められかねない動きがある。 独中が近く「政府間協議」を開催する――。そんな情報がある。両国の首脳・重要閣僚が一堂に会する合同閣議のような枠組みだ。大がかりな外交舞台を再起動する準備がひそかに進む。 前回の政府間協議はメルケル前政権時代の2021年。その後、ロ 「新ココム規制」の足音 デカップリング懐疑論の危うさ
半導体覇権、習氏が狙う大逆転 ポストムーアへの賭け 政治 中国・台湾 北米 コラム 外交・安全保障 4月22日 中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が3度も視察に訪れた場所がある。湖北省武漢市にある「光バレー(中国光谷)」だ。 光ファイバーや光電子など光技術の国・省級研究機関や大学、実験室が100以上集まり、約30万の技術者が働く。習氏は昨年6月、同地で「科学技術の生命線をしっかりと掌握しなければならない。それが国家安全の要だ」と演説した。 なかでも近年、中国が国家的命運をかける技術として浮上したのが、 半導体覇権、習氏が狙う大逆転 ポストムーアへの賭け
「サル発言」で考える野党の姿 政治 4月15日 立憲民主党は11日、一人の政治家への処分と称賛が並ぶ異例のペーパーを公表した。衆院憲法審査会の毎週開催を「サルがやること」と発言した小西洋之氏への対応を記した文書だ。 内容はこうである。まず小西氏の発言や関連するツイッターの投稿を「問題がある」と断じた。「党の名誉及び信頼を傷つける行為に該当する」と認定し、岡田克也幹事長による注意処分をすると明らかにした。 その後に続く。「放送法の解釈変更を巡る 「サル発言」で考える野党の姿
尹錫悦氏が壊す韓国、「縮む日本」が目指すべき外交は 日韓対立 峯岸 博 編集委員 コラム 政治 外交・安全保障 4月8日 都内にある駐日韓国文化院で開催中の李御寧(イ・オリョン)元韓国文化相とその著書「『縮み』志向の日本人」に関する展示会に足を運んだ。 小さなものに美を認めてあらゆるものを「縮める」ところに日本文化の特質を見いだした同書は外国人による日本論として名高い。 折り畳む扇子型、狭い空間にコンパクトに詰める折り詰め弁当型など6つの型に分類し、日本の「縮み」志向がトランジスタや携帯オーディオプレーヤーといった 尹錫悦氏が壊す韓国、「縮む日本」が目指すべき外交は
民主主義に忍び入る脅威 中朝「工作疑惑」に揺れる韓国 北朝鮮 政治 中国・台湾 朝鮮半島 コラム 外交・安全保障 4月1日 ソウルを横断する漢江に浮かぶ水上レストランに2022年末、報道陣が集まった。記者団を呼んだのはこの中華料理店の代表だ。中国が海外に置いた「秘密警察」――。こう韓国メディアに名指しされた店が開いた反論の記者会見だった。 「秘密警察」は中国の警察当局が海外に住む反体制派中国人の監視や強制送還をするための出先機関とされる。韓国聯合ニュースによると店の代表は3時間半にわたり「我々は中国人の帰国を支援する 民主主義に忍び入る脅威 中朝「工作疑惑」に揺れる韓国
金で読み解く世界秩序 中国・ロシアの隠された狙い Think! 経済 政治 3月25日 突然のようにみえる危機にも予兆はある。問題はその予兆になかなか気づけないことだ。仮に気づけたとしても、そこに隠された意図を読み解くのは難しい。 ロシアがウクライナに侵攻して1年が過ぎた。いまになって振り返ると、2014年のクリミア危機以降、ロシアの様々な経済指標が来たる衝突に備える国家の意思を示していた。 たとえば政府債務残高の対国内総生産(GDP)比。15年に15.3%ほどだったものを19年ま 金で読み解く世界秩序 中国・ロシアの隠された狙い