名手はうまくみえない(山下大輔) プロ野球 コラム 6月1日 ロッテ・佐々木朗希の完全試合や、中日・大野雄大の快投、ソフトバンク・東浜巨の無安打無得点ではバックの内野手も成長したはずだ。何しろ、打球を待つ緊張感が違う。100球なら100球、神経を研ぎ澄ませ続けたら、どんな練習より身になる。 これをヒントに「もし、練習のノックの一球一球を完全試合のつもりで受けたら……」と多くの選手に気付いてほしい。プロ野球の守備のレベルは格段にあがるだろう。 練習の1球から 名手はうまくみえない(山下大輔)
名遊撃手なしに優勝なし(山下大輔) プロ野球 コラム 4月27日 遊撃というポジションは自分の陣地=ベースを持たない、という点で、ほかの野手と違う。一塁、二塁、三塁、それぞれ自分の「住所」があるのに、遊撃には地名地番がない。 新聞社の社会部などには特定の担当を持たない「遊軍」があり、事が起こればどこでも駆けつけるのだとか。何でも屋、というと軽くなるが、気の利いた便利屋がいる組織は強い。遊撃手もそれに似たところがある。 現代を代表する遊撃手の一人が、巨人の坂本勇 名遊撃手なしに優勝なし(山下大輔)
AIは野球を楽しくするか(山下大輔) プロ野球 コラム 3月23日 判定を不服とする監督が、審判につかみかかりたいのを我慢して、手を後ろに組み、つばを飛ばして抗議をするのも、メジャーの名物だった。そんなシーンが減ったのはチャレンジというビデオ判定の制度が導入されたからだろう。 きわどい判定でも、チャレンジを告げたあとは、機械の〝裁定〟を待つだけだから、議論の余地がない。 オリオールズを率いて、通算97回の退場歴を誇るアール・ウィーバー監督は試合前にベンチを去った AIは野球を楽しくするか(山下大輔)
言葉が要らないスポーツの格好良さ(山下大輔) プロ野球 コラム 2月16日 リップサービスも仕事のうち、とされるプロスポーツ業界にも変わり者がいて、メジャーの300勝投手、スティーブ・カールトン(カージナルスなど)がその一人だった。あるときを境に、マスコミの取材に一切応じなくなった。ペンの矛先が家族に及んだことが発端だったとか。 しかし、コメントがなくても記者は彼の記事を書き続けねばならなかった。何しろ、成績が圧倒的だったから。ファンにしてみれば、ひいきのチームを勝たせ 言葉が要らないスポーツの格好良さ(山下大輔)
プロ野球新人選手、我が道を行け(山下大輔) プロ野球 コラム 1月12日 私が慶大から大洋(現DeNA)入りしたころは東京六大学野球も華やかで、各校の主力は全国に知られていた。球団は入団を喜び、ユニホームの色を私の出身地、静岡名産のみかんのオレンジとお茶の緑に変えたほどだった。 それはいいのだが、まだ1安打も放っていない新人へのちやほやぶりは、プロで何年もメシを食ってきた先輩に面白いわけがない。オープン戦で南海(現ソフトバンク)と対戦すると、ノムさん(野村克也捕手)に プロ野球新人選手、我が道を行け(山下大輔)
名球会のメンタリティー 向上心旺盛、他人の言葉聞かず プロ野球 コラム 12月22日 秋からシーズンオフにかけてプロ野球選手の引退が連日報じられる。私の印象だと、8割の選手は主体的に引退を決めるのではない。所属する球団に解雇され、ほかに契約してくれるチームもみつからず、結果的に引退を迫られる。 私は巨人からDeNAに移籍した2012年、打率3割、19本塁打、76打点とそれなりの数字を残した。しかし翌年、若手への切り替えを図っていた球団はスロースターターの私を待ってくれなかった。 名球会のメンタリティー 向上心旺盛、他人の言葉聞かず
短期決戦に必要なもの 不可欠な根拠と強い意志 プロ野球 コラム 11月17日 間もなく日本シリーズが始まる。私は現役時代にヤクルトで1回、巨人で2回出場し、2017年にはDeNAの監督として指揮を執った。日本一になれたのは2回。やり慣れない強敵との短期決戦では経験値や入念な準備、強い意志がいつも以上にものをいう。 大舞台で経験が重視されるのには訳がある。日本シリーズ初出場の若手にありがちなのは、張り切って入れ込みすぎてしまうことだ。やたらと早く球場入りし、全体練習の前にた 短期決戦に必要なもの 不可欠な根拠と強い意志
MVP、優勝にこだわらず「最高の選手」選出を プロ野球 コラム 10月13日 日本より一足先に米大リーグのレギュラーシーズンが幕を閉じた。大谷翔平(エンゼルス)の活躍はめざましかった。本塁打王こそ逃したがア・リーグ3位の46本塁打に100打点、26盗塁。投手としても9勝2敗、防御率3.18でMVPの有力候補になっている。 私も巨人時代の2008、09年とMVPに選ばれた。MVPは野球選手にとって最高の栄誉だ。数字を残せば獲得できる打撃タイトルと違い、MVPは記者投票で決ま MVP、優勝にこだわらず「最高の選手」選出を
高いレベルや理想より、「輝ける場所」求める選択も プロ野球 コラム 9月8日 新型コロナウイルスの影響でプロ野球を去る外国人が相次いでいる。主軸を打っていた巨人のジャスティン・スモーク、先発の一角を担ったソフトバンクのコリン・レイら、戦力面への影響も大きい。 彼らは家族が来日できないことを理由に帰国を決める。野球選手を含め、単身赴任が珍しくない日本人からすると、家族のありようや優先順位が違うと感じるかもしれない。けれどもこの現象は、家族観の違いだけが理由ではない。 トレー 高いレベルや理想より、「輝ける場所」求める選択も
今季最大のサプライズ オリックスのうれしい誤算 プロ野球 コラム 7月21日 自分の見当違いを認めるほかない。開幕前、昨季に続いて最下位と予想したオリックスが折り返し地点を過ぎたペナントレースで首位を走っている。今季最大のサプライズである。 打の吉田正尚、投の山本由伸と球界を代表する選手がいるが、Aクラスを争うには経験が足りず、外国人も物足りないとみていた。ところが蓋を開けると、想定外の戦力が現れた。 投手では2年目の宮城大弥だ。5月、横浜スタジアムの交流戦で初めて見て、 今季最大のサプライズ オリックスのうれしい誤算