日本経済新聞
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お茶の水女子大学 理事・副学長
女性トイレの行列の主な理由は全て個室なので設置数が少ないこと、女性は用を足す際の工程が多いので時間がかかることだ。高速道路トイレ調査では、男性の小便器利用時間は平均38秒程度だが、女性は平均約93秒。この性差を理解した上で男女不平等を解消するには単純に女性トイレを増やすことだ。 しかしトイレ関連で迷惑を被っているのは女性だけではない。女性トイレにある「音姫」は不快音を消すが、男性トイレにはあまりない。某企業が男性トイレに「音将軍」を設置したところ使用者の多くが歓喜したという。男性だから不快音には何も感じないというのはジェンダーバイアスでありトイレ空間の改善は女性だけでなく男性も期待している。
首相続投の理由として今、最も重要なのは「国政に停滞を招かないことだ」というが、本当に首相の続投により政治の停滞を回避できるのだろうか。与野党の連立拡大の可能性がないとすれば、政治を動かすことは難しい。反対に首相が辞任し、スムーズなトランジションを前提として新しいトップのもとで政治を動かしていくことで国政の停滞を回避できるのかもしれない。考え方次第とはいえ、政権交代も十分視野に入れた上で今後の政府の姿勢を示すべきではないのか。ちなみに、これまでのアメリカとの関税交渉の努力には注目しているが、トランプの強行姿勢を見る限り、日米交渉は誰がやっても100%日本に有利なアウトカムはないだろう。
今回の参院選について2点だけ。 ①自国民の生活を守るのは当たり前の話だが「日本人ファースト」の「日本人」とは誰なのか。米国で日本国籍の親から生まれて日米の二重国籍を有している人はどうなのか。日本で外国籍の親から生まれ、永住権を取得し日本社会に多大な貢献をしている人はどうなのか。「日本人ファースト」は単純に達成できないのでは。 ②今回立候補した女性は2022年の181人に次ぐ152人で候補者全体に占める割合は政府が第5次男女共同参画基本計画で掲げた目標の35%に届かず29.1%。しかし、女性当選者は前回の35人を上回る37人で過去最多。続投を表明した首相だが、そろそろ女性トップ誕生を期待したい。
これまで大学教員を含む裁量労働制で働く男性や育休取得のモデルケースとなることが期待されている官僚の男性は、企業勤務の男性と比較すると育休が取りやすい環境にいると言われてきた。その期待通りに、政府や自治体の男性の育休取得率がアップしてきている。ただし、取得期間を見ると女性の場合は10〜12ヶ月が多いが、男性は数週間から1ヶ月という、いわゆる「なんちゃって育休」が多いというジェンダー格差がまだ存在することにも注目するべきだ。 ちなみに、男性の育休取得がニュースになることや、「育メン」と呼ばれたりすること自体が、日本の子育ての男女格差を如実に表しているだろう。「育ウーマン」とは呼ばないわけだから。
本記事の親泊昌代さんもそうだが、2024年にJAL初の女性社長として就任された鳥取三津子さんもCA出身であり、歴代の社長とは異なった経験をされてきた方だ。 日本の多くの企業では、役職に就いている女性が少ないために、将来的に役職に就きたい女性たちにとってのメンターが不足している。産業界トップが集まる講演会等の参加者はほとんど男性で女性はほんの一握り。女性のトップとしての活躍を推進したいのであれば、ロールモデルになりうる女性たちの存在は非常に大きい。ただ、女性の能力にかかわらず、単純に女性のトップを数名増やしたいといういわゆる「体裁主義」で表面的な男女平等を装う「トークニズム」は避けてほしい。
ジェンダー・ギャップ指数(GGI)で毎年トップ5位内に入るノルウェーの研究者と調査を行った。最初はGGIでふるわない日本とトップランクのノルウェー社会を比較する意味があるのかと疑っていた。しかし、ノルウェーの研究者によれば、ノルウェーの男女平等は社会不平等の上に成り立っているという。例えば、女性の社会的活躍が当たり前になってはいても、働く親の子どもの面倒を見るのは移民や貧困層の女性たちだ。ノルウェーにもまだ社会的な格差があるということだ。 ちなみにジェンダー・ギャップの世界的な指標はGGIの他にも、ジェンダー開発指数やジェンダー不平等指数もあるので、様々なデータを参考にしていただきたい。
2024年度に生まれた子ども数が初めて70万人を割った。その要因として経済的な不安で結婚を諦める若年層の増加が指摘されているが、出産に結婚は必要なのか。 日本では妊娠したから責任をとる=結婚という授かり婚が多いがアメリカでは必ずしもそうではない。授かり婚の英訳はショットガン婚だが、ある父親が娘を妊娠させた男性に散弾銃を突きつけて結婚を迫ったことに由来する。しかしそれは昔話で今のアメリカ人だと妊娠=結婚よりも、経済的な支援や父親の育児参加の方が大事という価値観が共有されている。日本でも妊娠=結婚という圧力方程式にあまりとらわれず、もっと自由な関係性を享受する方が出生率アップにつながるのでは。
若者の未婚化の原因は親と教育にもあるのでは。エレベーター内で幼児へ微笑みかけるのだが、それに気がつくとそっぽを向かれてしまう。世界的にみても日本ではシャイな子どもが多いが、人見知りが激しい子は親から愛されているという実感不足との指摘もある。反対に親が見守っているから大丈夫と思う子どもは自信があるので怖がらず行動できる。 大人もシャイな人たちが多く、パーティなどで会話が弾まないと良い相手に出会う確率が低い。米国では中学から学校主催のパーティがあり同伴する友人を探す。つまり若い時から良いパートナー探しをする機会がある。日本でも同様な機会があり対人関係力がアップすれば結婚相手探しも容易になるのでは。
業種や企業規模などの違いがあり、出社回帰は正解かに対する良い回答はない。出社によるコミュニケーションの活性化や職場の一体感を促すなどのメリットはあるかもしれないが、働き方の柔軟性の低下や通勤の負担などのデメリットもある。確かに出社してもサボる人がいたり、テレワークの方が効率が良い人がいたりと社員の生産性はあまり関係ない。 結局は働き方の選択肢があることが重要であり労働者のウェルビーイングを高めている。先行研究で、母親が自分の仕事に満足しているほど子どもへの養育態度がポジティブになることがわかっている。母親も父親も自分の働き方に選択肢があることで仕事満足感が高くなり家庭にもプラスの影響がある。
久しぶりにたくさんの元気をもらったお話です。ご苦労もあったとは思いますが、何歳になってもやる気と周囲の理解やサポートがあればできるのですね。学部だけではなく、大学院へ進学して博士号も取得されたとのこと、本当に素晴らしいです。 アメリカでは大学における多様性という船が沈没しそうになっていますが、定年退職制度がないために、大学教員は元気なうちは仕事を続ける人たちが多いので、年齢の多様性は今のところ担保されています。日本の大学でも定年退職制度がなければ、年齢に関係なく、教員や研究者として活躍できる方々が増えると思います。
女性のキャリア官僚合格者割合が全体の35.1%と過去最高を更新。女性人材確保のための、女性活躍政策の推進、育休制度の充実や男性も育休を取りやすい環境作り、積極的な幹部への女性登用などが功を奏したか。 とは言え、男女共にキャリア官僚の給与は依然として民間企業より低い水準にある。また、女性官僚の採用が増えてきている府省は多いが、令和6年公表のデータによれば、内閣府、法務省、厚労省では男女比率は五分五分に近いが、国交相、防衛省、経産省の女性割合は約21%〜28%であり、政府目標の35%の女性採用割合に届いていない。労働環境整備や待遇改善も重要だが、同時に採用における男女格差の解消も必須である。
素晴らしい! スター選手が産休を取ることで、父親の産休、育児・子育て参加の重要性がアピールでき、他の父親への波及効果が大であること。国レベルの育休制度が存在しない米国では民間制度を使いようやく父親が出産に関わることができるのだから、日本のように育児・介護休業法が整備され「父親の産休」制度もある国で特に父親の育休取得率が未だ低いということは、実にもったいない話だとわかること。そして、父親の産休制度があることで、立会い出産も可能になり、その経験がその後の育児や子育て参加を促すきっかけとなる。大谷選手には野球選手としての更なる活躍を期待するが、野球人生よりも長い子育てにも誇りを持って臨んでほしい。
米研究者の国外移動の加速が懸念されている。リベラルな考えを持ち、自身の研究への締め付けを嫌う多くの研究者にとっては国外移動を検討するのは当たり前だと思う。しかし、この頭脳流出問題は保守化が急速に進む米国だけの問題ではない。 日本の大卒者が海外移住を希望する割合は23%程度であり、その多くが海外に定住したい。また、日本の頭脳流出の特色は女性が多いことである。海外で活躍している日本女性に帰国しない理由を聞くと、多くが日本では「活躍できる職場が少ない」「家庭と仕事の両立が困難」「低賃金」などをあげる。日本女性の頭脳流出を防ぐには性別役割分業観と職場環境の改善を目指す個人と企業の意識変革が必要だ。
インバウンドの外国人が増えて東京都内のホテルが予約できない。ホテルの価格がアップして、会社から支給される宿泊費では足りない。その結果、国内の会社員が「出張難民」になっているという。 しかし、出張に関するトラブルは日本だけではない。例えばアメリカの国内出張は長時間の飛行機移動を伴うし、東・西海岸では3時間の時差があるなど、日帰り出張は不可能だし、一泊したとしても、かなり疲労困憊する。 テレワーカーはコロナ禍に増えたが、首都圏では令和3年度をピークに減少傾向にある。しかし「出張難民」を減らし、出張に伴う身体へのダメージをなくするには、対面の出張はやめてリモートワークを復活させるしかないのでは。
東京へ流入する女性が多いという傾向は10年以上前から始まったことであり、特に20〜24歳の若年層で顕著だ。大都市圏に女性が望む仕事があり、職種が豊富なことだけではなく、賃金等の待遇の良い仕事が多いことも理由の一つである。 同じような現象が起きているのは海外永住者にキャリアアップを目指す女性が多いことだ。これらの傾向から見えてくるのは、女性の社会的活躍を推進しているように見えても、まだ賃金格差を含む男女不平等が存在する日本の姿だ。 とは言え、DEIが軽視されつつあるアメリカへ移住しても、女性がキャリア上で自身の夢を実現することが難しくなってくるかもしれないことは危惧する必要があるだろう。
「砂の器」はリアルタイムで見た世代であり、実は最後の演奏会シーンではエキストラとして参加した映画でもある。更に偏見や思い込みがもたらす差別の恐ろしさについて学んだ感動的なストーリーでもあったことを思い出している。 ただ残念なのは、今日の日本社会でも、様々な偏見から差別が生じていることだ。身近では、例えば「男は仕事、女は家庭」という根拠のない伝統的な考え方が存在しており、「年収の壁」を含む女性の経済的活躍を阻止するような制度があること。また、未だ存在する男女の賃金格差などもあげられる。 2025年はよりお互いの多様性を尊重し、固定観念や世間体にあまり縛られない社会になることを祈念している。
カーター元大統領は77年から81年の在任中に「人権外交」に力を注ぎ、ソ連との緊張緩和に努め、エジプトとイスラエルの和平協定を仲介し、中国と米国の国交正常化も実現させた。退任後も世界各地で紛争調停に取組み、2002年にはノーベル平和賞を受賞した。 カーター氏の人権に対する強い思いが発揮されたのは、紛争調停ばかりではない。84年からカーター氏がパートナーとして参加してきたハビタット・フォー・ヒューマニティという住居建築支援団体は「カーター・ワーク・プロジェクト」を各国で開催して世界レベルの支援活動になった。元大統領自ら建築現場に足を運びボランティア活動をする光景に感動したのを今でも覚えている。
これらの訴えが事実ではない可能性は限りなく低いが、被害の内容があまりにも酷くて言葉を失った。セクシャル・ハラスメント(性的嫌がらせ)を超えて、人間の尊厳を冒涜した犯罪行為である。しかもこのような被害者が一人であっても許せない行為だが、多数が訴訟に参加するとみられているという。セクハラは相談すること自体、勇気がいることであり、告発した被害者への嫌がらせなどの2次被害につながることもある。男社会の風土が残る現場というのは、問題解決につながらない単なる言い訳である。今後、詳細が明らかになるというが、大きな改善や改革に向かうことを祈るばかりだ。
ハンドバッグを持ち歩く女性が多いのは、本記事で指摘されたように、女性の服にはポケットが少なく、あっても小さめで、物の持ち歩きが難しいことがあげられる。他にも女性ファッションには「女らしさ」というバイアスがついて回るので、ポケットが多い洋服は女らしくないと思われているのかも。 最近は農業女子が増えていて、女性にとって機能的な作業服が開発されている。ただこれらの広告を見ると「オシャレで可愛いウェア」として紹介されていることが多い。農業女子たちが作業服にどの程度の「女らしさ」を求めているかはわからないが、これらの広告が「女性は女らしさにこだわる」というバイアスを助長しているのかもしれない。
父親の「産後うつ」発症にはその前段階で経験する育児ストレスも関係している。育児ストレスの研究は母親データを分析したものが多く、父親についてはそもそも育児時間が短いので育児ストレスを感じることはないだろうという前提があった。しかし、父親育児の場合、仕事面のストレスに加えて、自分が精いっぱい育児をしているつもりが妻や周りの人たちに理解されず、その結果、不満をため込み育児ストレスに陥る父親が多い。 他の過去の父親研究からわかっているのは、父親の育児ストレスは、仕事と育児のバランスができていない葛藤状況の中で起きる場合が多いこと、ストレスは父親の子どもの養育行動に負の影響を与えていることなどだ。
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石井クンツ昌子
お茶の水女子大学 理事・副学長
お茶の水女子大学 理事・副学長
【注目するニュース分野】男女共同参画、ジェンダー、LGBTQ+
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