世界と戦えることを示すために サッカー日本代表26人

参加するためにワールドカップ(W杯)のピッチに立つんじゃない。堂々と世界と渡り合い、勝つために、この26人は選ばれた。

日本代表の大半が海外でプレーする時代になった。世界の最高峰で挑戦することを日常とし、第一線で認められる人材も今までになく増えた。世界を驚かせるための機は熟している。まだ見ぬW杯ベスト8から先の光景は、この26人に託されている。



森保ジャパンのサムライたち




GK

川島永嗣
「代表の鏡」は声で統率する

地味な練習にも、一本のセービングやステップ一つにも、真摯に全力で向き合う。スタッフや選手が「永嗣さんはお手本」と口をそろえる、日本代表の鏡。全軍を動かすコーチング、GKの基本技術は今もさびついていない。39歳、4度目のW杯。スーパーセーブで若々しい「どや顔」をみせたい。

権田修一
大事を託されてきた守護神

W杯アジア最終予選の10試合のうち9試合でゴールマウスを託された。GKとしての細部一つ一つに一家言を持つ理論派は、安定感がありそつがない。20歳でフル代表デビューしている古株でもあり、オーストリアやポルトガルで早くからプレーしてきた国際派の顔も併せ持つ。

シュミット・ダニエル
GKの大器はデカいだけじゃない

ひときわそびえる身長197センチの巨体をみれば「彼だから止められるシュートがある」という森保一監督の言葉も納得がいく。それだけのサイズでもしっかり動け、フィールドプレーヤー並みにキックとパスができる。ミスや苦境もはね返すずぶとさ、どっしり感が加われば、代表GKとして言うことなし。



DF

共同

長友佑都
まだまだ走れる「おっさん」の星

練習では常に先頭を走る。36歳を迎えてもなお代表の「顔」。言動でチームを鼓舞し、弁舌滑らかにスポークスマンも引き受けながら、ひとたびエンジンがかかれば若々しくピッチをアップダウンしてみせる。相手が強くなるほど燃えて真価を発揮するあたり、W杯に長友ありというべきか。

吉田麻也
森保ジャパンの不動のキャプテン

イングランドでの豊富なプレー経験を言葉に織り交ぜ、重責と向き合いながら、苦境時にもチームを引っ張ってきた。主将として余人を持って代えがたい。2014年、18年のW杯で全試合フル出場、五輪も3大会出場という実績は比類がない。最後方から後輩たちの良さを引き出し、集大成の舞台を飾る。

酒井宏樹
国内組になってもワールドクラス

フランス代表にもなれるのでは、というほどに万全な状態の酒井は日本人離れしたプレーを披露する。右サイドで相手を食い止める守備力、突進での馬力ともに世界水準。海外クラブや歴代監督がめでるのももっともなことで、W杯は3度目、五輪にも2度出場。この1年はケガがちなことだけが気がかり。

谷口彰悟
頭も駆使してJリーグ勢の力をみせる

爽やかな風貌そのままに、ピッチでも知的に守る。難敵のFWを駆け引きで抑え、DF陣を声で動かし、攻撃にスイッチを入れる縦パスを最後方から放つ。Jリーグ王者・川崎の守りの要として蓄えた実力を、世界の舞台でも発揮したい。

山根視来
神出鬼没、さながら「DFW」

そこになぜ、山根が――。サイドバックらしからぬポジショニングでゴール前へ躍り出て、代表デビュー戦でゴール、W杯最終予選のヤマ場でも決勝点に絡んだ。空いたスペース、相手の急所を嗅ぎ分ける勘がいい。神出鬼没のインナーラップは相手ブロックをこじ開ける妙手となるかも。

板倉滉
大けがも乗り越え輝いてみせる

左膝靱帯の部分断裂という大ケガから懸命のリハビリが続く。ドイツ1部ボルシアMGで主力を務めるほどになり、代表の最終ラインも安心して任せられ、パス出しも巧みでボランチも苦にしない。総力戦となる強豪との連戦を鑑みれば、日本の躍進には板倉の復帰が欠かせない。

冨安健洋
世界最高峰でプレーする守りの要

イングランドの強豪アーセナルで堂々と主力でプレーする。負傷によるブランクも克服し、W杯では問題なさそう。中央、左、右、どこで守らせても俊敏な身のこなしと的確な判断で安定感をもたらす。日ごろから世界最高峰で戦う冨安にとっては、強豪のFWを封じるのは日常の延長のようなものだろう。

伊藤洋輝
遅れてやってきた大型DFの逸材

Jリーグ磐田の育成年代のころから将来を嘱望され、2021年にドイツへ渡ると資質が開花。翌22年6月に代表デビュー、カタール行き26人に滑り込んだ。大柄かつスピードもあり、左足でのフィードは矢のように鋭い。ドイツ1部の戦いの強度にも慣れており、連戦での最終ラインを大いに助けてくれそう。




MF

柴崎岳
クールにクレバーにタクトを振るう

初出場のW杯ロシア大会で柴崎が放った輝きは、多くの関係者の記憶に刻まれている。その後、欧州の2部リーグで不遇をかこった感もあるが、攻撃で変化を加えられるその長所は変わらない。相手にリードされ、日本が打開を迫られたとき、このMFのクレバーな戦術眼と攻撃センスがチームを助けてくれる。

遠藤航
ドイツ仕込みのボール奪取の達人

その守備は攻撃を遅らせるという生易しいものでなく、ガッと詰め寄り奪いきる。ドイツ1部で2年連続、ボール奪取回数トップに輝いたボールハンター。オーバーエージで出場した東京五輪は全6試合に出場、周りがひるむPKも進んで引き受けるなど肝も太い。こだわりのマウスピースも装着して迫力満点。

伊東純也
加速度的に成長する快足ドリブラー

快足を生かしたドリブル突破とクロス、強烈なミドルシュートでW杯最終予選で4戦連続ゴール、本大会進出の立役者となった。大学までほぼ「無印」の存在から日本の武器にまで駆け上がった、この4年間の出世頭。このドリブラーが肩をいからせて右サイドを破る回数に比例して、日本の勝機も増えていく。

南野拓実
献身と決定力の「エース」

森保ジャパンの発足以来、エース格として攻撃を引っ張ってきた。守備の隙間でパスを受け、狭いエリアでボールを操り、シュートを打ち込む。そのセンスと献身性はリバプール(イングランド)の名将・クロップのお気に入りでもあった。今夏からの新天地での不振を振り払い、本来の切れ味を取り戻したい。

守田英正
守れてパスも出せる中盤の要人

周りのレベルが上がるほど、つられてうまくなっていく。守田はその1人だ。日本を離れてポルトガルに身を置き、要求されるプレー強度を自覚し、自分を変えていった。今では守田がいるのといないのでは中盤のパフォーマンスが変わってくる。球際の強さ、落ち着きに加え、ワンタッチの縦パスも見もの。

鎌田大地
ドイツをもうならせるファンタジスタ

昨季はアイントラハト・フランクフルトの欧州リーグ優勝に貢献。今季もゴールを連発、目の肥えたファンを狂喜乱舞させている。自陣深くで組み立てに関わり、ドリブルで運び、フィニッシュにまで絡む。「僕は自分を持っているタイプ」。並大抵のことには動じず、日本の攻撃に命を吹き込む。

三笘薫
ジャパンの切り札は左サイドの破壊者

J1川崎からサンジロワーズ(ベルギー)、英プレミアリーグのブライトンとチームを変えても、武器の突破力は上昇曲線を描き続ける。緩急自在のドリブルは初見のDFではまず止められない。左サイドの破壊者として切り札になれるか。初出場となるW杯は世界が「ミトマ」を知る舞台となる。

相馬勇紀
チームのために戦える左の頑張り屋

分厚い海外組の壁を破り、攻撃的ポジションでJリーグから唯一の選出。今夏のE-1選手権での得点王・MVPというアピールが効いた。東京五輪でも全6試合に出場し、1トップ候補の前田や上田の特徴も把握済み。左サイドから縦へ中へと仕掛けるドリブルとクロスは一見の価値ありだ。

堂安律
野心ギラつく左足の威力

ゴールに絡む場面でひときわ存在感を発揮する異能の持ち主だ。身長172センチと上背はないが、当たり負けしない腰の強さと、ワンステップで放つ左足の強烈なシュート、肝の太さも折り紙つき。成り上がろうという前向きな野心を隠さない強固なメンタルは、W杯という大舞台でこそ生きる。

田中碧
次代を担うパスの配達人

序盤でつまずいたアジア最終予選で盛り返し、6連勝で突破できたのはボランチ3人衆の一角として田中が機能したから。ボールをピッチの適切なところへ届ける技術と視野の広さ、サッカーセンスはJ1川崎で名手・中村憲剛氏の薫陶を受けて育まれた。運動量も自慢の東京五輪世代のマエストロだ。

久保建英
神童から神ってる存在に

ようやく自身の適性とフィットするスタイルの働き場を得た今季、FWとして得点とアシストを重ねている。10歳でバルセロナの育成組織の入団テストに合格、18歳でレアル・マドリードに加入した華麗な球歴の持ち主。持ち前の繊細なボールタッチに、当たり負けしない強さを加えた「神童」がW杯に挑む。




FW

浅野拓磨
勝負どころで決めるスピードスター

四日市中央工卒の浅野がJリーグ広島で一人前のFWになる道筋をつけたのが森保一監督であり、2人は師弟関係。21歳でアーセナル(イングランド)に引き抜かれたスピードスターは、前回大会のW杯予選で天王山の一戦でゴールするなど、大一番での勝負強さが頼もしい。

前田大然
猛烈ダッシュで相手を脅かす秘密兵器

50メートル5秒8の俊足と驚異的なスタミナを備えたアスリート。猛烈なダッシュを繰り返して圧力をかける迫力は相手DFにとって脅威そのもので、W杯でぶつかる強国に対する日本の貴重な武器だ。一瞬でマークを外してパスに合わせるシュートのすごみも増しており、大舞台での飛躍の予感も漂う。

上田綺世
振り向きざまの弾丸ショットを世界でも

182センチの身長はストライカーとして決して大柄ではないが、海外勢にも当たり負けしない空中戦の強さを誇る。さらに相手DFの隙を突いてラストパスを引き出す動きと、シャープに振り抜くシュートの威力は日本の最高峰。今季、Jリーグを飛び出してベルギーへ渡った決断の正しさを結果で示したい。

町野修斗
忍者の里が生んだひたむきFWは今が旬

選手には旬がある。点取り屋はとりわけそうで、W杯イヤーのJ1で13得点、得点王にあと1点にまで迫った町野はまさに旬だ。勝負どころでのひたむきさと思い切りの良さが光り、最前線のDFのごとく走れる献身性も高ポイント。三重県伊賀市出身。ゴール後の「忍者ポーズ」を世界でも発信なるか。




8強に挑む布陣

ドイツやスペインから自由を奪うため、切り込み隊長・前田らFW陣やMF陣もろとも一団となってプレスの波を浴びせかける。ボールを奪うや、伊東の突撃、久保の至芸、鎌田の創造性で強敵の壁を打ち破る。冨安、遠藤らを軸に一丸の忍耐から刹那の切れ味を発揮できたなら、1次リーグ突破とその先の8強がみえてくる。

記事
本池英人、木村慧

写真
目良友樹

グラフィックス
松原三佐子