街角に立つタリバンの兵士(8月7日、カブール)=AP

カブール陥落1年 「私たちは戦う」アフガン女性の証言

8月15日、イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧、同国の全権を掌握してから1年が過ぎた。前政権下で一度は自由を手に入れた女性たちは、タリバンによる弾圧で身の危険を感じたり、活躍の場を奪われたりしている。自由を取り戻すために戦う彼女たちの証言をオンラインで取材した。

街角に立つタリバンの兵士(8月7日、カブール)=AP

ドキュメント 女性リーダーの武器なき戦い

2021年8月15日、タリバンが首都カブールに侵攻し、戦闘員が大統領執務室を占拠した映像は世界に衝撃を与えた。あの日から1年。民主化が進んだ20年で社会参画を進めてきた女性たちは、再び教育を受ける権利や経済活動の自由を奪われた。西側諸国の経済制裁を受け、孤立した国家で貧困に苦しむ市民は「どうか私たちを見捨てないでほしい」と悲痛な叫びを上げる。

1週間かけて米国に退避した元国会議員。少女たちの学ぶ権利を守るために立ち上がった「シークレットスクール」。オフィスを失っても、テクノロジーの力で危機を商機に変えた女性起業家。基本的人権を侵害されてもなお、武器なき戦いを続ける女性たちに話を聞いた。





トルコ、イランに逃れた人たち
不安定な地位、高まる反難民感情

イスラム教徒が多くを占めるトルコやイランには、アフガニスタン出身者が数十万~数百万人暮らす。以前から根を下ろす人々がカブール陥落後、新たにタリバンの暴力などから逃れてきた人たちを支えるが、受け入れ側の社会も疲弊しており、多くが不法移民などとして不安定な生活を送っている。

「タリバンが入ってきて、街は暴力でいっぱいだった」。フルザン・サービティさん(47)は1年前の8月15日のカブールで味わった恐怖を語る。民家に押し入ったタリバンの戦闘員らが、社会進出に熱心だった女性などを連れ出し、往来で背中を打つなどしていたという。

高校で女子生徒らにダリー語文学を教えていた自身も身の危険を感じた。「見つかったら殺される」と震えながら、生まれて初めて全身を覆う衣服「ブルカ」をまとい、親戚の密出国業者とともに闇に紛れて隣国のイランに逃れた。

今は以前に滞在許可を取っていたトルコのイスタンブールで暮らすが、トルコ語が分からないため仕事に就けず、アフガンに残る娘を心配して毎晩のように涙する。娘は高校を卒業したばかりだが、タリバン政権になって大学進学の道は閉ざされた。

取材に応じる元高校教師のフルザン・サービティさん(7月、イスタンブール)

イスタンブールの大学に留学中でフリーランス記者のアミナ・ネザミさんも「以前は堂々と外を歩いていた女性が何もできなくなった」と嘆く。2月にアフガンのテレビ番組に遠隔で出演して女性の問題について話した際は、カブールの担当記者が解雇されタリバンから暴行を受けたという。

脅迫はアフガンに残る自身の家族にも来る。当初はネザミさんの活動に猛反対していた父親も「国の将来にはおまえのような人材は必要だ」と理解を示してくれているが、卒業後もトルコの滞在許可を更新できるかは分からない。「帰国すれば、私は空港でそのまま逮捕されるだろう」

複数のアフガン系支援団体を傘下に持つアフガニスタン協会連合の女性部門リーダー、ギュルシリン・ベイレルさんよると、トルコには推定で約30万人のアフガン人が滞在する。一定額以上の不動産購入などで市民権を得た人もいるが不法滞在者も多いとみられ、トルコ政府によると今年は既に3万7000人が強制送還された。

トルコにはシリア人をはじめ400万人以上の難民が暮らす。滞在の長期化や経済環境の悪化に伴って反難民感情は高まり、政府も強硬な対応が目立つようになった。ベイレルさんは「最近はアフガン人による暴力事件などが話題になり、送還の圧力がすごい」と語る。

定住を支援しようとする動きもある。トルコ育ちのアフガン人女性、ベルナ・セフェルさん(23)は不安定な環境に置かれた難民を支援するため、21年3月に新たな女性支援団体を立ち上げた。食料や生活用品を提供するほか、週に3回の法律相談会を開いている。

「当局は難民が社会に適応していないと言って滞在許可を出さない。それならばと考えた」(セフェルさん)。6月には移民局から定住のため講座開催を請け負い、7月までに3万人が受講した。テコンドーのアフガン代表を務め、フェイスブックでは23万人以上のフォロワーを持つ。影響力はトルコ政府にも評価され、協力を引き出している。

カブール陥落後、夫ら家族とともにイランに逃れたマルジエさん。マルジエさんが住んでいた村では、タリバンに殺された人も多かったという(7月、テヘラン州ピシュワ地区)

隣国のイランでも状況はいっそう厳しい。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で登録されているのは約80万人だが、実際は数百万人に上るとみられる。カブール陥落の前後には多くの難民が押し寄せ、政府は国境沿いに一時滞在用のキャンプを複数設けた。今は大半の人が街中で貧しい生活を送っている。

テヘラン近郊のピシュワ地区にある崩れかけた日干しれんがの家の前では7月末、路上で遊ぶ子どもたちや家事をする女性らの姿がみられた。その中の1人、マルジエさんはカブール陥落後の21年8月に家族と逃れてきた。年齢は28歳くらいというが、女性の誕生日を記録する習慣はなく、自分の生年月日は知らないと説明した。

イスラム教スンニ派のタリバンは、マルジエさんらシーア派の住む集落を襲い、住民を殺害したり土地や財産を差し押さえたりした。イランでは地元の人の農地を手伝う夫の収入はわずかで、移住する見通しも子供たちが学校に通うあてもない。それでも「安全に暮らせるだけで十分」というのが本音だという。

横沢太郎、寺沢将幸、山本博文、染川祐佳里、高野壮一、斎藤一美、イスタンブール=木寺もも子、シナン・タウシャン、テヘラン=タラ・タスリミ