熱海土石流1年 ドローンで見た被災地のいま

28人の死者・行方不明者を出した静岡県熱海市の大規模土石流から3日で1年を迎える。伊豆山地区に積み上げられた盛り土が崩落、136棟が被害を受けた。濁流にのみ込まれた被災地は今、どうなっているのか。小型ドローンを使い、上空から被災地の1年後の姿を見つめた。



TOPIC 1

ドローンで見た被災現場



あの日、熱海市では7月1日からの72時間で400ミリを超す大雨が降っていた。土石流が発生したのは午前10時30分ごろ。伊豆山地区の2級河川、逢初川の上流で盛り土が崩落。約5万6千立方メートルの土砂が周囲の建物をのみ込みながら流れ下り、伊豆山港のある海岸近くにまで到達した。

生き埋めになるなどして亡くなった住民は27人。懸命の捜索にもかかわらず、今も女性1人の行方が分かっていない。

土砂崩れの被害に遭った地区は、現在も立ち入り禁止区域に指定されている。対象地域の住民に認められているのは月3回(1回に最大3時間)の立ち入りだけ。約130世帯が公営住宅などに移り、先の見えない避難生活を続けている。

TOPIC 2

土石流で娘を失った女性の思い(動画インタビュー)



「この1年をどう過ごしていたのか、全然覚えていない」。土石流で娘を失った小磯洋子さん(72)は今、神奈川県湯河原町のみなし仮設住宅に身を寄せている。部屋の小さなテーブルには犠牲になった長女、西沢友紀さん(当時44)の遺骨が安置されていた。

結婚し、小磯さん宅近くのアパートで夫と娘(5)と3人で暮らしていた友紀さん。あの日、異変を察した友紀さんは、先に部屋の外に出た夫に和室の窓から娘を託した後、建物とともに土砂に押し流された。

「盛り土さえなければ」。小磯さんは盛り土部分を含む土地の旧現所有者らを相手取って損害賠償訴訟を起こした原告団に加わり、裁判の行方を見守る。母親を失った孫娘は来春、小学生だ。「彼女のショックは計り知れない。孫が将来進む道を決めるまで、そばで見守ってあげたい」と話す。

TOPIC 3

写真で比べる被災地の1年前と

大量の土砂が押し寄せた逢初橋付近(2021年7月3日、共同)は車が行き交っていた(6月16日)

土石流で被害を受けた家屋(2021年7月3日、共同)。土砂やがれきは撤去されたが、住民は月3回しか立ち入りが許されていない(6月19日)

濁流が直撃した丸越酒店(赤茶色の建物、2021年7月3日、共同)付近は一部通行可能に(6月19日)

TOPIC 4

「不備のある盛り土」 都道府県ごとの数は?日経全国調査

国は熱海市の土石流の発生後、全都道府県に盛り土の総点検を求めた。3月に公表された点検結果では、不備のある盛り土が全国に1089カ所あることが判明したが、県ごとの盛り土の数などは公表されなかった。このため日本経済新聞は6月、全都道府県に県別の箇所数などを尋ねるアンケート調査を実施。回答が間に合わなかった茨城を除く46都道府県から回答を得た。





総点検で「必要な災害防止措置がとられていない」「廃棄物の投棄などの禁止事項を確認」といった不備のある盛り土が確認されたのは39都道府県。最多は千葉(329カ所)で、静岡(193カ所)や神奈川(74カ所)が続いた。山口は「安全性が確保されていることを確認しており、措置も完了している」として盛り土の数を明らかにしなかった。





ホームページなどで不備のある盛り土の数を公表したのは38都道府県。国は点検結果の公表を各県に促しているが、不備のある盛り土が見つからなかった県を含め、8県が未公表。不備のある盛り土の地区名などを公表したのは7県にとどまった。各県には住民への丁寧な情報提供と対策の強化が求められる。



酒井愛美、渡辺夏奈、亀田知明、目良友樹