衛星写真で見る
緊迫のウクライナ情勢

クリミア半島ノボオゼルノエに集結したロシア軍(2月1日)=Satellite image ©2022 Maxar Technologies

ロシアとウクライナの緊張が高まっている。ロシア軍は2月10日、ウクライナの北に位置するベラルーシで同国軍と大規模な合同軍事演習を始めた。米国や英国、ドイツは東欧諸国などに部隊の増派を決めた。緊迫するウクライナ情勢を衛星写真で見る。

TOPIC 1

衛星写真で見るロシア部隊





ベラルーシ
(イェルスク地図①)

ロシアとベラルーシは合同軍事演習の準備を進めていた(ベラルーシ・イェルスク、2月4日)=Satellite image ©2022 Maxar Technologies

ロシアとの合同軍事演習が始まったベラルーシ。ロシア通信によると、両国軍合わせて6万~8万人が参加し、防空システムや戦闘機、戦車、装甲車などを投入する。米衛星運用会社マクサーテクノロジーズは衛星写真からイェルスクの部隊について「短距離弾道ミサイル『SS26イスカンデル』や多連装ロケット砲を持つ可能性がある」と指摘する。こうした動きはウクライナ侵攻への布石なのか、外交交渉で米国から譲歩を得るためのブラフなのか、プーチン大統領の真意は見えない。



ベラルーシ
(ウクライナとの国境近く)

(2月10日)=Satellite image ©2022 Maxar Technologies

マクサーの2月10日の衛星写真で、ベラルーシのウクライナ国境に近い飛行場の様子が確認できる。マクサーは部隊や軍用の車両、ヘリコプターが新たに配備されたとしている。



ウクライナ国境のロシア軍
(ポゴノボ地図②)

ウクライナ国境近辺で訓練するロシア軍(1月26日)=Satellite image ©2022 Maxar Technologies

ロシア軍はウクライナとの国境近くに集結。米欧はロシアが14年に続き、再びウクライナに軍事侵攻する可能性が高まっているとみる。マクサーはポゴノボなど展開エリアの状況について「すべての場所で軍用テントやシェルターの設置が確認されており、軍隊の準備が整いつつあることを示唆している」と分析する。「多くの展開エリアでは実弾射撃を含む軍事訓練が観測された」という。



ウクライナ国境のロシア軍
(ボエボ地図③)

Image ©Capella Space Corp. All Rights Reserved.

光学衛星は天候の影響を受けるので、雲があると地表の様子を撮ることが難しい。一方、合成開口レーダー(SAR)衛星は雲が多い冬でも、地表の情報を撮影可能だ。米衛星企業カペラスペースのSAR衛星でボエボの画像(1月6日撮影)を入手し、日本経済新聞と衛星データ解析のスペースシフト(東京・千代田)が解析したところ、戦車63両を含めてトラックなど計272両の車両が確認された。画像で赤色を記しているのが戦車とみられる。



クリミアのロシア軍
(ノボオゼルノエ地図④)

2014年、ロシアはウクライナ南部のクリミア半島の併合を宣言した。ロシアは実効支配するクリミア半島でも軍備を増強している。



クリミアのロシア軍

(2月10日)=Satellite image ©2022 Maxar Technologies

クリミア半島のシンフェロポリ北部にある飛行場を2月10日に撮影したマクサーの映像を見ると、新たな配備が確認された。マクサーは550以上のテントや数百台の車両が運び込まれたとみている。



TOPIC 2

映像で見る軍備増強



ロシア軍が1月にベラルーシ西部で軍事演習をする姿がロイター通信の映像でとらえられている。ロシアは極東地域などからもベラルーシに部隊を移動させ、2月10日から大規模な合同軍事演習を始めた。20日に終了する予定だ。

一方、米軍はベラルーシの西部に位置するポーランドに1700人を派兵する。6日にポーランドに到着する米軍部隊の様子が映像で確認できる。ウクライナではロシア軍の侵攻に備え、市民が銃の模型を手に訓練をしている。



TOPIC 3

ロシアとウクライナの軍事力比較



ロシアとウクライナの軍事力を比較すると、ロシアの方が優勢だ。ロシア軍はウクライナ国境地帯に13万人の兵力を配置しているとみられる。
ウクライナ侵攻の可能性を感じ取った米国はベラルーシの西側にあるポーランドに米陸軍第82空挺(くうてい)師団の約1700人を派遣した。8日にはウクライナ南西部と国境を接するルーマニアにも米軍の第1陣が到着した。



TOPIC 4

ロシアがウクライナに固執するワケ



なぜロシアのプーチン政権は強硬姿勢でウクライナにこだわるのか。

「ロシア人とウクライナ人の歴史的な同一性について」。プーチン大統領は2021年7月にこう題した論文を発表し、「1つの民族」だと主張した。ウクライナをロシアの勢力圏に取り戻すことが自らの使命だと考えているようだ。

ロシアとウクライナ、ベラルーシは同じ東スラブ民族で、統一国家の始まりは9世紀から12世紀ごろまで栄えたキエフ・ルーシにある。ウクライナはほぼ20世紀を通して旧ソ連の一部であり、本格的な国家として歩み始めたのは1991年のソ連崩壊後だ。

ウクライナは4000万を超す人口と広大な国土を持つ旧ソ連第2の大国。「大国の復活」の野望を抱くプーチン氏にとって、ウクライナを自らの勢力圏にとどめることは絶対条件だ。

プーチン氏は昨年12月、東欧諸国を加盟させないというNATOの約束が過去に破られてきたとして「ひどくだまされた」と恨みを口にした。2000年代初めまでは米ロは融和に向かうかに見えたが、プーチン政権は米欧への反発を強めていった。



TOPIC 5

欧州エネルギー危機 LNG奪い合い



ウクライナ情勢の緊迫によるロシアからの天然ガスの供給不安を受けて、欧州各国は液化天然ガス(LNG)の調達を急ぎ進めた。アジア向けのLNGを積載していた一部の船が洋上で針路を変更するケースも見られた。

金融情報会社リフィニティブの航跡データをもとに、欧州方面に目的地を変更したLNG船を抽出した。昨年12月中旬、赤道ギニアでLNGを積んだギリシャ船籍のある船はアフリカ最南端の喜望峰に差し掛かった直後、突如、Uターンしてスペインに向かった。米メキシコ湾岸でLNGを積んだ船が一度パナマ運河を通過して太平洋に出た後、引き返して英国に向かった例もあった。欧州がLNG調達に躍起になっていたことが分かる。



編集
佐藤賢、黄田和宏、嶋田有、伊地知将史、朝田賢治、並木亮、山田剛、斎藤一美