将棋・藤井聡太五冠
10の数字で見る強さ

将棋の第71期王将戦七番勝負で藤井聡太四冠(竜王・王位・叡王・棋聖)が12日、渡辺明王将(名人・棋王)を破り、対戦成績4勝0敗でタイトルを奪取した。史上4人目で最年少となる五冠を達成した。藤井五冠にまつわる10の数字で強さとすごさを振り返ってみた。

TOPIC 1

2016年9月、奨励会の三段リーグ戦を勝ち抜き、「神武以来の天才」と呼ばれた加藤一二三・九段の記録を62年ぶりに更新する14歳2カ月で四段昇段を決めた。加藤九段、谷川浩司九段、羽生善治九段、渡辺二冠に続く史上5人目の「中学生棋士」になった。そして同年12月のプロデビュー戦は前記録保持者の加藤九段。当時76歳との年齢差62歳の歴史的対決に勝利し、デビュー戦から怒濤(どとう)の快進撃が始まった。



TOPIC 2

加藤九段との対局に勝った後、負けることなく11連勝。プロデビューからの連勝記録を更新。その後17年6月まで無敗で重ねた勝ち星の数は29。1987年に神谷広志八段が達成した28連勝を30年ぶりに塗り替える記録となった。翌7月に佐々木勇気七段に敗れ30連勝はならなかったが、棋士としての地位が向上し強敵が増えた20~21年にも19連勝を記録している。



TOPIC 3

16年にデビューして以来、これまで一度も年間勝率8割を切ったことがない。渡辺二冠と永瀬拓矢王座の2人のタイトル保持者と比べても格段に高い。18年度の8割4分9厘は歴代3位の記録で、羽生九段が七冠を達成した1995年度に記録した8割3分6厘を上回る。21年度は藤井五冠と同い年の19歳、伊藤匠四段と首位争いをしている。ちなみに年度別の歴代勝率1位は中原誠名誉王座(十六世名人)が67年度に記録した8割5分4厘だ。



TOPIC 4

21年の賞金・対局料は6996万円で、全棋士の中で渡辺二冠(8194万円)、豊島将之九段(8145万円)に次ぐ3位だった。20年は棋聖、王位とタイトルを2つ獲得して前年の2倍に増額となった。21年は叡王・竜王とタイトルを2つ増やしたが、竜王の賞金4400万円は22年分にカウントされる。このまま順調にいけば22年の賞金・対局料は1億円を超えそうだ。



TOPIC 5

大山康晴十五世名人、中原名誉王座、羽生九段に続く4人目の五冠達成者となった。現在、タイトルは8あり残り3つで全冠制覇だ。22年の王座戦、棋王戦はともに挑戦者決定トーナメントから出場し、年度内に七冠制覇の可能性がある。名人については、順位戦A級で1位にならないと挑戦権が得られない。藤井五冠はA級の1つ下のB級1組に在籍し今期の成績は9勝2敗(2月12日現在)。次戦で勝利すれば昇級となり、名人挑戦に近づく。



TOPIC 6

「封じ手」は2日制の対局で、初日を終え手番となった棋士が2日目最初の指し手を用紙に記入するもの。20年の王位戦では封じ手3通がインターネットオークションにかけられた。最高額は藤井が封じ、王位奪取を決めた第4局の1500万円だった。藤井が初めて封じ手を行った第2局は約550万円。競売を発案した木村一基九段の第3局は約200万円だった。



TOPIC 7

日本将棋連盟はアマチュアの棋力を公認する免状を有料で発行している。免状には将棋連盟会長、名人・竜王のタイトル保持者がすべて自筆で署名する。今申請すれば「竜王 藤井聡太」の署名が入る。初段は3万3000円。二段は4万4000円、三段は5万5000円だ。免状取得には雑誌「将棋世界」の昇段コースで合格、アプリ「将棋ウォーズ」などの方法がある。棋力に自信のあるファンであれば欲しくなる一品だ。



TOPIC 8

将棋の戦法は序盤に飛車を動かさない「居飛車」と左へ移す「振り飛車」(上の図は四間飛車)の2つに大きく分かれる。振り飛車はアマチュアに人気の戦法で師匠の杉本昌隆八段も得意とするが、藤井五冠はプロデビュー後、公式戦で一度も採用していない。「(自分で指す)予定はないですね。自分は子供の頃から常に居飛車だったので、振り飛車を選ぶという選択肢がなかった」(21年1月4日付日本経済新聞夕刊)と話している。



TOPIC 9

七段だった20年7月に棋聖位を獲得して以降、段数の肩書で呼ばれることがなくなってしまったが21年7月には最高位の九段に昇段している。将棋界初の10代での達成だ。藤井聡太「九段」の肩書が使われるのはすべてのタイトルを失ったときとなる。七冠を達成した羽生九段は1989年に六段で竜王位を奪取してから18年12月に無冠になるまで、タイトルの肩書(前竜王含む)で呼ばれていた。



TOPIC 10

藤井五冠の自宅は愛知県瀬戸市にある。タイトル戦以外の対局は主に東京・将棋会館(渋谷区千駄ケ谷)と大阪市福島区にある関西将棋会館の2カ所で行われる。東京へは新幹線を乗り継いで約3時間、大阪でも約2時間かかる。対局が多く、他の棋士に比べて移動時間の負担は重い。しかも21年1月までは現役の高校生だった。時間的ハンディを抱えながらの五冠達成となった。



グラフィックス 竹林香織



「盤外」タイトル戦でのおやつの回数 90

タイトル戦では午前と午後の2回おやつが出る(20年は新型コロナウイルス禍のため1回のときもあった)。2日制の場合は合計4回あり、主催者と開催場所(ホテル・旅館)が決めたおやつリストの中から対局者が選ぶ形をとる。特に藤井五冠が選んだおやつは話題となり、即売り切れ、現在も品薄が続いているものもある。20年の棋聖戦以降、おやつの回数は90だった。ただ毎回食べているわけではなく、飲み物だけで済ませることもある。