広がる植物由来の代替食 チーズやマグロも

IN FOCUS 環境アップデート

写真の料理はすべて、動物性たんぱく質を使わないプラントベース(植物由来)の食品だ。大豆で作った植物肉に加えて、米粉の「チーズ」やこんにゃくの「マグロ」。地球の持続可能性が問われる中、環境負荷の大きい肉を中心に、減少が危惧される水産資源も植物性へ置き換える対象になる。開発企業の視線はどこに。代替食マーケットの現在を追った。

TOPIC 1

代替魚 資源危機に挑む

水産加工食品メーカー、あづまフーズ(三重県菰野町)は2021年11月、こんにゃく粉が原料のマグロ、サーモン、イカの「刺し身」を発売した。サシの入った見た目は本物そっくり。生魚を食べられない妊婦にも好評で「本当に魚は入っていないのですか」と客から問い合わせがあったほど。同社の開発室では、様々な代替魚介類の試作が進む。この日作っていたのは「ウナギのかば焼き」。豆腐やおからなどを混ぜて成形。両面を焼き、ガスバーナーで焦げ目をつけて特製のタレを塗ると、見た目も香ばしさもリアルに仕上がった。「ウナギ」の他に「イクラ」も開発中だ。魚を使わずに味わいや風味を追求する難題に挑む。

世界の水産資源の消費量は増えている。20年度の水産白書によると、世界の1人当たりの食用魚介類の消費量は50年で約2倍に伸びた。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の水産資源の9割以上は17年時点で乱獲状態か持続可能な上限まで漁獲されている状態だという。

TOPIC 2

代替卵・チーズ アレルギーにも対応

キユーピーの代替卵「ほぼたま」
神明の米粉チーズを使ったピザ

コメ卸最大手の神明(東京・中央)は米粉で作ったチーズを業務用に3月にも発売する。酒かすで香り、米油などで味を再現。熱すると溶けてとろりと伸び、冷めても固くならない。通常のチーズより1、2割安い価格で提供できるという。藤尾益造専務執行役員は「ビーガンや乳製品アレルギーのマーケットが大きい。欧州は環境に力を入れていて売り上げは海外が8割になるとみている」と話す。

キユーピーは21年6月、豆乳をベースにした代替卵「ほぼたま」を業務用に発売した。見た目はスクランブルエッグで、日本人好みの半熟感にこだわり、2年かけて開発した。単体ではわずかに大豆の風味がするが、記者がパンに挟んで食べてみると気づかないほどだった。

主な出荷先はプラントベースフードを提供しているホテルだが、給食でアレルギー対応が必要な幼稚園からも引き合いがある。キユーピー広報は「卵アレルギーの人が初めて口にする『卵』になるかもしれないので、おいしさにはこだわった」と話す。発売後の反響が大きく、一般向けの販売開始を検討している。

TOPIC 3

今後の普及は 日本らしさで世界にアピール

イトーヨーカドー木場店(東京・江東)の精肉売り場の横には大豆ミート専門コーナーが設けられている。もともと加工肉売り場に置かれていたが、需要拡大を受けて移動した。取材時、大豆ミートのひき肉は牛豚のあいびき肉より安く売られていた。現状、一般的に代替肉は食肉に比べて高い。大豆の価格は高騰しているが、新型コロナウイルスをきっかけに昨年起きた「ミートショック」で輸入牛肉の高値も続いており、植物肉の追い風になる可能性もある。

代替肉市場は国内外で拡大する見込みだ。ウシのゲップにふくまれるメタンは二酸化炭素の約25倍の温室効果があり、脱炭素の観点から世界の注目が集まる。調査会社シード・プランニングによると、30年に世界の植物肉の市場規模は20年比8倍に拡大する一方、日本は同2倍強の780億円にとどまる。こうした現状の中、最新テクノロジーで代替肉の製造と研究を進めるネクストミーツ(東京・新宿)の視線は海外に向いている。国内に加え米国などで販売している。新潟県長岡市に自社工場を建設予定で、完成すれば生産量が2倍に増えて価格も抑えられるようになるという。

プラントベースのみを扱うカフェ「2foods(トゥーフーズ)」はエコでおいしい「ヘルシージャンクフード」を掲げる。21年4月の初店舗オープンから半年で6店舗目とスピード展開。ヘルシーとジャンクという相反すると考えられていた要素が詰まった食事で、プラントベースに関心がなかった人まで満足できるようだ。運営会社であるTWO(東京・渋谷)の東義和代表は「日本はプラントベースフードで出遅れているが、日本食のブランド性と高い品質性が世界で強みになると思う」と海外展開を狙う。

もともと食肉消費が少ない日本では、欧米と比べて代替食を選ぶ動きが鈍い。なじみがある焼き肉や海鮮丼の登場が浸透するきっかけになるかもしれない。

写真・文 淡嶋健人、高橋鈴、山本 博文、小谷裕美