酸素確保で重症化防げ
ホテルや病院、第6波へ備え

新型コロナウイルスの第5波では病床が逼迫し、自宅療養者が重症化するケースが相次いだ。症状悪化時には酸素濃縮器などによる酸素療法が必要になるが、メーカーに在庫がほとんどなくなったこともあり、酸素を投与する手段の確保は急務だ。オミクロン型などへの警戒感が強まる中、酸素の配管工事やボンベなどで第6波に向けて準備をする自治体や企業、病院を取材した。




配管で酸素投与 ホテルを工事

三重県津市で11月下旬、ホテルに酸素の配管を設置する工事が行われた。新型コロナ中等症の患者を受け入れ可能な施設とするためだ。一見勝之知事は「中等症の患者も自宅で療養してもらったのが第5波。その反省から医療能力強化型の宿泊療養施設を設けることにした」。

配管を通じた酸素の投与は酸素濃縮器に比べて多くの酸素が供給でき、重症化した患者にも対応可能になる。県内には計2カ所設けられる予定で、病院のコロナ病床増床ともに、第6波に備える。

施工を担当する産業ガス大手エア・ウォーターによると、こうした工事の依頼は後を絶たず、年内には計10の自治体で完成予定だという。




酸素ボンベの容器不足に備え

酸素が充塡された医療用の酸素ボンベ(11月、埼玉県朝霞市の千代田メディカルガスセンター)

医療用の酸素ボンベの生産に欠かせない容器。医療ガスを製造する千代田(東京・杉並)のメディカルガスセンターでは鉄鋼製とアルミ製の2つの容器を使用して、酸素を充塡する。「需要の高まりから容器が入手しづらくなっている」と話すのは板井成美センター長。「通常より3カ月早く発注し、必要数を確保している」

同センターでは、東京都内の消防署に向けて平時には1カ月に約1000本の医療用の酸素ボンベを販売するが、第5波のピーク時には2500本に。配送も間に合わず、直接受け取りに来た消防車が敷地内に列をなしていたこともあった。

常に生産できる体制を整えるべく、緊急事態宣言の発令時にはスタッフを2つのグループに分けた。ボンベへの酸素の充塡は、法律に基づき密閉された室内で行わなければならない。クラスターが発生した場合に備え、もう一方のグループが稼働できるようにした。「生産体制には十分な準備を整えており、原料となる液化酸素の調達面でも心配はない」と板井センター長は自信をみせる。

病院、医療器具で態勢を整える

酸素流量計(写真上)とコロナ専用病床(11月、横浜市金沢区の神奈川県立循環器呼吸器病センター)

神奈川県立循環器呼吸器病センター(横浜市金沢区)は結核患者用の病棟を2020年春からコロナ患者の専用として運用する。ピークを迎えた今年の夏には専用の病棟だけでは足りず、一般病棟の病床を減らしてコロナ患者を迎え入れた。治療に不可欠な液化酸素の消費量は前年比で約2倍に増加していた。

病床には屋外にある液化酸素のタンクから酸素の配管が通っており、患者は酸素マスクなどで吸入する。欠かせないのが酸素流量計と呼ばれる器具だ。配管の端末に差し込んで使用し、投与する酸素の量を医師の指示の下で調節する。需要が落ち着いていたときに酸素流量計を計画的に買い足し、在庫を十分に備えた。

今夏から医師によるオンライン診療と訪問看護を組み合わせた取り組みを始めた。自宅療養するコロナ患者の容体をより正確に把握し、重症化を防ぐためだ。酸素投与が必要になっていたケースもあった。自宅へ医療を届けるには個人情報が必要だ。田尻道彦所長は「病床が逼迫すれば在宅医療への重要度が高まる。医療機関が患者の情報に迅速にアクセスできる体制を整えられるよう議論している」と話す。


写真・文 石井理恵