世界の若者、グレタさん訴えに呼応
SNSもリアルも
COP26が開催された英グラスゴーで環境保護を訴える若者たち=ロイター
英北部グラスゴーで開かれていた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が13日に閉幕しました。現地には世界中から若者らが集まり、各国政府や企業の対応が不十分だとして「アクション」と呼ぶ抗議行動を行いました。また、SNS(交流サイト)上では世界中の若者たちが、#UprootTheSystem、#COP26、#FridaysForFuture などのハッシュタグを使って気候変動への危機意識を発信する投稿が多く見られました。これらはスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんがツイッターなどで投稿する際に使うハッシュタグです。
今回取材班ではこれらの投稿者に連絡をとり、写真使用の許可を得るとともに、どんな思いで投稿したのかを聞きました。
行動起こす若者たち






グラスゴー
気候変動で今影響を受けている人々のために正義を求めてデモに参加しました。COP26は予想していたとおり、世界のリーダーたちの「グリーンウオッシュ(見せかけの環境対策)」の場でしかないと感じていますが、わたしたちのデモはすばらしいものでした。会議が行われている外で、みんなが危機感を持って集まっていました。リーダーが2030年、2050年の計画について話し合っている時間はなく、まさに今危機によって苦しんでいる人たちのために、気候問題を解決することが必要です。デモで人々と協力できたことで、希望とつながりを感じることができました。わたしたちは止まりません。世界を変えることはできます。(Amyさん @b_amyo、16歳)=インスタグラムから
ドイツ

気候変動活動家としての私が住んでいるケルンは資源の豊富な国ですが、ほんの数キロ離れたところで、石炭のために村を破壊しています。私たちは化石燃料のために教会や家、文化を破壊し、その化石燃料によって引き起こされる気候の大変動を経験しているのです。このような破壊を許している限り、私たちがこの大災害に真剣に取り組んでいるとは、大人には言えません。(@TheresiaCrone、19歳)=ツイッターから
ホノルル

パキスタン

米ワシントン

イスタンブール

モスクワ

バングラデシュ

ウガンダ

中国
政府による規制のためフェイスブックなど米国企業のSNSを利用できない中国ですが、「Fridays For Future China」のアカウント名で2019年5月から20年11月までツイッター上に投稿がありました。20年7月の投稿には活動が禁止されたという記述があります。ダイレクトメッセージでコメントをお願いしましたが、返答を得ることができませんでした。
パリ

北海道

仙台

名古屋

滋賀

京都

福岡

鹿児島

東京
COP26開催期間中の6日、グレタさんの活動をきっかけに始まった「フライデー・フォー・フューチャー(未来のための金曜日)」の日本組織が東京・新宿駅前でアクションを行いました。2019年2月に東京で本格始動したフライデー・フォー・フューチャー・ジャパンは、北海道、大阪、名古屋、福岡などにそれぞれグループがあります。学生を中心に全体で300人以上が在籍しています。

グラスゴー
フライデー・フォー・フューチャー仙台で代表を務める大学3年生の時任晴央さん(23)はグラスゴーに駆けつけ、会議を傍聴し現地のデモに参加しました。
■時任晴央さん一問一答
――現地でグレタさんを目にして。
彼女のスピーチは一言一言が心を動かすもので、しかも簡潔にまとめられていた。彼女に詰めかける報道陣もとても多く、改めて注目度が高いと分かった。一方で彼女以外のアクティビストは注目されず、同じことをしているのになぜ注目度に差があるんだろうと悲しくなった。
――グレタさんの行動に批判の声もあるが。
適材適所があると思っている。グレタさんに対して「国際政治や経済の事も考えろ」という意見があるが、それは国際政治学者や経済学者の仕事だと思う。確かに私たちも提言することがあるが、若者がやるべき事は危機意識を伝えることだ。
――現地の活動に参加してみて。
5日は3万人規模、6日は15万人規模の気候ストライキが行われた。切実な訴えや気持ちのこもった声援で本当に心が動かされた。ただこれを日本で行うのはまだ難しいのかなと思った。それはヨーロッパと日本の気候変動の認識の差、危機意識の差があり、まずは日本の環境教育をしっかりと整備することが必要だと感じた。
――会場を訪れた岸田文雄首相の印象。
頑張って声を振り絞って、走って追いかけ続けたのに全くもって相手にされず、がっかりした。誰一人取り残さないという政策を掲げていたが「いま若者を取り残していない?」と正直思った。
「リーダーたちは何もしていない」 グレタさんは痛烈批判
グレタさんは5日、COP26が開かれていたグラスゴーでスピーチしました。「COPはただのイベントになり果てた」と世界のリーダーたちを痛烈に批判、さらなる環境対策の必要性を訴えました。
2018年8月にグレタさんがたった1人で始めたフライデー・フォー・フューチャーは、毎週金曜日に学校を休んで国会議事堂の前で環境対策を訴えるというものでした。それが現在では世界中の多くの若者が彼女の考えに賛同、ツイッターのフォロワー数は500万を超えます。グレタさんのリーダーたちへの苛烈なまでの批判や、解決策を示さない姿勢に批判の声もあります。しかし、未来を生きる若者たちにとっては、自分たちが生きる地球を生活しやすい環境で引き継いでほしいという切実な願いがあります。異常気象が身近な問題になりつつある今、人類にとって残された時間は確実に少なくなっています。
(石井理恵、森山有紗、井上容、データビジュアルエディター 斎藤一美)