海藻もCO2吸収
ブルーカーボンの海

IN FOCUS 環境アップデート

地球温暖化の要因である二酸化炭素(CO2)を吸収する海藻など海洋植物に注目が集まる。森林の「グリーンカーボン」に対して「ブルーカーボン」と呼ばれる。水温上昇などの影響で海藻が減少している中、藻場の再生を試みる現場を訪れた。

TOPIC 1

地元ダイバーが藻場再生

魚による食害などで「磯焼け」が起きている相模湾では、神奈川県葉山町のダイバーらが藻場再生を担う。9月、ダイビングショップを経営する佐藤輝さんら約20人が沖合の海底にある大きな岩に向かった。あらかじめ取り付けたロープに海藻を詰めた袋を掛けていく。胞子が岩に付着することで繁殖を促す。成果は一進一退だが約7年間、地道な活動を続けている。佐藤さんに協力を要請したのは、同町で海の環境保全に取り組む鹿島技術研究所の山木克則さんだ。「気候変動で厳しくなる環境には、管理が重要」と地域一体で多くの人が活動に取り組む必要性を訴える。



TOPIC 2

鉄鋼メーカーも研究加速

鉄鋼スラグを混ぜた浚渫土の水槽㊨は濁りを抑える。左は浚渫土のみを入れた水槽(千葉県富津市の日本製鉄REセンター)

企業の取り組みも進む。大手鉄鋼メーカーの日本製鉄は鉄を造る際に出る鉄鋼スラグを港湾の工事で生じる浚渫(しゅんせつ)土に混ぜて資材を作り、海に沈めている。浚渫土は磯焼けの要因となるうえに軟弱で水が濁り、藻の光合成を妨げてしまうのだ。「自然に任せた藻場再生には限度がある」と担当者。資材には鉄分が豊富で、海藻の育成がうまく進むことが分かってきたという。

TOPIC 3

10年で海藻が成長

富山湾の水深8メートルの海底に再生した藻場(11月、富山県沖)

富山県魚津沖では小さな海藻だけだった海底が約4ヘクタールの藻場に成長した。県水産研究所の松村航さんが2010年に始めた海藻の移植の成果だ。かつては魚のすみかや産卵場になる藻場が減っていたが、海藻を付けたロープを海底に固定し長い時間をかけ育成につなげた。

TOPIC 4

高校生が水中ドローンで調査

海洋科学高校の生徒たちが藻場の分布を調査するため水中ドローンを海面におろす(10月、神奈川沖の相模湾)

次代を担う若者の育成も進む。海洋科学高校(神奈川県横須賀市)では、水中ドローンを活用した海の実態調査を実施。「SDGs(持続可能な開発目標)の理念に沿って、社会問題を解決する力を」との狙いで、20人の生徒が参加。11月に磯焼けが進む藻場の分布調査などに取り組んでいる。生徒からは「何も無い海底を見て驚いた」といった感想があがった。

港湾空港技術研究所の桑江朝比呂氏によると、ブルーカーボンを含む浅海域のCO2吸収効果は陸域の年間約73億㌧に対して約40億㌧。工業技術でのCO2除去に比べ効率は低いが、「自然を増やすことで魚が取れ、海がきれいになる。少しでも脱炭素に寄与するのがゴールの一つ」と話す。

写真・文 森山有紗