コロナ下、異例の五輪
写真で追う熱戦の裏側

日本勢が過去最多27個の金メダルを獲得した東京五輪は8日、国立競技場で閉会式を行い、17日間にわたる熱戦に幕を閉じた。コロナ下の緊急事態宣言中に開催された異例の大会は、会場を無観客にするなどさまざまな感染対策のうえで進められた。

市中には感染力の強いインド型(デルタ型)が広がり、東京都の新規感染者数は過去最多の更新を続けた。開幕した7月23日は1359人だったが、8日には4066人で推移する。政府は2日から緊急事態宣言の対象を6都府県に拡大、期間を31日まで延長した。


人流の減少は限定的で、ドコモ・インサイトマーケティング(東京・豊島)のデータによると東京・渋谷周辺で7日午後3時台の人出は前週比で12.3%減、2週間前比だと15.1%減となったが、東京駅周辺は前週比0.3%減、2週間前比では2.7%増えた。パブリックビューイングは軒並み中止となったが、五輪マークのモニュメントが設置された場所には記念写真を撮る人が絶えず、観戦自粛が要請されていたマラソンなどのロードレース沿道には多くの人が集まった。


選手や関係者の陽性者数も低水準ながら徐々に増加した。大会組織委員会は選手村を外部と遮断する「バブル方式」を採用したが、観光目的で外出するなどの違反者も確認された。大会参加資格を剝奪するケースもあった。

直前まで開催の是非が問われながらも、日本選手のメダルラッシュに沸いたスポーツの祭典。舞台裏の風景を写真で振り返る。

卓球男子団体準決勝が行われた東京体育館。無観客の会場に歓声はなく、選手の掛け声だけが響いていた(4日)

花形競技も無観客

宮城や福島、静岡県などで開催される一部を除き、競技は無観客で行われた。五輪の花形、陸上男子100メートル決勝も国立競技場の無人のスタンドが背景だ。満員の観客が声援を送る過去の五輪とは大きく異なる風景となった。

男子100メートル決勝も無人のスタンドをバックに行われた(1日、国立競技場)


午前の陸上競技終了後、夜のセッションまでの間はトラックにも人気(ひとけ)がなくなり、五輪が開かれているとは思えない静けさに包まれた(7月31日、国立競技場)

自粛要請のなか沿道に人波

自転車ロードレースやマラソンなどの公道レースでは、沿道での観戦自粛が呼びかけられた。競歩やマラソンが行われた札幌市中心部には所々に観戦自粛のプラカードを持った周知スタッフが配置されたが、レースをひと目見ようと観客が殺到。沿道の飲食店は窓側が満席になった。

競歩のコースには観戦自粛を呼びかけるスタッフが立ったが、見物客が続々と集まってきた(6日、札幌市)


女子個人ロードレースの沿道には大勢の人たちが幾重もの人垣を作った(7月25日、東京都稲城市)=共同

感染対策あの手この手

選手・関係者向けの感染対策の規則集「プレーブック」は選手や関係者にマスクの常時着用や、人との接触を最小限に抑えるよう求めた。だが競技会場でマスクを着用していない例が散見され、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会は改めて注意喚起を行った。

競泳会場でマスクを外し選手に声援を送る、関係者とみられる人たち(7月29日)



表彰式では選手たちはマスク姿で表彰台に。プレゼンターが持つトレーから自らメダルを取り首にかけた。一方でIOCは表彰式でメダリストが間隔をとって表彰台に立っている間は、写真撮影のために最大30秒間マスクを外すことを認めた。

表彰式で自ら金メダルを首にかける高藤直寿選手(7月24日、日本武道館)
女子マラソンの表彰式で選手にマスクのつけ外しのタイミングを指示するスタッフ(7日、札幌市)



手袋を着用するサッカーのボールボーイ、フェースシールド姿の医療スタッフやレスリング審判――。運営に携わる関係者もさまざまな感染防止対策を取った。競技の合間や終了時には会場を消毒する場面も多く見られた。

レスリングでは少し変わった感染対策が取られた。セコンドがビデオ判定を要請する際はスポンジなどを投げ入れるのが一般的だが、今大会はボタンを押す方式に変更された。

セコンドがビデオ判定を要請する際に使用する押しボタンがリングサイドに並んだ(3日、千葉市)

バブル方式で厳格管理も陽性者相次ぐ

組織委は感染抑止に向けて大会関係者らと外部との接触を断つ「バブル方式」を採用した。選手や関係者の行動範囲を宿泊先と競技会場、練習会場に制限し、厳格に行動を管理した。IOCは選手村への入村について原則、競技開始の5日前からの入村と、終了後2日以内の退村を求めた。選手は原則、毎日コロナの検査を受けなければならなかった。

長く選手村(手前)にとどまる選手や関係者が少ないせいか、大会期間中でも明かりはまばらだった(4日)
サッカー男子の試合が行われた宮城スタジアムでPCR検査のキットを持つスタッフ(7月31日、仙台市)=ロイター
選手村の入り口付近にはコロナ感染予防を呼びかける看板が設置された(4日)



大会期間中に新型コロナウイルスの検査で陽性となり、棄権を余儀なくされる選手が相次いだ。ギリシャのアーティスティックスイミングのチームでは6人が陽性となるなど、大会で初のクラスターも発生した。

チェコの代表が新型コロナ感染を理由に棄権し、試合が中止になったビーチバレーボール男子の会場(7月26日)=ロイター



「バブル方式」は大会を取材する各国のメディア関係者も対象だ。活動拠点とする東京都江東区のメインプレスセンター(MPC)では定期的なPCR検査など感染防止対策の徹底が求められた。一方でMPCへ向かうバスが混み合うなど、人が密集する場面も見られた。

MPCに設置されたPCR検査のための唾液採取ブース。段ボール製の84ブースがずらりと並ぶ(7月21日)
ボクシング会場になった両国国技館では升席の一部がフォトグラファーの撮影ポジション。密を避け、1人で1区画を使った(3日)
MPCへ向かうメディア関係者を乗せたバス。大変混み合っていた(7月23日)=ロイター

マスクさまざま 個性際立つ

選手や関係者に着用が義務づけられたマスクが競技場を彩った。デザインは国旗や国名をあしらったものが多い。日本代表(写真上段左から3人目)は鮮やかなオレンジ色が目を引いた。米国代表(上段右から2人目)のマスクは折り目の付いた立体的な形状が特徴だ。競泳男子背泳ぎで2冠を達成したROCのエフゲニー・リロフ選手(上段右から3人目)は、猫柄の個性的なマスクでひときわ注目を集めた。IOCのバッハ会長(下段右端)もマスク姿で観戦した。

(柏原敬樹、山本博文、石井理恵、三村幸作、淡嶋健人、上間孝司)