「嫁、夫、姑にはそれぞれの立場と本音がある。それがホームドラマのテーマになると考える人はテレビ業界に数えるほどしかいなかった」
Sugako Hashida
日本を代表する脚本家、橋田壽賀子氏。
早稲田大学在学中に、松竹に入社し、脚本部に配属。昭和34年のテレビ時代到来とともに、ドラマの脚本を担当する。
「となりの芝生」「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」など、社会現象を巻き起こす話題作を数多く生み出している。
橋田壽賀子氏の少女時代、話題作の制作秘話も合わせて知れる「私の履歴書」を是非ご覧ください。
橋田壽賀子
全30回
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「おしん」とは
「曲がりくねった人生を一歩また一歩と進んでいく女の名前としてはそれしかない」
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