ソニー・ホンダ、源流はロボ「poiq」 クラウドで車と対話
「どれだけ早くユーザーのニーズを捉え、それに早く対応していくかだ」 ソニー・ホンダモビリティのE&Eシステムアーキテクチャ開発部の高橋正樹は、電気自動車(EV)の試作車「AFEELA(アフィーラ)」実用化に向けた自らのミッションをこう語る。同部統合アーキテクチャ課に所属し、クラウドを含むソフトウエアアーキテクチャーの開発を主導する立場だ。 変わりゆくニーズに対応するために買った後も進化し
ソニー・ホンダ、守る安全・創る自由時間 45のセンサーで
「安全には徹底的にこだわる。安全な車だという保証があれば、色々なことができる」 ソニー・ホンダモビリティで自動運転を開発する弘間拓二がこう語る背景には、ホンダ在籍時に「レジェンド」を開発した際の想定外の経験がある。同車には一定の条件下で運転者による監視が必要ない自動運転「レベル3」を搭載し、世界で初めて国の認可を受けた。 世界初の安全性能を追い求め、実際に市場投入もできた。ただ、「顧客に喜んでも
ソニー・ホンダ、運転席に「スパイダーマン」の世界
「価値観は十人十色どころか20色くらいあって、どんどん変わる」 ソニー・ホンダモビリティの事業企画部プロダクトサービス企画課でプランナーを務める山崎雄太はこう話す。山崎は2016年に商用車メーカーからホンダに転じて「シビック」など代表車種の商品企画を担い、こう感じるようになっていた。 いかに飽きさせず、快適に使い続けてもらうか。ポイントの一つが車内での過ごし方で、そこでは個人の嗜好を反映しやすい
ソニー・ホンダ、車の顔にメディアバー 「本気ですか」
ソニー・ホンダモビリティの設立発表から1年。NIKKEI Mobilityは連載企画「AFEELAができるまで」をスタートします。2025年の電気自動車(EV)発売に向け、新ブランドAFEELAをめぐる動きやそれをつくる人々を追います。 「車開発者の立場から『本気ですか』と思いました」。ソニー・ホンダモビリティの車両開発企画を担当するシニアマネージャー、前島一騎はMedia Bar(メディアバー)
鴻海、EV車台で新時代の黒子 脱iPhone受託依存
電気自動車(EV)に参入する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は2025年に生産台数年間50万〜75万台、1兆台湾ドル(約4兆円強)の売上高を目指す。米テスラのような先行企業や既存の自動車大手に対抗しながら、世界EV市場でシェア5%という野心的な目標だが、鴻海は単なる1メーカーとしてEVの世界に参入しようとしているわけではない。 22年10月、同社初の本格的な新型EVのお披露目の場に創業者の郭台銘(
鴻海EVの電池工場をドローン撮影 見えた風雲児の心臓部
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がいよいよ電気自動車(EV)市場に本格参入する。2019年の参入表明から約4年、ようやく全貌が明らかになってきた。「全く異なる世界を作る」(幹部)と豪語するiPhone生産の巨人。30兆円企業が目指すEVに果たしてどんな勝算があるのか。 「鴻海は本気でEV市場に参入するのか?」「iPhone生産一筋のクルマ素人の鴻海が、本当にEVを作って、商売にしていけるのか?」
ホンダに接近 中国電池CALB、CATLより価格1割安
「ホンダの審査を通り、正式に製品を供給する資格を得ました」 2月23日、中国車載電池大手のCALB(中創新航科技)の発表が関連業界を驚かせた。ホンダの中国合弁会社が生産・販売する電気自動車(EV)「e:NP1」と「e:NS1」用として、CALBの電池が生産や品質に関する審査を受けて通過したという。 CATLと顧客争奪 ホンダは車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)に出資し、同
中国・NEV御三家の優等生 「航続1100kmEV」の理想汽車
世界最大かつ最先端の市場に発展している中国のモビリティー産業の最前線を追う連載「新自動車強国・中国」。第2部は新エネルギー車(NEV)、電池、自動運転の3分野でそれぞれ世界のトップ企業を脅かしうる新星を取り上げます。いずれも習政権が「中国製造2025」を世界に示した2015年に創業した、いわば「2015年組」です。中国の自動車強国への野心の申し子とも言える3社を解剖します。 不動産業界で働く江蘇省
75年目のホンダも動く 「自己否定」に挑む巨人たち
4日(日本時間5日午前)、米ラスベガス。テクノロジーの祭典「CES」の開幕に先立ち行われたソニーグループの発表会。巨大仮想空間のメタバースやゲームなどの新展開が次々と発表される中で大トリとしてステージに登場したのが、ホンダとの共同出資会社「ソニー・ホンダモビリティ」の試作EV(電気自動車)だった。 「AFEELA(アフィーラ)」というブランドで2025年に発売するというEV。だが、この日の説明は
「一芸」で風穴 将棋AIの異才がテスラ超え宣言
千葉県柏市にあるインキュベーション施設の一角。開放的なオフィスにパソコンが並ぶ。デスクに座る若い社員たちはジーンズにパーカと、都内でよく見かけるIT(情報技術)企業のようだ。現代コンピューターの父と呼ばれるアラン・チューリングから名付けられた社名はTURING。生まれて1年余りのこのスタートアップが開発するのはスマートフォンのアプリではなく、自動運転車だ。 つくるのは自動運転のアルゴリズムだけで
シン・デトロイト 100年秩序に「破壊者」たちの挑戦状
自動車産業が100年かけて築いた秩序が崩れようとしている。価値の源泉は巨大資本が競い合った規模の経済性からソフトパワーへとシフトし、業界の構造は強固なピラミッド型から業種の壁を越えた水平展開へ。そして、ひと握りの自動車メーカーが支配する世界からスタートアップが躍動する多様性の時代へ。巨大産業に起こりつつあるレジームチェンジの現場を追う。 その広大な敷地は第2次大戦中に爆撃機の量産に使われ、戦後に
中国・巨龍たちの覇権 「新自動車強国」まとめ読み
NIKKEI Mobilityは長期連載「新自動車強国・中国」を始めました。世界の最先端を走る中国モビリティー産業の最前線に迫ります。第1部「巨龍たちの覇権」では、日仏連合の急所を握るシナリオもあった浙江吉利控股集団や完成車メーカーの領域だった車台も開発する寧徳時代新能源科技(CATL)などを取り上げました。全3回をまとめ読み形式でお届けします。 中国が「自動車強国」に突き進んでいる。電気自動車
トヨタ・日産・ホンダに脅威 迫る「デジタル侵入者」
【この記事のポイント】・車載ソフトの死角をつく不正アクセスが増加・企業や業界団体は指針策定や侵入検知ソフトで対応・デジタル機器使う新手の盗難手口も インターネット技術などを悪用する「デジタル侵入者」が自動車各社にとって脅威となってきた。車載コンピューターやソフトウエアの死角を突いた車への新しい不正アクセスの手口や盗難などが相次ぐ。各社はデジタル時代に広がる新手の犯罪への対処に迫られている。 リモー
マツダ、忘れられた30人の逆転劇 解析チームが主役に
広島の町を流れる太田川水系の川沿いに立つマツダの本社工場。2つの流れに挟まれた北の端のへき地のような場所に立つ技術3号館に残された面々が後の快進撃の立役者になるとはこの時、誰も思わなかっただろう。2000年のことだ。そのチームを率いることになった人見光夫氏(現シニアフェロー)も内心で毒づいたという。 「社内で存在を忘れられた状態ですよ。たった30人で何をしろと。ふてくされていました」 マツダの経
日産、傍流「ソフト屋」がつないだ系譜 タタとタッグ
神奈川県厚木市にある日産自動車のソフトウエアトレーニングセンター。全国から社員が送り込まれ、4カ月間の集中授業を受ける。この間、元の職場の仕事に戻れるのは金曜日の午前だけ。あとの時間は受験生さながらの徹底教育を受ける。1000人のソフト専門人材の育成を目標に2017年に設立され、すでに400人以上が巣立っていった。 2000ページにも及ぶ14冊の独自テキストをもとに進むカンヅメ教育。その柱となる
「百度軍校」30人がけん引 自動運転タクシー中国10都市で
中国のインターネット大手、百度(バイドゥ)が自動運転タクシーの先端を走っている。国内10都市余りを走り回る同社の車両は実に600台以上。さらには同社で腕を磨いた技術者たちも次々に起業し、同じ分野で活躍する。海外の自動車大手もそのダイナミズムに引き寄せられ、中国は自動運転大国としての地位を固めつつある。 自動運転タクシーの乗車回数4倍に 「世界の自動運転タクシー業界をリードする地位を固めた」。11
トヨタ技術者が影の立役者 米欧勢と世界標準に道
持ち時間と言われていた40分はあっという間に過ぎ、二人の会談は2時間を過ぎようとしていた。米デトロイト郊外にあるフォード・モーターの研究施設を訪れたトヨタ自動車のエンジン制御技術者、大畠明氏はフォード研究部門担当のビル・パワーズ副社長を前に熱弁を振るっていた。英語は苦手だが通訳はいない。ただパワーズ氏ももとは制御系が専門だったことが幸いした。1990年代半ばのことだ。 「このままいけばエンジンの
トヨタ、マスワークスに賭けた電子設計巻き返し
数学者のクリーブ・モラー教授が開発した「MATLAB(マトラボ)」に可能性を見いだしたジャック・リトル氏。1984年の創業当初は数学的な要素が強かったが、マスワークスの創業にあたってリトル氏は同僚とともにこれを改良していった。空間計算、根軌跡、モデリング、リカッチ微分方程式――。当初はリトル氏の専門である制御工学の知見を「マトラボに付け加えて遊んでいた」というが、ここで重要な改良を加えることにな
モデルベース開発けん引 マスワークス「急成長の定理」
自動車産業が生まれて100年余り。機械と電気のメカトロが支配したアナログな組み立て産業に、新しいバリューが勃興してきた。ソフトウエアの力である。3万点もの部品を巡る規模の経済性を巡る壮大なゲームに明け暮れてきたこの巨大産業に訪れた「ソフトの世紀」。「ソフトウエアファーストのクルマづくり」をけん引するモデルベース開発の夜明けを追う。 「ミスター・アイサイト」の挑戦 「60歳になってからの挑戦です。『
「電池600万台」CATL、車台投入で揺るがす車会社との境界
車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が猛スピードで拡大している。世界市場の3割を占める電池供給だけでは満足せず、完成車メーカーが手がけてきた車台の開発に乗り出し、電気自動車(EV)の新興企業への供給を決めた。競合を圧倒する研究開発力で業界内での存在感が一層高まる一方、自動車メーカーとの関係にはきしみも見え始めた。 電池搭載車両は600万台以上 11月13日、CATLの曽毓群
狙われたルノー・日産 中国習政権と吉利の野心
中国が「自動車強国」に突き進んでいる。電気自動車(EV)や自動運転を競う新時代で、欧米に対抗する勢力となる野心が透けて見える。日産自動車と仏ルノーが資本関係の見直しを進めるさなか、浙江吉利控股集団が日仏連合の急所を握るシナリオもあったことがNIKKEI Mobilityの取材で明らかになった。 HORSEの経営権 パリのシャンゼリゼ通りにほど近いセーヌ川沿いのクラブ「BRIDGE」。11月8日は
ソニー、受け継がれた「脳×ロボット」の流儀
「では、次にaibo(アイボ)のプロトタイプをご覧いただきます」 ソニーグループ社内で「P会」と呼ばれる社長参加の幹部会議でのことだ。かつて話題をさらった犬型ロボット「アイボ」の復活を画策するというチームのプレゼンを前に、高木一郎(当時執行役EVP)は不満げだった。 高木は不採算だったデジタルカメラを再建し、ソニーにとって長年の課題だったテレビ事業の黒字化に道筋を付けたソニー社内で自他共に認める
ソニー、創業者の「不文律」破ったホンダとの提携
「仕事のことで直接相談したり、いっしょに仕事をしたということは、四十年間のおつきあいのなかで一度もありませんでした。お互いに、相手の会社や仕事のことには口を出さないという不文律のようなものがあったのです」 「本田さんも私も、仕事では自分勝手というかわがままというか、唯我独尊のところがありますから、もしふたりが仕事を媒介につながっていたら、すぐけんか別れをしていたかもしれません」 ソニーグループ共
ソニー、傍流「ソフト屋」に託された自動車参入
ソニーグループの自動車参入計画が動き始めた。100年に一度の変革期とも言われる自動車産業で相次ぐ新規参入組の中でもひときわ注目度が高い。5年ほど前にごくわずかな人数で始まったプロジェクトだが、そこに至る系譜をたどればソニー社内でも忘れられ散り散りになっていた研究者たちの存在があった。3回連載で、ソニーが紡いできたモビリティー参入の道をひもとく。 「まさかソニーに入ってクルマをつくることになるとは