寄り添いと祈り~臨床宗教師

 人々が直面する悲しみや苦しみに、宗教者はどう向き合うのか――。東日本大震災を契機に東北大学が開設した実践宗教学寄付講座で、「臨床宗教師」を養成する研修が行われている。4月から7月にかけて実施された研修には、宗教、宗派の枠を超えて、15人の僧侶らが全国各地から集まった。宮城県内の寺院に宿泊しての全体講義と、被災地での傾聴活動や電話相談、あるいは終末期医療や福祉の現場に赴いての個別実習に取り組んだ。  布教を目的とせず、公共の場で、超宗派の宗教者たちが人々に寄り添う。モデルとするのはキリスト教圏の病院などでケア活動に従事する聖職者「チャプレン」の姿だ。寺と地域社会との結びつきが薄れつつあるなかで、 … (2日 21:53)

ただ手を握る――。被災地を巡回するお坊さんの移動傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」。仮設住宅の集会場で、お茶を飲みながら被災者の声を聞く。研修生として参加した僧侶の一人は、津波で家族を失った女性の言葉にじっと耳を傾け、震える手を黙って握りしめた(6月17日、宮城県石巻市)

  • 「親の介護がつらくて…」。「幽霊を見るんだよね…」。いくつかのシナリオに沿って研修生どうしが相談者と宗教者の役割を演じるロールプレーの実習。相手の立場を想像して共感する姿勢を身につける。涙を流しながら演じる場面もあった(5月14日、仙台市太白区)
  • 「また会えたね」。末期がん患者が最期の時を過ごす長岡西病院の「ビハーラ(緩和ケア)病棟」で、にこやかに話しかける関崎智弥さん。3度の訪問実習を行い、患者と会話を交わしたり、外出に同行したりした。病棟内の仏堂では朝夕に読経と法話が行われ、静かな時が流れる(7月3日、新潟県長岡市)
  • 「わての若い頃はなあ……」。昔話にうんうんとうなずく佐藤正浩さん。高齢者や障害者、身寄りのない人など約110人が入居するマンション「シェアハウス中井」には、介護スタッフとともに僧侶が常駐する。日常の困り事からみとりや葬送まで支援する僧侶の存在が、生活に安心感を与える(7月11日、大阪市平野区)
  • 「投げかけられた悩みに、宗教者としてどう答えたらいいのか」。実習での会話や行動を振り返り、意見を交わす。「必ずしも答えを出す必要はない。相手の言葉を受け止めて、心の整理をしてもらうことが大事」と講師は助言した。寺の本堂での話し合いは夜が更けても続いた(6月17日、宮城県石巻市)
  • 鎮魂の行脚――。津波で多くの人が犠牲となった宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区で、降りしきる雨の中、一心に手を合わせる。それぞれの宗教、宗派のやり方で、読経し、祈りをささげた(7月22日)
  • 法衣に身を包んだ宗教者たちの列が、さび付いたカーブミラーに映る。人けのない町に読経の声が響いた(7月22日、宮城県名取市)
  • 締めくくりの講義と修了式は東北大学の教室で行われた。「国立大学が主催することで宗教的な中立性と公共性を担保できる」と同大学の鈴木岩弓教授。「臨床宗教師という存在が広く認知され、将来的には病院や介護施設などに常駐できるようになれば」と期待を寄せる(7月23日、仙台市青葉区)
  • 笑顔とうなずき、そして祈り――。宗教者だからこそ聞き取ることができる苦悩の声に、しっかりと寄り添っていく。次回の研修は10月からの予定(6月17日、宮城県石巻市で開かれた移動傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」)=写真 佐光恭明

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