3・11 鎮魂のライブペインティング

 東日本大震災から2年が経過した3月11日、美術作家の深堀隆介さん(40)が鎮魂の思いを込め、津波で半壊した福島県南相馬市萱浜地区の被災者宅でライブペインティングを行った。読経の声が響き、遺族の上野敬幸さん(40)夫婦が見守るなか、流された2人の子供たちをイメージした金魚の絵が浮かび上がった。 (11日 23:21)

ライブペインティングで金魚を描く美術作家の深堀隆介さん(3月11日、福島県南相馬市)

  • 上野敬幸さんは津波で長女の永吏可さん(当時8)、長男の倖太郎くん(同3)と両親の4人を失った。思い出が詰まった自宅をいまだ取り壊せないでいるなかで、深堀さんのライブペインティングによる供養の申し出があった。深堀さんは、樹脂などを使って立体的な金魚を描く技法を駆使する美術作家。永吏可さんと倖太郎くんの上履きを題材にした作品も遺影の脇に置かれた
  • 午後2時46分、サイレンが響き渡るなか、上野さん夫婦と震災後に生まれた倖吏生(さりい)ちゃん(1)が目を閉じた
  • サイレンが鳴りやむと同時に、福島市内で除染活動を続ける常円寺の阿部光裕住職が読経を始め、ライブペインティングがスタートした
  • 畳2枚分の白い紙のキャンバスの前で集中する深堀さん。後日、極度の緊張状態だった、と明かした
  • 張り詰めた空気のなか、筆を握った
  • 制作時間は地震発生の午後2時46分から、津波到達時間までの1時間未満とした
  • 金魚の尾の部分が、躍動感を表現するために最も重要な部分だという。はけを使って一気に描いた
  • 完成した絵の前で「2人が金魚になったら、あの津波から逃げられたかもしれないと思って描きました」と説明する深堀さん。上野さんの目に涙が浮かんだ
  • オレンジ色の尾を持つ金魚は永吏可さん、こげ茶の金魚は倖太郎くんをイメージした。母親の貴保さんの腕に抱かれる倖吏生(さりい)ちゃんは、姉から「吏」、兄から「倖」の1文字ずつをもらい「生」という字を付け加えて名付けられた。上野さんはいまだ見つからない倖太郎くんと父親を見つけるため、遺体捜索と浜の清掃を行うボランティア団体「福興浜団」の代表として、活動を続けている(3月11日、福島県南相馬市)=写真 小林健