中学生料理人の決意

 東日本大震災の被災地、青森県八戸市に中学生の料理人がいる。佐藤元重君、15歳。3歳で包丁を持ち、小学4年生から客の前ですしを握る。津波で店は全壊したが、修繕してなんとか再開。3月の卒業を機に、新たな一歩を踏み出そうとしている。 (3日 19:04)

流れるような動作ですしを握る元重君

  • 料理人の父、一弘さんを見て育った元重君。幼少期から包丁を握り、自然に料理の道へ。海外の国際交流イベントにも招待される腕前となった(写真左、2009年)。包丁1本で作ったダイコンとニンジンの野菜細工は繊細そのもの
  • そんななか、津波が襲った。一弘さんが経営するレストラン兼民宿「洋望荘」は全壊。「ボイラー室に船が突っ込み、料理道具は全部流された」。閉鎖した宴会場には今も爪痕が残る
  • 「絶対ここで、店をやりたい」。あきらめかけていた一弘さんに泣きながら訴えた。この一言がきっかけで、修繕を開始。約半年後、再開にこぎつけた
  • 風評被害が続き、予約は以前の8分の1までしか戻らない。厳しい現実に向き合いながらも、元重君は決意を固めた
  • 卒業後は進学せず修行に専念し、料理の道を究める――。休み時間は鏡に向かい、すしを握る姿勢や動作を確認したり、クルミで指の動きを滑らかにしたりするトレーニングを欠かさない
  • 元重君が目指すのは父、一弘さんが進めてきた、うま味調味料や添加物を一切使わない自然食料理だ。野菜は自家製、味噌やしょうゆも手づくりする。この日は山に入り、シイタケ栽培の原木などに使うまきを集めた
  • 3歳から毎日包丁を持つが「同じ食材でもコンディションが全部違い、同じ作業はない」と言い切る。姿勢を正して一弘さんの指導を受ける
  • 「どうしたらおいしくなるか、食べる人の気持ちになっていつも考えていきます」。決意を胸に、今日も調理場に立つ(1月19日、青森県八戸市)=写真 松本勇

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