120年の歴史に幕~福島県の石川家畜市場

 明治時代より120年以上の歴史を持つ福島県石川町の石川家畜市場が今春で閉鎖することになった。繁殖農家の高齢化や後継者不足の現状に加え、原発事故の影響で野草がエサとして使えなくなったため飼料を購入せざるを得なくなり、繁殖農家の経営を圧迫したためだ。石川郡畜産農業協同組合の渡辺一雄組合長は「石川の牛がいなくなるわけではないが、市場の閉鎖は断腸の思い」と話す。同市場に出荷していた農家は、4月から本宮市にある県家畜市場に持って行くことになる。石川家畜市場の閉鎖により福島県内で子牛の競りを行う家畜市場は本宮市だけになる。 (17日 17:07)

組合長の渡辺一雄さんが育てる子牛の「たかこ」。「手塩にかけて育てんだあ。だから、まるで自分の子供みたいなもんなんだよ」とそっと頭をなでた

  • 昨春、牛の飼料となる牧草や稲わらなどの放射性セシウムの暫定規制値が100ベクレルに引き下げられた。土手草や野草を飼料にできなくなったため海外から飼料を輸入したことで繁殖農家の経営は厳しくなった。「原発事故が市場閉鎖の引き金になった」と渡辺さんは話す
  • 昭和44年当時の市場。「競りがある時は朝からお祭りだった。酒引っかけて来る人もいたし、競りにかかる子牛をおれによこせとか、がんばれって掛け声がすごかったんだよ」と当時を思い起こす渡辺さんは懐かしそうに写真に目をやった
  • 日が暮れて暗くなった牛舎で牛にエサをやる渡辺さんの妻、タカさん。夫婦、二人三脚で牛を育ててきた
  • 震災からちょうど1年10カ月となった1月11日、石川家畜市場最後の初競りが行われた。福島県近県だけでなく、山形県や岐阜県など遠方からも質の良い子牛を求めて購買者が集まった
  • 岐阜県の飛騨下呂温泉牧場から来た南下末光さんは「いい子牛を頭数そろえるため石川へ来ている」という。育てた牛は飛彈牛になる
  • 男ばかりが集まる市場に訪れた阿部美都姫さん(5)。買い付けに来た祖父に連れられてきた。2歳から競りに来ていて、牛が好きで全く怖がらないという。退屈そうなそぶりを見せることなく、競り落とされる牛を見つめていた
  • 組合長として市場の歴史に幕を引く重責を担った渡辺さん。「市場の閉鎖は断腸の思い。原発事故や不況を乗り越え、がんばっていきたい」と力強くあいさつした。3月13日、市場は最後の競りを迎える(福島県石川町)=写真 小川望