大槌の老舗旅館、再び

 岩手県大槌町で100年以上続く老舗の小川旅館。市街地にあった旅館は震災直後の津波と火災で骨組みを残すだけとなった。女将の小川京子さん(51)一家は高台の高校に避難して無事だったが、震災前から病床にある先代で母のミヲさんの看病と避難生活に追われながら旅館再開に奔走した。元の場所では建築できないため別の場所を借り、国と県の「グループ補助金」制度を活用した。9月にはミヲさんが亡くなったが震災から約1年9カ月後の12月3日、ようやく小川旅館は新たなスタートをきった。 (8日 16:17)

2011年3月25日、県立大槌高校の体育館に避難していた小川京子さん(右)。旅館兼自宅の焼け跡から写真を見つけ新聞の上で乾かしていた。「焼け残ったこの写真が宝物」とつぶやく京子さんの目から涙がこぼれ落ちた

  • 2011年6月1日、布で仕切られた同高の体育館。「旅館で使っていた箸がありました」とうれしそうに話した
  • 夫の勝己さんが撮った被災直後の小川旅館
  • 2012年9月3日、解体された小川旅館にたたずむ京子さん。入院中の母、ミヲさんの看病と旅館再開に向けて奔走する毎日で疲労はピークに。同月17日、ミヲさんは他界した
  • 新しい旅館は建築士の夫、勝己さんが手掛けた。勤めていた建設会社を辞め、夫婦二人三脚で再開を目指した
  • 11月15日、完成した玄関に朝日が差し込む(写真左)。親族が集まった神事で勝己さんは「ここはまだ仮設。あくまでひとつのステップです」と将来は元の場所での再建をという決意を語った
  • 「人が気兼ねなく集まれる。人と人とがつながる旅館にしたい」という亡くなった母の思いを込めて新しい旅館は「絆館」と名付けた
  • 新しいお皿には「絆」の文字が
  • 玄関で花の水やりをする勝己さん。「補助金は申請が複雑で大変だった。でも、再開したらもっと忙しくなる」
  • 12月6日、再出発した小川旅館絆館の玄関はお祝いの花で埋め尽くされていた
  • 再開後、宿泊客で混み合う食堂。小川旅館ににぎやかさが戻ってきた(写真右)。この日は、10年来の常連客の遊佐清孝さんが来館。震災後、初めての再会を喜び合った。「頑張りすぎて、無理さしねえようにな」と遊佐さん
  • 「いってらっしゃい」と宿泊客を見送る京子さんは、晴れやかな笑顔を見せた。震災と母の死を乗り越えて小川旅館絆館の女将は、再出発を果たした(写真右)。甚大な被害を受けた岩手県大槌町。復興の道のりは果てしなく遠い。いまだに残るがれきの山の向こうから朝日が昇り、陽光が町を照らす(12月7日)=写真 小川望