野菜工場でもう一度農業へ 被災農家の挑戦

 東日本大震災で被災した農家が「野菜工場」を立ち上げた。6月から試験栽培を始め、9月には本格生産を開始。農業の経験はあっても水耕栽培は初めての試みで、再起に向けた挑戦が始まった。 (22日 22:04)

ハウス内で発芽した野菜の苗(宮城県名取市)

  • 「さんいちファーム」社長の瀬戸誠一さん(63)。津波で家、田畑、農機を流され、兼業で勤めていた会社も失った。当初は「2、3年アルバイトすれば年金暮らしかな」とも考えたが、自らを奮い立たせて農業再開を決意。金融機関を訪ねたが「農家には融資できないと断られた」
  • 農業を諦めかけたとき、東京の会社が手掛ける水耕栽培の話を耳にする。行政からの補助を受けるため、昨年11月に地元の仲間2人と農業法人を設立。今年の5月末には「野菜工場」が完成した
  • 600坪の工場を3つ建設し、レタスや水菜、チンゲンサイ、ルッコラ、ホウレンソウなどを栽培している
  • 発芽した野菜の苗を水耕栽培のレーンに植え付ける。作業はすべて手作業だ。品種により2週間から6週間程度で収穫できる
  • 水耕栽培には雨水をろ過して使用する。肥料を加えた溶液は年間を通して21~22度に保つ。ハウス内に空調設備はない。夏には強い西日で葉っぱが黄色く変色する失敗も。瀬戸社長は「まだ手探り状態。これから初めての冬を迎え、正直なところ不安はある」と話す
  • チンゲンサイの収穫作業。注文に応じて刈り取り、外食チェーンなどに出荷する。個人向けにもネット通販で対応している
  • 瀬戸社長は「小規模農家は天候などに左右される農業だけでは生活できない」という。年間を通じて収穫できる水耕栽培を成功させて「農家が安定収入を得る手段として広めたい」と抱負を語る(宮城県名取市)=写真 玉井良幸

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