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変異株にワクチンは有効? 医師が答えるコロナの疑問

Q&Aで学ぶ新型コロナワクチン・治療薬(1)

NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

2021年半ば以降、国内でワクチン接種が進み、秋口からは新型コロナの感染者数が大幅に減っている。しかし、WHOが11月下旬に「懸念すべき変異株」に指定した「オミクロン株」の感染者も増えつつあり、第6波を懸念する声が高まっている。12月には医療従事者向けにワクチンの3回目接種がスタート、今後高齢者、64歳未満への接種も順次始まる予定だ。

そこで今回は、12月22日発売の電子書籍『新型コロナワクチン・治療薬 最新Q&A50』(コロワくんサポーターズ著)の中から、これまでに明らかになった新型コロナワクチンの状況に加え、治療薬に関する情報も併せ、2021年12月1日現在の情報を3回に分けて紹介する。今回は、ファイザーとモデルナのワクチンの効き目や副反応の違いなどについて解説しよう。

Q.1 新型コロナワクチン接種後に新型コロナに感染するリスクはどれくらいですか。

A.2021年半ば頃から徐々に、新型コロナワクチンの感染予防効果そのものについても報告が出てきています。米国などの研究では、接種後の感染予防効果は、ファイザーのワクチンは約88%(1カ月以内)、モデルナのワクチンは約97%(1~4カ月)であったことが報告されています。

しかし新型コロナワクチンの感染予防効果は、接種後、時間が経過するにつれて徐々に低下することもわかってきました。加えて、感染力が強い変異株「デルタ株」が流行の主流になってきたことで、ブレークスルー感染(Q.2参照)が増えています。このような状況を考慮して、1、2回目のワクチン接種を完了して一定期間が経過した人に対して、免疫を補強するために3回目のワクチン接種(ブースター接種)を実施する国が増えています。

なお、重症化予防効果については、米国の研究報告などから、感染予防効果と比較して時間が経過しても維持されやすいことが示唆されています。

Q.2 ファイザーとモデルナの新型コロナワクチンは、効き目に差がありますか。

A. ファイザーのワクチンとモデルナのワクチンはいずれもmRNAワクチンです。臨床試験ではほぼ同等の有効性が示されていました。これら2つのメーカーのワクチンはいち早く全世界で使用されるようになったので、様々な研究が行われ、データが蓄積してきています。最近わかってきたことは、ファイザーのワクチンに比べてモデルナのワクチンの方が、効果がやや高いのではないかということです。2回目接種完了から120日以上経過した人を対象とした米国の研究では、ファイザーのワクチン接種者の入院予防効果が77%であったのに対し、モデルナのワクチンでは92%と上回っていました。

また、感染予防に重要な役割を果たすと考えられるワクチン接種後の抗体の量の上がり具合にも違いがあり、モデルナの方がやや高いと報告されています。さらに接種から6カ月後に抗体の量がどれだけ維持されているかについても、ファイザーのワクチンを接種したグループに比べてモデルナのワクチンを接種したグループの方が高かったと報告されています。

このような差が生じる理由として、ワクチンに含まれているmRNAの量がファイザーに比べてモデルナの方が多いこと、1回目と2回目の接種間隔がファイザー(3週間)に比べてモデルナ(4週間)の方が長いことなどが考えられています。1回目と2回目のワクチンの接種間隔については、ワクチンの種類は異なりますがアストラゼネカのワクチン(ウイルスベクターワクチン)に関する研究があり、間隔をより長くあけた方が高い効果が得られる、という結果が得られています。mRNAワクチンについても同様の傾向がある可能性が考えられます。

ただしモデルナのワクチンとの比較で効果がやや劣るとしても、大きな差ではなく、ファイザーのワクチンにも十分な効果があることは間違いありません。ワクチンの副反応についてはファイザーの方が頻度が低いとの報告もあるなど、それぞれのワクチンに別々の小さな長所があると考えればよいと思います。

次々登場する変異ウイルス、ワクチンを打っても意味ない?

Q.3 変異ウイルスが次々と出てくるから、新型コロナワクチンを打っても意味がないのではないですか。

A. 現在、流行の主流となっている変異ウイルス「デルタ株」(編集部注:2021年夏の第5波の主流だった変異ウイルス)は、以前のウイルス株と比べてワクチンがやや効きにくいとされ、実際にブレークスルー感染が増えています。しかし今後登場するすべての変異ウイルスが、ワクチンが効きにくい性質を持っているとは限りません。例えば、デルタ株の前に世界的に広がっていた「アルファ株」は、感染力はそれ以前のウイルス株より強くなっていましたが、ワクチンの効果は維持されていました。

デルタ株に対しても、ワクチンの重症化予防効果は十分に保たれていることがわかっています。ワクチン接種が進んでいったん減少した感染者数が、デルタ株の流行で再び増えた国もありますが、重症化率や死亡率はワクチン接種が広まる以前と比べて低く抑えることができています。

今後も、ワクチンが効きにくい新たなタイプの変異株が出現する可能性はあります。現に2021年11月下旬に世界保健機関(WHO)により「懸念すべき変異株」に指定された「オミクロン株」は、その変異の多さから既存のワクチンの効果が低下するのではないかと疑われています。ただし、その場合でもワクチンの効果がゼロになるとは考えにくいです。また、新たな変異株に対応したワクチンの開発・改良も常に行われているので、変異ウイルスが原因でワクチン接種が無意味になることはまずないでしょう。

Q.4 新型コロナワクチン接種で心臓の病気のリスクが高まるというのは本当ですか。

A. 頻度はまれなものの、新型コロナワクチン接種後に心筋炎や心膜炎を疑う事例が国内外で報告されています。心臓の筋肉である心筋に炎症が起こるのが心筋炎で、心臓を包む表面の膜に炎症が起こるのが心膜炎です。10代~30代の男性、1回目接種よりも2回目接種で発生頻度が高く、接種後1週間以内に発症する傾向が高いようです。

なお、10代、20代の男性については、ファイザーのワクチンに比べてモデルナワクチンで心筋炎・心膜炎の頻度が高い可能性が示唆されています(表参照)。希望する場合には、モデルナのワクチンをすでに予約中、あるいは1回目にすでにモデルナのワクチンを接種していても、ファイザーのワクチン接種に変更することができます。

心筋炎は重症化すると、心不全や不整脈などの原因になることがありますが、新型コロナワクチン接種後に発症した心筋炎や心膜炎の多くは幸い軽症であり、適切な治療によって後遺症を残すことなく速やかに改善しています。

心筋炎や心膜炎は、新型コロナウイルスに感染した場合にも、合併症として起こることがあります。合併する確率はワクチン接種後に発症する確率よりも高く、より重症であることがわかっています。したがって現時点では、ワクチン接種のメリットが副反応のリスクのデメリットを上回っているとの考えから、接種対象のすべての世代の人にワクチン接種が推奨されています。

なお、心臓の病気は早期発見、一刻も早い治療がとても重要です。ワクチンの副反応かどうかにかかわらず、今までになかった胸痛、息切れ、動悸(どうき)などに気付いたら、すぐに医療機関を受診してください。

ワクチンの種類によって副反応のリスクに違いは?

Q.5 新型コロナワクチンの種類によって副反応のリスクに差はありますか。

A. 別々に臨床試験が実施されているので単純に比較はできませんが、ファイザーのワクチンよりもモデルナのワクチンの方が一般的な副反応の発生頻度は高いようです。またモデルナのワクチンでは、接種から約1週間後に、接種した部位の痛みや腫れなどが遅れて出ることが多かったと報告されています。ただしほとんどが軽症で、速やかに回復しています。

まれに起こる重篤な副反応としては、心筋炎や心膜炎が疑われる報告の頻度が、ファイザーのワクチンに比べてモデルナのワクチンの方が高いことが知られています。アストラゼネカのワクチンに関しては、ワクチン接種後に血小板減少症を伴う血栓症、毛細血管漏出症候群、ギラン・バレー症候群などの神経疾患を発症した例が、海外で報告されています。血小板減少症を伴う血栓症についてはファイザー、モデルナのワクチンでも疑い例が出ていますが、これまでのところ、アストラゼネカのワクチンほどには関連性が明らかになっていません。

なお、まれなアレルギー反応との関連が懸念されているポリエチレングリコール(PEG)は、添加剤として3種のワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)すべてに含まれています。

3種いずれのワクチンにも高い有効性があること、いずれも重篤な副反応の頻度がまれであることを踏まえると、現時点では接種のメリットが副反応のリスクのデメリットを上回っていると考えられます。いずれかのワクチンを接種できるときに接種することをお勧めします。

Q.6 新型コロナワクチンの接種率が上昇したら、イベントや飲み会に自由に参加しても大丈夫ですか。

A.ワクチンを打ったら絶対に新型コロナウイルスに感染しないわけではありません。ワクチン接種から時間がたつとワクチンの効果が少しずつ低下するので、ブレークスルー感染が起きやすくなります。イベントへの参加、飲み会での交流などを再開する際には、感染流行の状況に加えて、そういったことも念頭に置いてください。

現在、日本では、大規模イベントなどへの参加条件としてワクチン接種歴などの提示を求める「ワクチン・検査パッケージ」制度が検討され、効果を確認するための実証実験が行われています。しかしそういった仕組みに頼るだけでなく、お互いの健康を守るために、それぞれの参加者がイベント前後に密になる場所に行くのを避ける、イベント参加者同士で声を掛け合って健康チェックをするといった1人ひとりの心がけが引き続き大切です。

(第2回に続く)

(倉沢正樹=日経メディカル元編集長)

[日経Gooday2021年12月20日付記事を再構成]

【電子書籍】新たなギモンに日米欧の医師らが総力回答!
新型コロナワクチン・治療薬 最新Q&A50

著 者:コロワくんサポーターズ
発行日:2021年12月22日
価 格:880円(10%税込み)
発 行:日経メディカル開発

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