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LDLコレステロールが高い人の卵摂取量、制限はある?

NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!

【問題】脂質異常症は、動脈硬化を引き起こす元凶の一つであり、放っておくと脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクが高くなります。脂質の中でも注意すべきは、LDLコレステロールなどの、いわゆる悪玉コレステロール。このLDLコレステロールに関する記述で正しいのは次のうちどれでしょう?

(1)運動を実践すれば、LDLコレステロールは確実に下がる
(2) LDLコレステロールが高い人は卵は週に1~2個に抑えるべき
(3) LDLコレステロールは「少し高いほうがいい」「下げすぎても良くない」

答えは次ページ

答えと解説

正解(正しい記述)は、(2)LDLコレステロールが高い人は卵は週に1~2個に抑えるべきです。

健康長寿のためには、動脈硬化のもととなるLDLコレステロールのコントロールが欠かせません。しかし、LDLコレステロールの数値を生活習慣の改善だけで下げるのは一筋縄ではいきません。中性脂肪のように、食べ過ぎやアルコールを抑えて運動すれば減りやすい、というわけではないからです。

そもそも、LDLコレステロールについては、誤解されていることが少なくありません。よくある誤解の1つは、「運動を実践すれば、LDLコレステロールは確実に下がる」というものです。「コレステロールは油の一種なのだから、運動して体脂肪が減れば下がりそう」と思う人がいても不思議ではありませんが、実際はそうではありません。

脂質異常症に詳しい千葉大学大学院医学研究院教授の横手幸太郎さんは、「中性脂肪やHDLコレステロールはジョギングやウオーキングなどの有酸素運動で改善しますが、LDLコレステロールはそれらに比べ運動では下がりにくいとされています。エネルギーとして使われる中性脂肪と違って、コレステロールは運動で消費されるわけではないからです」と解説します。

エネルギーとして使われる糖や中性脂肪と違って、コレステロールは細胞膜やホルモンの「材料」になるもの。そもそも燃料ではないので、運動しても使われることはありません。有酸素運動をすると中性脂肪は減りますが、LDLコレステロールは運動だけではなかなか減らないのです。

もっとも、運動だけでは「減りにくい」というだけで、意味がないわけではありません。「減りにくいとはいえLDLコレステロールを下げる効果は多少なりともあるので、運動は推奨されています」と横手さん。運動によって血糖値を下げるインスリンというホルモンの効き目が良くなり、血糖値や血圧が下がることで、LDLコレステロールも下がりやすくなるそうです。

LDLコレステロールが高い人は、卵は週1~2個に抑えるべき

「卵は1日に何個食べても大丈夫」というのも大きな誤解です。

昔は「卵は1日1個まで」などと言われましたが、あるときから「1日に何個食べても大丈夫」という情報が出回るようになり、今でも「何個食べてもいい」と思っている人は多いかもしれません。

確かに、コレステロールは7割以上が体内で合成されるので、食事の影響は意外と少ないのは事実です。さらに「日本人の食事摂取基準」でも2015年にコレステロールの上限値がなくなったこともあり[注1]、「コレステロールの制限は時代遅れ」と思っている人もいるでしょう。しかし、コレステロールの制限が必要ないのは、あくまで「健康な人の場合」です。LDLコレステロールが高い人は、体内のコレステロールのうち2~3割は食事から来ることを無視すべきではありません。

[注1]2020年版では「脂質異常症の重症化予防の目的からは、200 mg/日未満に留めることが望ましい」と記載されている。

横手さんは「LDLコレステロールが高い人がたくさんコレステロールをとれば、さらに上がる可能性があるので、とりすぎないほうがいい」と注意します。実際、「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」でも高LDLコレステロール血症の人はコレステロールの摂取量を1日200mg未満に抑えることを推奨しています。

動脈硬化の予防には、LDLコレステロールは低いほどいい

コレステロールは生命を維持するために必要不可欠な成分でもあるため、「数値が低すぎるのはよくない」「多少多くても問題ない」と思う人もいるようです。実際、ネット上の情報には、そういったことを示唆する情報もあります。

しかし、「これはよくある誤解で、LDLコレステロール値が上がれば動脈硬化のリスクは増えますし、下がれば動脈硬化のリスクは減ります。LDLコレステロールの量が問題になる病気は動脈硬化だけ。そして動脈硬化とLDLコレステロールの関係はいたってシンプルなんです。LDLコレステロールの値が低すぎると体に良くないというエビデンスもありません」と横手さんは言います。

LDLコレステロールが低すぎると死亡率が高くなるというデータはあるものの、それはがんや肝硬変などの患者が混じっているためだそうです。

「コレステロールはもともと体に必要なものですから、がんの人や衰弱してやせ細った人はLDLコレステロールが低くなっています。LDLコレステロールが低いから弱っているのではなく、弱っているからLDLコレステロールが低いわけです。つまり、因果関係の逆転ですね。少なくとも動脈硬化を防ぐためには、LDLコレステロールは低ければ低いほどいいと言えるでしょう」(横手さん)

ただし、気をつけなければいけないのは急に下がってきたとき。「薬を飲んでいるわけでもなく、食事も変えてもいないのに下がってきたという場合は、何か病気が隠れているのかもしれません」と横手さんは注意する。そんなときは早めに医療機関を受診しましょう。

この記事は、「LDLコレステロールは動脈硬化の主犯格! 軽く見ると血管老化の原因に」https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/21/122100052/122100001/(伊藤和弘=ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2022年6月13日付記事を再構成]

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