生理、タブーから解放を アーティスト・スプツニ子!
ダイバーシティ進化論
英スコットランドで今夏、自治体や学校など公的機関に生理用品の無償提供を義務付ける法律が施行された。女性が生理用品を無料で入手できる権利を法制化するという、世界に先駆けた取り組みだ。
背景には経済的な理由で生理用品を買えない「生理の貧困(period poverty)」を解決しよう、という意識の高まりがある。用品が買えずに学校を休むケースは新興国に限った話ではない。生理は女性が生きていくうえで自然な現象なのに、人前で話すことがタブー視されてきた。ようやく光が当てられるようになってうれしい。
私が2010年に発表した「生理マシーン、タカシの場合。」は生物学的男性が生理を疑似体験し、痛みに苦しむ様子を描いた映像作品だ。当時は日本語圏だけではなく、英語圏でも衝撃を持って受けとめられた。拒否感が強かったといってもいい。あれから12年。作品への好意的な反応が国内外で増え、変化を感じる。
権利の法制化までいかなくても、生理用品を手に入れやすくする取り組みはさまざまある。カナダやオーストラリアは購入時の課税を廃止した。ドイツは税率を19%から7%に引き下げた。ニュージーランドやフランスのように学生に無料提供する国も多い。

日本にも生理の貧困はある。厚生労働省の調査(22年2月)では、新型コロナウイルス禍以降、生理用品の購入・入手に苦労した女性は8.1%いた。20代以下に限ると12%を超えた。
学校のトイレに生理用品を置くなどの対応が広がっているが、消費税率は10%であり、軽減税率が適用されていない。生理は女性が生きているだけで毎月発生することを考えると、関連用品は軽減税率の対象にすべきではないか。
それには社会の理解をさらに進めることが欠かせない。最近、実際に生理用品を手に取りながら生理について学ぶ男子校の生徒たちがいることを報道で知り、心のなかでエールを送った。身近な女性を思いやれるようになってほしい。
10代ばかりではない。ヤフーは執行役員以上の幹部に女性の健康の基礎知識や対処法に関する検定の受検を義務付けた。人材の多様性を確保するため、女性特有の体調の悩みに幹部が正しく対応できるようにするという。生理をタブーから解放するため、こうした地道な取り組みを積み重ねていきたい。

[日本経済新聞朝刊2022年11月21日付]
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