前立腺がん 治療せず経過を観察するのはどんな場合?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
(1)発見から5年後の生存率は99%以上で、死亡率はそれほど高くない
(2)頻尿などの尿トラブルがきっかけで見つかったときはすでに進行していることが多い
(3)PSA検査を50代以降に定期的に受けていると早期に発見しやすい
(4)経過を観察する「監視療法」が行われるのは50〜60代に多い
答えは次ページ
答えと解説
正解(間違っているもの)は、(4)経過を観察する「監視療法」が行われるのは50〜60代に多いです。監視療法が行われるのは、実際には75歳以上のほうが多いといえます。
全国がん登録の2018年の統計によれば、日本で前立腺がんと診断された人は年間約9万2000人で、男性が発症するがんの第1位となっています。ただ、前立腺がんはほかのがんと比べると進行が緩やかで、発見から5年後の生存率は99%以上と、死亡率はそれほど高くありません。
とはいえ、前立腺がんのすべての進行が緩やかというわけではなく、2〜3割は「足が速い」といわれるケースもあります。しかも、頻尿や残尿感などの尿トラブルが表れる前立腺肥大症とは異なり、前立腺がんは初期に自覚症状があることはまれです。
前立腺肥大は尿道を取り囲む内腺と呼ばれる部分で発生するため、尿道が圧迫されることでさまざまな尿トラブルが起こります。それに対し、前立腺がんは主に、尿道から離れた外腺と呼ばれる部分に悪性の腫瘍が発生するため、がんが進行して尿道を圧迫するようになるまで自覚症状が起きにくいのです。
前立腺がんが進行すると尿トラブルが起きる

尿トラブルで受診して前立腺がんが見つかる場合は、すでにがんが進行してしまっているケースも少なくありません。そうなってからでは、がんを根本的に治す「根治的治療」が難しくなることもあります。

前立腺がんは50代以降に増えてきます。そのため、前立腺がんを早期に見つけるための検査である「PSA検査」を、50代以降は定期的に受けることをお勧めします。
前立腺がんと診断されても、がんの進行度や悪性度が低い場合には、定期的に検査を受けながら経過を観察する「監視療法」が行われることがあります。
実際に監視療法を選択する患者さんは、75歳以上の後期高齢者が多いのが現状です。50代、60代といった比較的若い世代では、その後の平均余命は20年以上ありますから、がんを根本的に治して社会復帰することを目標に、治療を進めていくことが多いでしょう。
[日経Gooday2023年1月16日付記事を再構成]
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