頭痛・便秘・鼻炎…薬の飲み方、間違えると症状悪化も
市販の痛み止めを飲み過ぎて頭痛がさらにひどくなるなど、間違った薬の使い方で症状がかえって悪化することがある。処方薬では多くの薬を飲むことで副作用リスクが上がる「ポリファーマシー」も問題だ。今飲んでいる薬との付き合い方は大丈夫だろうか。
頭痛や発熱などでつらいとき、頼りになるのが市販薬だ。新型コロナウイルス禍で受診控えが進み、市販薬の利用が増えているようだ。健康保険組合連合会が2020年に行った調査では、体調不良時は受診をせずに市販薬で対処したと答えた人が7割いた。
一方で問題になっているのが市販薬の間違った使い方だ。薬剤師でもある東京薬科大学の成井浩二准教授は「長期間、漫然と飲み続けたり、過剰に摂取したりして、逆に体調を悪くするケースがある」と警鐘を鳴らす。
その代表が鎮痛薬の飲み過ぎによる頭痛の悪化だ。鎮痛薬を繰り返し飲むことで脳が痛みに敏感になり、服用回数が増える。以前は薬物乱用頭痛と呼ばれたが、今は「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」が正式な病名だ。
糸魚川総合病院(新潟・糸魚川市)脳神経外科の勝木将人医長らが21年、糸魚川市民を対象に行った調査では、約40人に1人がMOHに該当し、その約7割が市販薬を使っていた。勝木医長は「頭痛で鎮痛薬を月に10回以上飲んでいるとMOHになる危険があり、頭痛が治らなくなる人もいる。片頭痛が月に2回以上ある人は頭痛外来などで受診を」と呼びかける。
便秘や鼻炎、不眠などに用いる市販薬にも注意したい。

腸を動かして排便を促す刺激性下剤は、使い続けると腸の動きが低下し、薬の量が増えていく。血管収縮作用のある鼻炎用点鼻薬は、使い過ぎで鼻粘膜が厚くなり、かえって鼻づまりが悪化する。睡眠改善薬も連用で薬が効きにくくなり、不眠の慢性化につながる。「本来、これらは一時的な使用が大前提。市販薬を飲む際は必ず添付文書を読んで、服用回数などを守ってほしい」と成井准教授は話す。
市販薬でも処方薬でも重い副作用が出た場合は、「医薬品副作用被害救済制度」の対象になる。「ただし薬を適正に使っていない場合は対象にならない」(成井准教授)
処方薬では、何種類もの薬を飲むことで副作用が起こりやすくなる「ポリファーマシー(多剤併用)」に気を付けたい。厚生労働省の調査では、5種類以上処方されている人は75歳以上で約4割(うち6割は7種類以上)、それ未満の年代でも2割前後に上る。
栃木医療センター(栃木・宇都宮市)内科の矢吹拓医長は、「薬を5、6種類以上飲んでいる場合、ポリファーマシーとみなされる。一般に5剤以上になると副作用が起こりやすい」と話す。

特に高齢者は加齢で肝臓や腎臓の機能が低下し、筋肉量も落ち、薬の効き過ぎが起きやすい。副作用でふらついて転倒し、骨折することもある。矢吹医長は「新しく薬を開始した後にふらつきなどの症状が出たら、必ず医師や薬剤師に相談を」と強調する。
矢吹医長らは15年にポリファーマシー外来を開設し、入院患者の薬の見直しに取り組んでいる。これまで約250人を対象にし、薬は平均9種類から5種類に減らした。「その薬が本当に必要かを患者さんと相談しながら検討している。高齢者に限らず、長期間飲んでいる薬があれば、年に1回は薬の見直しを医師に相談するといい」(矢吹医長)
また薬の写真をスマホで撮るのも一法だ。「処方薬、市販薬、サプリメントも撮っておく。日付も自動的に残るので服用記録になる」と成井准教授。医師や薬剤師に見てもらえば薬選びの情報になるし、副作用や災害が起こったときも役に立つ。
(ライター 佐田 節子)
[NIKKEI プラス1 2022年12月10日付]
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