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冬のしつこいかゆみの原因 皮脂欠乏症、どう防ぐ?

NIKKEI STYLE

冬は肌の乾燥に悩まされる季節。特に皮脂の分泌や角質層の保湿成分が減少する中高年は乾燥しやすい。悪化すると、かゆみや湿疹を引き起こす。今回はそんな肌トラブルの「皮脂欠乏症」に注目する。

外気が乾燥する上に暖房器具を使う冬は一年で最も肌が乾燥しやすい。人によってはカサカサして白い粉をふいたようになり、症状が進むと、かゆみを伴う。これは中高年によく見られる「皮脂欠乏症」という肌トラブル。若年層でもアトピー性皮膚炎などの素因があるとなりやすい。

東京女子医科大学の川島眞名誉教授によると「特に発症しやすい部位は皮脂腺が少ない脚のすね。次いで腰回り、お尻、太もも」。乾燥する理由は「角質細胞間脂質、天然保湿因子、皮脂膜がいずれも減少するから」(川島名誉教授)だ。これらは皮膚の一番外側にある、わずか0.02ミリの細胞の重なり、角質層に存在する。

角質細胞間脂質はセラミドという脂が主成分。その名の通り、細胞と細胞のすき間をセメントのように埋めて、角質層にある水分をはさみ込み逃さない役割がある。天然保湿因子はアミノ酸が主成分だ。細胞の中にあり、やはり水分を抱え込む性質を持つ。

皮脂膜は毛穴の皮脂腺から分泌した皮脂と汗腺から分泌した汗などが混ざった天然のクリーム。角質層の表面を保護するように覆い、水分蒸発を防ぐ。

水分保持を担うこの3つが加齢やアトピー性皮膚炎などにより減少することで、肌は乾燥する。川島名誉教授は「病名に皮脂とあるが、皮脂に限らず、角質層の水分が減ることも潤いを失う要因」だと指摘する。

では乾燥が進むと、なぜかゆみが生じるのか。国立国際医療研究センター病院(東京・新宿)皮膚科の玉木毅診療科長は「角質層には本来、外部刺激から肌を守るバリア機能が備わっている。水分保持能力の低下とともにバリア機能も低下し、刺激を受けやすくなる」と説明する。

乾燥すると、ふだんは皮膚の深いところにある知覚神経線維が角質層近くまで伸びてくることも知られている。このため衣服がこすれるなど、わずかな外部刺激にも過敏になり、かゆみを感じるようになるという。

玉木診療科長は「かゆいからかくと、角質がさらにはがれてバリア機能が低下し、ますますかゆくなる。こうした悪循環になると、湿疹ができてしまうので要注意」と警告する。重症化した湿疹は、ステロイド外用薬で炎症を鎮める治療が必要になる。

そうなる前にまず心がけたいのは保湿だ。減少した水分と油分を補う保湿剤を乾燥部位に塗ろう。具体的にはヘパリン類似物質やセラミド配合のクリームで肌内部に水分を蓄え、白色ワセリンなどでふたをするとよいだろう。

肌をできるだけ乾燥させない生活習慣も大切だ。入浴時に洗浄剤をたくさん使ってゴシゴシこするように体を洗うのは厳禁。「不潔にしているからかゆいと思い込んで、ナイロンタオルで強くこすり洗いする人がいるが、これは逆効果。角質がはがれて余計にかゆみを招く」(玉木診療科長)。「乾燥気味なら洗浄剤を使うのは一日おきでよい」と勧める。お湯で流すだけでも汚れは十分に落ちる。入浴後は体を拭いたらすぐに保湿剤を塗るのが鉄則だ。

昨今の住まいは気密性が高い。エアコンをつけ続けていると、部屋の中はかなり乾燥する。加湿器などを使い、湿度を常に50%前後に保つようにしたい。肌の水分を奪うこたつや電気毛布は長時間使い続けないこと。保湿と生活習慣の改善で冬の乾燥対策を徹底しよう。

(ライター 松田 亜希子)

[NIKKEI プラス1 2022年12月3日付]

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