なぜ発熱…病原体から体守る コロナ禍ストレス影響?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、発熱が心配になって体温を測る回数が増えた人も多いだろう。そもそも発熱はどうして起こるのか。体内はどんな状態になっているのか。体温と発熱の基礎を知っておこう。

人間の体温は体の機能を維持するため、ほぼ一定に保たれている。ただ同じ1日でも0.5~1度ほど上下する。一般に朝が低く、夕方に向けて徐々に高くなり、夜にはまた下がる。体温が高い時間帯は代謝が上がって活動的になり、低くなると休息の状態に入ると考えられる。
国際医療福祉大学医学部心療内科学の岡孝和主任教授は「日本人の平熱は約7割が36.6~37.2度の間に入るという研究報告がある。37度以上だと心配する人がいるが、健康な状態でも37度台は珍しくない」と話す。
自分の平熱を知るには起床直後、昼食前、夕方、寝る前の1日4回検温するとよい。数日続ければ体温変動の傾向がわかる。運動直後や食後、入浴後は体温が上がるので検温には向かない。女性は月経周期に伴う体温変動も頭に入れる必要がある。月経周期前半は体温が低めに、排卵後の後半は高めになる。妊娠後しばらくも高めの状態が続く。
測定法には気をつけたい。わきの下での検温は体温計を斜め下から差し入れ、先端をわきのくぼみの中央に当て、しっかりしめる。口の中で測る場合は舌の裏の中央奥に体温計の先を当てて閉じる。安静にして、体温計ごとに決められた測定時間を守る。
発熱とはどのような状態を呼ぶのか。岡主任教授は「感染症法による基準では37.5度以上を発熱、38度以上が高熱としている」と説明する。
ウイルスや細菌に感染すると、体の防御反応として体温が上がる。発熱の仕組みに詳しい名古屋大学大学院医学系研究科統合生理学分野の中村和弘教授は「体温が1~2度上がると、病原体の増殖が抑えられ、免疫細胞の一部では病原体に対する攻撃活性が高まる」と解説する。

発熱時には寒けがしたり、顔色が悪くなったりする。体温が下がらないように皮膚の血管が収縮して熱放散を防ぐからだ。ほかにも「熱を生み出す力が強い『褐色脂肪組織』という脂肪を燃やして体温を上げる。子どもはこの脂肪が多いので熱が上がりやすい」(中村教授)。筋肉の震えでも熱をつくる。
こうした体の反応は脳の視床下部にある体温調節中枢からの指令で起きる。免疫細胞の働きで「プロスタグランジンE2」という発熱の引き金となる物質が体内で多くつくられるほど高熱になりやすいという。中村教授は「こうした仕組みは風邪もインフルエンザも新型コロナウイルス感染症も同じだ。プロスタグランジンE2がつくられるのを抑える解熱鎮痛薬によって熱を下げられる」と語る。
一方、ストレスによる発熱は仕組みが違う。「機能性高体温症」と呼ばれており、中村教授らの研究では体温調節中枢とは異なる脳の部位が関係すると考えられている。
コロナ禍でこの症状を訴える人が増えたと指摘するのは岡主任教授。「コロナに感染したのではという不安から微熱が続く。不安を和らげる薬でよくなることがある」。体温変動の乱れによる不調も目立つという。在宅時間が長くて生活が不規則になっている。日中に体温が十分上がらず活動的になれない、夜に体温が下がらず眠れない、といった訴えが多くなっている。
岡主任教授は「朝は決まった時刻に起きて日光を浴びる。朝食をとる。体を動かす。夜はスマートフォンなどの使用を控え、夜更かしをしない。生活を見直せば、2週間ほどで体温変動のリズムが改善してくる」と助言する。
(ライター 佐田 節子)
[NIKKEI プラス1 2022年4月2日付]
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