休日デトックスで心と体をリセット
日経ヘルス・フォーメン
疲れを感じないから休む必要はない――。こう思ってしまう人ほど注意すべきと警鐘を鳴らすのが、日本薬科大学の丁宗鐵(てい・むねてつ)教授だ。「疲れを感じなくても、実際に体が強いわけではない。疲れに対する感度が鈍いだけということがほとんど」(丁教授)。
疲れを感じにくい分、無理が利き、がんばりすぎた結果、疲労回復が不十分で体を壊すケースもあるという。仕事も趣味もと欲張ってしまい、すべてを完璧にこなそうとする人に多い。

↓ チェック結果は?
~該当項目が10個以上あるほうが、その人のタイプを強く示す。どちらも10個未満の場合は中間タイプと考えよう~

上のチェック項目で自分のタイプを確認しただろうか。疲れセンサーが鈍い、漢方でいうところの「実証タイプ」は、達成感や勝負へのこだわりが強いタイプの人だ。「既に疲れがたまった、病気の一歩手前の状態だと認識すべき」(丁教授)。
一方、疲れを感じやすい「虚証タイプ」は、疲れをその日のうちに取らなければやっていけないタイプ。頑張りが利かないといわれることもあるが、「オフには参考にすべき"休み上手"ともいえる」(丁教授)。家族や友人など周りに虚証タイプの人がいたら、休日のプランニングは任せてみるといい。
「最近、ちょっとがんばりすぎかな?」と自分で思った場合は注意が必要。「本来は虚証タイプでも、仕事などでがんばろとすると実証タイプに傾いてしまい無理を重ねてしまうことも多い」と丁教授はいう。
オフもオンも頑張って活動しようとする人は、体を自動で調整、制御する自律神経が24時間休みなしで働いている状態になっている。一方、「現在の社会で働きづくめだと自律神経の疲れがたまりがち。回復には休日が必要」と話すのは、順天堂大学の青木晃准教授。
自律神経とは、意識せずに体温、消化、代謝、免疫など、体の機能を自動調整する体の神経の働きだ。大別すると交感神経と副交感神経が働く。「この働きが低下し、エネルギーの代謝がうまくできないと太りやすくなる。皮膚の新陳代謝が滞れば、シミ・シワ・くすみができやすく、免疫系に影響が及べばかぜを引きやすい」(青木准教授)。
自律神経が疲れる主な理由は日常の生活環境が地球の自然環境とは違ってしまっているから。自律神経の役割の一つ、体温調節であれば汗をかいたり、震えたりして自然環境に体内環境を合わせる。ところが、現実は冷暖房完備が当たり前で、夏は屋内の温度差により不調をきたすことも。20代なら乗り切れても、40~50代になるとこの疲労の蓄積が、「やせにくくなった」といった変化として表面化するのだ。



つい、「今日中に仕事を終わらせなくちゃ」と無理しがちな人。そんな人が軽視するのが睡眠。日ごろの生活が夜更かし型になると睡眠時間が不足したり、睡眠のリズムが乱れて睡眠の質が低下しやすい(右グラフ)。
睡眠時間が不足すると、疲労の回復だけでなく「太りやすくなる」と、自治医科大学の西多昌規講師は指摘する。睡眠時間が不足すると満腹感にかかわるホルモン「レプチン」が減り、食欲を増進するホルモン「グレリン」が増える。

時間だけでなく睡眠の質も重視したい。筋肉や肌などの新陳代謝を促す成長ホルモンの分泌には、就寝後2~3時間の深い睡眠が欠かせないためだ。正しい睡眠リズムを取り戻すためには、「体温周期に合わせて眠ること」と西多講師は語る。体のパフォーマンスは体温に比例。体温は日没数時間後から下がり始め、深夜から夜明け前が低いので、体を休めるよう心がける。早く床につける休日は夜23時に就寝して朝6時には起床したい。
加えて大切なのが、体温周期は25時間のため、日光を浴びてリセットすることだ。「起床後、日光を浴びながら体を動かすのが効果的」(西多講師)
まずは休日に早寝をして、理想的な睡眠の効果を実感することから始めよう。

【休息の取り方のコツ】
2.夜の入浴はぬるめでササっと済ませる。ゆっくり入りたいなら、夕方に
3.飲酒・喫煙・無駄な怒りはエネルギーの三大破壊行為なので避ける
4.夕食は早めに野菜スープなどを。食べる量を減らして胃腸を休め、消化力を上げる
5.22時までに寝て、5時半前後に起きるのが理想的
6.自分の頭の中を反映する机まわりを、きちんと整理してから寝るとぐっすり眠れる
この人たちに聞きました
百済診療所院長、日本薬科大学教授。院長を務める百済診療所にて、本格的な漢方処方から最新の西洋医学までを組み合わせた幅広い診療を行っている。
順天堂大学大学院加齢制御医学講座客員准教授。東大医学部付属病院などで内分泌・代謝内科の臨床研究に従事。アンチエイジング(抗加齢)医学が専門。横浜クリニック院長。
自治医科大学講師。精神科医。国立精神・神経医療研究センターなどで臨床業務に従事、ハーバード・メディカル・スクールにて睡眠医学の研究を行う。本精神神経学会専門医。
(日経ヘルス 宇野麻由子、ライター 藤井弘子、イラスト おおさわゆう)
[日経ヘルス・フォーメン2012年春号の記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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