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睡眠不足だと危ない 「更年期高血圧」にご用心

日経ヘルス プルミエ

NIKKEI STYLE

 実は更年期は血圧が上がったり下がったり変動しやすい時期なのです。放っておくと、やがて本格的な高血圧へと進んでいってしまいます。だからこそ、この時期の対策が肝心。さあ、血圧改善ライフを始めましょう。

最近、血圧が高くなってきた。以前はむしろ低血圧だったのに……。40、50代になると、こんな悩みを抱える女性が増えてきます。実は、更年期は血圧が不安定になりやすい時期。少し高めという予備軍も含めると、高血圧の人は40代でおよそ4人に1人(28%)、50代では2人に1人(49%)に増えます。

「女性ホルモンのエストロゲンには、血管を拡張させる働きがありますから、女性は男性に比べ、若いころは血圧が低い。しかし40代に入ってエストロゲンが減りだすと、血管の柔軟性が低下し、血圧も次第に上がっていきます」と静風荘病院(埼玉県新座市)女性外来の天野恵子さんは話します。

特にエストロゲンが激減する更年期には、血圧が上がったり下がったりの"乱高下"状態になることも珍しくありません。「女性の場合は、更年期の前からじわじわ高くなる人と更年期を機に急に高くなる人がいます。後者は、いわば『更年期高血圧』とでも呼べる状態。ストレスなどちょっとしたことで血圧がぐんと上がったり、また元に戻ったりを繰り返します。以前は低血圧だったという人にも見られます」と東京大学医学部循環器内科准教授の平田恭信さん。

また最新の研究結果では、ホットフラッシュ(発汗やほてり)との関係も明らかに。これは更年期女性1058人を対象にした自治医科大学とテルモとの共同研究。同大学循環器内科教授の苅尾七臣さんは、「更年期にホットフラッシュのある女性は、そうでない人より血圧が高い傾向にあり、特に喫煙者で顕著でした。実際の診療でも、ホットフラッシュに悩む人は血圧も乱高下していることが多い」と話します。

もう一つ、高血圧と深い関係にあるのが、妊娠時の体調。「妊娠していた時に血圧が上がったり、尿にたんぱくや糖が出たりした人は、中年以降、高血圧になりやすい」と苅尾さん。

血圧はよほど高くならないと頭痛などの症状は表れず、基本的に無症状。血圧を測って初めて高いことに気づいたという人がほとんどです。ホットフラッシュや妊娠高血圧だけでなく、「体質」や「血管の老化」「食塩のとりすぎ」「交感神経の緊張」も高血圧を招くリスクになるので、ご用心!

まずは右のリスク表で危険性のチェックを。

高血圧を放置すると将来、脳卒中や心筋梗塞など命を脅かす重大な病気になる危険性が増します。それを防ぐためにも、更年期からの血圧管理がとても重要です。

~"更年期高血圧"を放置すると本格的な高血圧に~

【血管の老化】
 加齢や喫煙、運動不足、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病などで、血管のしなやかさが低下し、血圧が上がる。
対策は→ スタスタ&ゆるりウオーク

【食塩のとりすぎ】
 食塩の多い食事をとって腎臓が塩分を排出しきれないと、ナトリウム濃度を一定に保とうと血液量が増加、血圧が上がる。
対策は→ 減塩+たっぷりカリウム、肥満の解消

【交感神経の緊張】
 睡眠不足やストレスなどで交感神経が緊張し、血管が収縮したり、血圧を上げるホルモンが出たりして血圧が上がる。
対策は→ ぐっすり睡眠とストレス対処

【血管を拡張させる女性ホルモンの減少】(40代、50代女性特有)
 エストロゲンには血管拡張作用があり、高血圧を防いでいる。更年期にはこれが減少するため、血圧が上がりやすい。
       ▼
血圧が乱高下しやすい"更年期高血圧"に
 更年期は血圧が上がりやすい時期。高いままというより、急にポーンと高くなるなど乱高下して不安定なのが特徴。
       ▼ 放置すると
本格的な高血圧に
 血圧が乱高下する不安定な状態は更年期を過ぎると治まるが、高止まりのままで本格的な高血圧へと移行する。
       ▼ 将来
脳卒中、心筋梗塞、認知症などのリスク大
 高血圧が続くと動脈硬化が進み、さらに血圧が上がるという悪循環に。やがて心筋梗塞や脳卒中などの危険性が。

この人たちに聞きました

苅尾七臣(かりおかずおみ)さん
 自治医科大学循環器内科教授。自治医科大学卒業。専門は高血圧、動脈硬化など。コーネル大学医学部循環器センター、コロンビア大学医学部客員教授などを経て現職。更年期女性と高血圧との関係も研究。
 
平田恭信(ひらたやすのぶ)さん
 東京大学医学部循環器内科准教授。東京大学医学部卒業。三井記念病院、ミネソタ大学内科などを経て現職。動脈硬化、高血圧、メタボリックシンドロームなどの治療研究に当たる。今年4月からは東京逓信病院に勤務。
 
天野恵子さん
 静風荘病院(埼玉県新座市)女性外来。東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。千葉県立東金病院副院長、千葉県衛生研究所所長などを経て現職。性差医療の第一人者。自らも更年期症状に悩まされた経験を持つ。

(日経ヘルス 黒住紗織・ライター 佐田節子)

[日経ヘルス プルミエ2013年春号の記事を基に再構成]

[参考]日経ヘルス プルミエ2013年春号では「大人の女性のお腹やせ!」のほか、「妻と夫の更年期取扱説明書」、「目元から若返るマイナス7歳のアイメイク」「老眼は我慢しないで」などを掲載している。

日経ヘルス プルミエ2013春

著者:
出版:日経BP社
価格:680円(税込み)

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