髪や爪にも効果 コラーゲン、そのとり方はNG
日経ヘルス
サプリだけではだめ、コラーゲン豊富な食材と一緒に

「コラーゲン不足ならサプリをのめばいい、と思うかもしれないが、サプリだけではだめ。アミノ酸バランスの良いたんぱく質も一緒にとることが肌のためには必要」と話すのは、東京農業大学応用生物科学部の大石祐一教授。
「たんぱく質が不足すると、新しいコラーゲンの合成や古くなったコラーゲンの分解がうまくいかず、コラーゲンの生まれ変わりに悪影響を及ぼす」(大石教授)からだ。
コラーゲンというと、鶏の皮など特定の食材にだけ含まれていると思いがちだが、豚こま切れ肉やサケ、ウナギなど身近な肉や魚にも含まれる。つまり、これらの食材をとっていれば、たんぱく質とコラーゲンの両方がとれるというわけだ。
より効率よくコラーゲンをとるには、調理の後に冷めると身がぷるっと固まる、肉のすじや軟骨のほか「赤身の多い硬い肉、皮が厚い魚には比較的コラーゲンが多い」と、ニッピのバイオマトリックス研究所の小山洋一主任研究員は言う。
肌への効果を期待するには、「ヒト試験で論文報告されている1日5~10gを目安にとるといい」(皮膚科医で藤田保健衛生大学医学部の赤松浩彦教授)。小山研究員によると20~50代の日本人女性の食事からのコラーゲン摂取量は1日1.9g。足りない分はサプリで補給するのも手だ。

逆に、せっかくコラーゲンを摂取していても、その効果を下げてしまう成分もあるので気をつけよう。揚げ物などの高脂肪食をとり過ぎると、善玉ホルモンのアディポネクチンが減少して、「コラーゲンやヒアルロン酸の合成を低下させる」と大石教授。さらに、糖分のとり過ぎで血中に高血糖の状態が続くと「コラーゲンが糖化という異常たんぱく質に変化してしまう」(大石教授)ことに。佐藤教授も糖化について注意を促す。
「コラーゲン中のアルギニンが糖化されると、そこに結合するはずの線維芽細胞が結合できなくなり、張力が保てず肌のハリがなくなる。線維芽細胞も弱ってしまう」と説明する。
■一緒にとってパワーアップ髪や爪、骨の健康にも役立つ
コラーゲンをとる際にはコラーゲンの合成に必要なビタミンCも一緒にとろう。「体内でコラーゲンが安定して維持されるために欠かせない」と小山研究員。紫外線によるコラーゲンの損傷の予防にも役立ちそうだ。
また、肌の真皮でコラーゲンの構造を支える働きをするエラスチンを、コラーゲンと一緒にとると美肌効果がアップする。魚由来のエラスチンを販売する、はごろもフーズ・バイオ営業部の名倉洋輔課長代理は「細胞での実験だが、コラーゲンと同時に存在すると、線維芽細胞1個当たりのヒアルロン酸産生量が増える」という。

名倉氏らが開発したエラスチンはマグロの心臓の動脈球が原料だが「豚の血管やカツオの心臓から作られたものが化粧品原料などとなっている」。身近な食品から摂取することは難しいので、サプリで補給したほうがよさそうだ。
肌のたるみに効く以外にも、コラーゲンをとり続けると爪や髪にも良いという研究が国内外で多数報告されている。「2カ月ほど続けてとると効果があるようだ」(小山研究員)。
また、赤松教授も「高齢者のもろくなった爪を丈夫にするのは薬では難しいが、コラーゲンを薦めたところ、一部の人で丈夫になった」と話す。
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コラーゲンには、体内で作れない必須アミノ酸のトリプトファンが含まれず、たんぱく質として再合成されない。肌たるみには有効だが、美肌のためには魚や卵など食事でたんぱく質をとろう。
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【コラーゲンをとるとほかにもこんな良いことがある】
老化などによって爪の表面がもろくなった状態を改善する。1957年に海外で研究された(爪に問題のある患者82人が1日7gのゼラチンを3カ月摂取)。赤松教授も外来患者で効果を確認。
髪が太くなる
髪のハリやコシに影響する毛髪の直径が増す。メカニズムは不明だが、女性を対象にした実験で、コラーゲンペプチドを8週間とると、直径が増加し、自覚症状で髪の「なめらかさ」が改善した。明治らの研究。
骨が丈夫になる
骨密度を上げて骨を強くし、関節炎などの痛みを軽減する。骨の内部にある骨芽細胞はコラーゲンなどのたんぱく質を分泌して網目の構造を作り、強度を保っている。軟骨に比較的多いヒアルロン酸も増える。
傷が治りやすくなる
傷を治す仕組みは、「線維芽細胞が炎症を起こした傷に集まり、コラーゲンの合成を活発にさせて傷を修復する」(佐藤教授)。コラーゲンをとっていると、線維芽細胞が増え、傷を治りやすくする。手荒れにもいい。
(日経ヘルス 大屋奈緒子・ライター 松岡真理)
[日経ヘルス2012年8月号の記事を基に再構成]
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