机周りを改善 「こり疲れ」知らずになる正しい座り方
日経ヘルス
ビジネスパーソンの"こり疲れ"に直結する、オフィスでの座り姿勢。でも、上のお手本のような"いい姿勢"を意識し続けるのは、やっぱり大変。楽して確実にいい姿勢をキープするには、机まわりから整えるのが一番。 下のチェックリストに従って、早速、机まわりを整えてみよう。
モニター、キーボード、いすの3つを調整したら、あとはお手本のように、いすに深く腰掛けるだけ。腰が立ち、背筋が伸びた状態を楽にキープできるようになるので、体への負担も減ってこりや疲れが軽くなる。
"こり疲れ"知らずの机になるチェックリスト

□ 体の正面に置く
□ 目線の高さに合わせる
□ 画面の明るさを調整する
【キーボード】
□ ひじが曲がる位置に置く
□ コードの長さを調整する
【いす】
□ 太ももが床と平行になる高さに調整する
□ いすの足が机の下に入るスペースを確保する
【オフィス空間】
□ 照明を暗くしすぎない
□ 本棚や荷物など邪魔なものを移動する
目がつらいときはメガネを活用したり、オフィスの照明や空調に原因がないかも確認しよう。髪型が影響することもある。
そもそも、パソコンを使うと肩が凝ったり、目がすごく疲れやすくなるのはなぜなのか、専門家に聞いてみた。対策も教えてもらったので、以下を参考にしてほしい。



A 肩や頭を固めてしまうから。
目を動かすとき、首は無意識に固めているはず。指先を動かすときも肩まわりの筋肉を固めている。どこかを動かそうとするときはその周りの筋肉を固めないと、動作ができない。
「目や指先を動かし続けるパソコン作業では、首も肩まわりの筋肉も頑張って固定している状態。それが長時間になると筋肉が過剰に緊張して、血管や神経が圧迫されるので痛みを誘発したり、血流が悪くなって冷えやむくみを招いたりする」と首都大学東京健康福祉学部の竹井仁教授。老廃物が流れず、乳酸がたまった状態になるので、疲れも取れにくくなる。1時間に1回は立ち上がって歩くことも、こり防止には大事。
A パソコンやいすの位置も影響します。
凝りにくい座り方のポイントは、腰が丸まらないように骨盤を立て、両側のお尻の下にあるぐりぐりした「坐骨結節」を座面につけて体を支えること。こうすると、首から腰につながる背骨が緩やかなS字曲線を描き、頭の重さを分散させる"サスペンション"がきちんと働いて、姿勢を支える筋肉の負担を減らせる。しかし、この姿勢を維持するには腹筋を使うので、背もたれなどの支えがないと長続きしにくい。
一方、いすに浅く座ることで背中が背もたれから離れると、腰が落ちて骨盤が後傾しやすくなる。「いすは、背もたれから拳一つくらいまで深く座り、机に近づける。胸椎8番(猫背になったとき一番出っ張るあたり)をクッションなどで支えるといい」(竹井教授)。こうすると画面が近くなるので、あごを前に出したり、目線を合わせようとして首をもたげることもなくなる。
A 明暗の差、明るさの変化を減らすことです。
パソコン作業で目が特に疲れるのは、目の仕組みと関係がある。「目は、瞳孔を大小させて、明るさに対応している。従って、背景との明るさの差が大きいほど、目の調整機能に負担がかかる」と、労働安全衛生総合研究所の岩切一幸主任研究員は話す。目が疲れるなら、まずはモニターを少し暗くしてみよう。後付けのフィルターを貼って、液晶画面の光沢を抑える方法もある。
盲点は、オフィス空間の照明。暗すぎると目には負担になる。
首の後ろの筋肉が凝り、神経が圧迫されて、かすみ目が起きることもある。「首の後ろを気持ち良いくらいにマッサージしたあと、背筋を伸ばしてあごをぐっと引き、20秒キープ。これを3回繰り返すと楽になります」(竹井教授)。
A 深層筋までほぐすにはストレッチを
マッサージはリラックスできて、こりも楽になる。「でも、ほぐした筋肉を自分でストレッチしてさらに動かすと、血流はマッサージの1.5倍改善する。自分の悪い姿勢や動きを知り、短くなった筋肉は伸ばし、たるんだ筋肉は鍛えることも、さらに大切」(竹井教授)

A 腰を立てて、左右均等になら……
「脚を組みたくなるのは、ねじれてアンバランスになっている体を無意識に安定させようとするため」と、木津さんは話す。男性のようにがばっとひざを開いて座れば体は安定するのだが、女性ではそうもいかない。脚を組むと、ひざを閉じる筋肉が弱くても股関節まわりにある筋肉の張力で支えられるので、楽に安定する。短時間、左右均等に組む分には大きな問題は出なさそうだが、「脚を組むと、骨盤は後傾しやすい。さらに、長時間組んでいると股関節やお尻の筋肉が張って痛みが出たり、片側ばかりで組むと体がますますねじれる」(木津さん)。
この人たちに聞きました
首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。筑波大学大学院修士課程修了。2002年、医学博士(解剖学)学位取得。理学療法士。医学的知識に基づいた筋力トレーニング、リハビリテーションを研究。近著に『不調リセット』(ヴィレッジブックス)など。
KIZUカイロプラクティックグループ代表院長 http://www.kizuchiro.com オーストラリア公立マードック大学卒(カイロプラクティック健康科学士、グラストンテクニック認定プロバイダー)1992年に東京日本橋で開業。マウスの使用が身体を歪ませるという「マウス症候群」を提唱。三越前と二子玉川に分院を構える。WEB新聞「週間カイロプラクティックニュース」http://www.chiro-news.com/を主宰する。テレビ、雑誌、新聞など各メディアで活躍。
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 有害性評価研究グループ主任研究員。パソコン利用時の疲れの原因、改善すべきポイントなどに詳しい。
(日経ヘルス 西山裕子、モデル 廣野理恵)
[日経ヘルス2011年12月号の記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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