モモンガ、ドクロ… 女性の仕事服「NG」集


「きょう紅白歌合戦に出場するの?」。総合商社に勤める20代の女性は、出社するなり40過ぎの男性上司からこうからかわれた。彼女が着ていたのは肩に銀色の飾りがたくさんついたトップス。女性の同僚には好評だったものの、この一言で、カーディガンやジャケットを羽織らなければ着られなくなった。
石油製品仲介のギンガ・エナジー・ジャパン(東京・港)で石油ブローカーとして働く浜田麻未さんは、シンガポールで購入した茶色のワンピースを職場で着て失敗した。肩や胸元の露出具合が気になり、「暑くても上着が脱げなかった」。同僚の渡辺美千さんは、今はやりの花柄パンツをはいていったところ「大阪のおばちゃんみたい」といわれ、「部屋着になりました」と苦笑する。
この数年人気が出ているドルマンスリーブ。袖ぐりがゆったりと深いものだが、高速ツアーバス大手のウィラー・トラベル(大阪市)勤務の成島千絵さんが着ていると、「モモンガみたい、どこかに飛んでいくつもり?」と上司。「モモンガ」が頭から離れなくなり、プライベートですら敬遠するようになってしまった。


洋服だけではなくアクセサリーにも注意が必要だ。PR企画会社リアライズ(東京・港)の森園麻衣子さんが耳元のアクセントになると思って買った羽根付きピアスは、「エスニック色が強い」との評価が下され、部屋の飾りに格下げ。小売業に勤務する40代女性は「気に入って買ったドクロの飾りがついたネックレスは、『縁起が悪い』と言われてお蔵入りになってしまった」。

一般的に、女性のどんなオフィススタイルがNGと思われているのか。日本経済新聞社が調査会社のマクロミルを通じて会社員の男女3296人に行ったアンケートによると、「女性の服装は職場にふさわしくない感じたことはあるか」との問いに対して「ある」と回答した人は1502人(46%)いた。
「具体的にどんな服装・スタイルが気になるか」では、「肌の露出度が高いもの」が44%でトップとなり、「胸のボタンが大きくあいているなど、胸元が強調されたように見えるトップス」が34%、「下着が透けるような薄手の服」が32%と続き、主にセクシーに見えてしまう服が"危険"と見られている。
最近の20~30代女性の服選びに同様の傾向が現れている。集英社の公式ショッピングサイト「FLAG SHOP」を運営する、集英社ブランド事業部の小倉千絵室長によると「キーワードは『横並び』」。フェイスブックなどを使って友人とのつながりを感じているこの世代は「嫌われたくない」「仲間はずれにされたくない」という意識が強い。

その結果、支持されにくいとされるのが「セクシー」「ゴージャス」「アニマル」系ファッション。セクシー系は男性ウケを狙っているように見え、ブランド物などで着飾るゴージャス系は反感を買い、アニマル系は目立って浮いてしまう。基本的には「みんなと似ている」ことが大切だが、ほんの少し「自分らしさを出したい」と思っているようだ。
「何より20~30代はお金にシビア。かわいいだけでは服は買わない」と小倉室長。同サイトで人気が集まるのは汎用性のあるワンピース、シャツなど。休日だけでなく通勤でも着られる服であることが重要だそうだ。
スーパークールビズはじめカジュアル化の流れで、「仕事服の基準がわかりにくくなっている」という女性は多い。だからこそ、NGファッションに対して時にユーモアをまぶした「指摘」は必要か。ただ、問題がない服装なのに「気分転換に女性らしいワンピースを着ていくと必ず『今夜合コン?』と詮索されるので着なくなりました」(IT、20代)。女性への「ダメ出し」は慎重に。
(井土聡子、黒瀬幸葉)
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