肩こりがたちまち軽くなる、肩甲骨はがしストレッチ

肩がずーんと重く感じられる肩こり。肩甲骨が背中に張りついているような感覚がある人も多いだろう。整形外科医で、東京医科大学整形外科学分野講師の遠藤健司さんは、「肩甲骨は本来、肋骨の上をすべるように動く。だが肩こりの人は、肩甲骨が肋骨に癒着したようになって、動きが悪くガチガチになっていることが多い」と話す。ガチガチ肩甲骨かどうかは、背中を壁につけて立ち、腕を上げるだけでわかるという。
「水平から45度までは、肩関節だけで腕が上がる。だが、それ以上に腕を上げるのは、肩甲骨の動き」(遠藤さん)。つまり、45度まで上がらないと肩甲骨はガチガチというわけ。
そもそも肩こりには、「深い部分にある菱形筋と肩甲挙筋が大きく影響する。どちらも肩甲骨を動かす筋肉で、これらが硬くなると、肩甲骨の動きが悪くなり、ガチガチ肩甲骨になってしまう。だからこの2つをほぐし、意識的に鍛えることが必要」(遠藤さん)。「肩甲骨はがしストレッチ」でまず肩甲骨を動かせる範囲を広げてから、「肩甲骨はがし筋トレ」で2つの筋肉を鍛えよう。肩こり、首こりから猫背まで解消できる。
腕を上げるだけでわかる 肩甲骨ガチガチ度チェック
壁に背をつけて立ち、腕がどのくらいの角度まで上がるかで肩甲骨の動きの悪さ、"ガチガチ度"がわかる。自分で角度がわかりにくければ、周囲の人に見てもらおう。




【2つの「肩甲骨はがし」で、肩から首がたちまち軽くなる】
「肩甲骨はがし」は、まずストレッチをしてから、筋トレをする。肋骨から肩甲骨がメリメリッとはがれるような感覚は、爽快。ぜひ味わって。
まずは、肩甲骨の動かせる範囲(可動域)を広げる「肩甲骨はがしストレッチ」を。これは、先ほどのチェックとは逆に、上げた腕を下げていく。できるだけ遠くに手を伸ばしながら行うことで、肩甲骨の柔軟性を徐々に高めていく。
四十肩・五十肩の人は、「四つばいで同じ動きを行うといい。肩関節のはまり具合が立っているときと異なるので、行いやすいはず」と遠藤さん。
仕上げに、菱形筋と肩甲挙筋を鍛えて肩甲骨を正しい位置に整える「肩甲骨はがし筋トレ」を行おう。
「肩甲挙筋は、文字通り肩甲骨を上げる筋肉で、菱形筋は肩甲骨を後ろに寄せる筋肉。これは、肩甲骨を上げてから、ぐいっと寄せる動き。だから、2つの筋肉を効果的に鍛えられる」と遠藤さん。肩甲骨が肋骨から「はがれる」ような爽快感もある。
「肩甲骨はがし」は、猫背改善にも効果的だ。「猫背では、首に大きな負担がかかるが、猫背が改善されれば、首こりもよくなる。四十肩・五十肩が改善する人もいる」と遠藤さんは薦める。
肩が凝ると、手で強くもみがちだが、「強くもむと、浅い部分の僧帽筋の血行は良くなって、一時的に凝り感はとれるが、深層の肩甲挙筋や菱形筋には働きかけられない」(遠藤さん)。だから、しっかり動かすのがいい。
なお、肩こりは自律神経にも影響する。「肩が凝っていると、筋肉の緊張が強くなる。すると交感神経が優位になり、血管は収縮して、手足が冷えやすくなる」と遠藤さん。ぜひ「肩甲骨はがし」を日課に。
肩甲骨の可動域を広げる、肩甲骨はがしストレッチ
まず、肩甲骨の動きを良くするストレッチを行う。四十肩・五十肩で腕が上がりにくい人は、四つばいで同じ動きを。


肩甲骨を正しい位置にする、肩甲骨はがし筋トレ
一度に、二つの深層筋、肩甲挙筋と菱形筋を鍛える。四十肩・五十肩で腕が上がりにくい人は、腕を水平にしてスタート。


東京医科大学整形外科学分野講師。東京医科大学卒業。大学院時代から肩こり、首由来の平衡障害(めまい)に関連した研究を行い、米国ロックフェラー大学留学時は神経生理学を専攻。東京医大茨城医療センター整形外科医長を経て、2007年より現職。近著に『本当は怖い肩こり』(祥伝社)。自身も「肩甲骨はがし」で五十肩が改善したという。
(日経ヘルス 白澤淳子)
(スタイリング 中野あずさ=biswa.、ヘア&メイク 木下 優、モデル すみれ)
[日経ヘルス 2016年2月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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