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日没後の運動は不眠を招く 早期治療には漢方薬

女性のお悩み解決手帳

NIKKEI STYLE

日経ヘルス
ストレスや体調不良をきっかけに引き起こされる不眠。2回目の今回は、初期の不眠状態に当たる「急性不眠」への対処法を解説する。効果的なのが漢方薬の服用だ。また、暗くなってからの運動も覚醒度が上がって不眠につながるため、避けた方がよい。

急性不眠は漢方薬を使うと早く治せる。「漢方薬は覚醒度を落として眠らせるのではなく、心身のバランスを整えて眠れる状態をつくる」と東邦大学医療センター大森病院東洋医学科の田中耕一郎講師。そのため、不眠だけでなく、日中の不調を改善する効果も高い。

女性のストレス性不眠でよく用いられる薬は主に4つ。「ストレスで心が高ぶり、そのことばかり考えて眠れない人には抑肝散(よくかんさん)や柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)。疲れやすくイライラやほてりがある人には加味逍遥散(かみしょうようさん)、仕事の重圧で悩みがちな人には加味帰脾湯(かみきひとう)が合う」と田中講師は話す。

抑肝散は興奮による筋緊張をとる効果が高いので、安静にすると脚がむずむずして、じっとしていられなくなる「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」にも効く。

肩から首にかけて冷えて眠れない人には葛根湯(かっこんとう)、下半身が冷えて頻尿になった人には体を芯から温める牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が効く。

夜のランニングは要注意

「不眠につながる生活習慣の改善も並行して行うと、より効果が出やすい」と田中講師はアドバイスする。例えばカフェイン。眠りを催すアデノシンの働きをブロックして覚醒させるうえ、概日リズムを遅らせるので、就寝4時間前までにはとるのをやめること。

寝酒もNGだ。「アルコールは脳のGABA受容体に結合して眠気をもたらす反面、深い睡眠を減らす。代謝が速いため途中で作用が切れ、禁断症状としての早朝覚醒を起こすほか、アルコール依存につながる恐れもある。晩酌を楽しむ程度にとどめて」と国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島和夫部長は話す

暗くなってからの運動にも注意が必要だ。「日中の活動量が高い人は疲れているので、夜にランニングをしても眠れるが、活動量の低い人が同じことをすると逆に覚醒度が上がって眠れなくなる。その場合はむしろ日中に運動を」と滋賀医科大学精神医学講座の栗山健一准教授は話す。

一方、新たな不眠対策として注目されているのが「マインドフルネス瞑想」。後悔や取り越し苦労をやめ、"今この瞬間"に意識を集中させるトレーニング法で、軽い不眠がある人の睡眠の質を向上させ、疲労、うつを軽減することが確かめられている。

次回は、慢性不眠を改善するテクニックやリラックス法を解説する。

この人たちに聞きました

三島和夫さん
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部長。専門は不眠症、概日リズム障害の研究と治療。「睡眠薬は眠りに対する不安を軽減するという意味では根治的な治療といえる。薬をやめるときのハードルも低くなっているので、不眠が1カ月以上続いたら躊躇せずに受診してほしい」
田中耕一郎さん
東邦大学医療センター大森病院東洋医学科講師。日本東洋医学会認定漢方専門医。吉祥寺東方医院(東京都武蔵野市)でも診療を行う。「食事をとったほうが眠りやすいときもある一方、食べすぎや消化不良で不眠になることもよくある。胃もたれで眠れないときには平胃散を試してみて」
栗山健一さん
滋賀医科大学医学部医学科精神医学講座准教授。専門は精神医学、睡眠障害、ストレス障害。睡眠と記憶、情動の関係の研究などに携わる。「レストレスレッグス症候群は女性に多いが、症状が軽いと見落としやすい。鉄剤やドーパミン作動薬で治す方法もあるので睡眠外来でも相談を」

(ライター 小林真美子)

[日経ヘルス2016年3月号の記事を再構成]

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