食物アレルギーは肌の湿疹から始まる 乳児期から保湿を
食物アレルギーの発症が最も多いのは0歳で、患者のほとんどは10歳以下の乳幼児。その理由は乳幼児の消化機能が未熟なためと考えられてきたが、最近の研究で、乳児期のアトピー性皮膚炎が食物アレルギーリスクを高めることが分かった。
「子どものアレルギーを予防するために妊娠中・授乳中に卵や牛乳などを避ける人がいるが、そうした特定の食品の摂取制限には意味がない。それよりも新生児のときからしっかり保湿をして肌のバリア機能を高め、湿疹が起こらないようにするほうが効果がある」と国立成育医療研究センター研究所の松本健治部長。
海外の研究では、ピーナツを食べなかった子どもより、食べていた子のほうがその後ピーナツアレルギーになりにくかった。ピーナツ油を肌に塗った子どもにピーナツアレルギーが多いことも分かっている。

食べたものを異物として攻撃しないように、免疫が寛容になること。経口免疫(減感作)療法はこの仕組みを利用した治療法。
●経皮感作
湿疹を介して取り込まれたアレルゲン(抗原)に対して、免疫反応が起こること。この状態が続くことでアレルギー反応が起こる。
「健康な皮膚にアレルゲン(抗原)が触れても心配はないが、問題は湿疹がある肌。湿疹があるところに抗原が触れ続けると、数日間でアレルギー発症のきっかけとなるIgE抗体ができてしまう」(松本部長)

生体には、最初に入ってきたものに対して免疫を獲得する「感作」というシステムがある。この免疫反応でIgE抗体が作られ、アレルギー疾患を発症してしまう。
本来皮膚は感作を起こしにくいが、湿疹があると皮膚表面の抗原を免疫細胞が取り込むために、"経皮感作"が起きる。だから保湿をしてバリア機能を高めることが重要なのだ。

一方、口から入った食物に対しては、免疫反応が起こらないようにするシステムが働く。これを"経口免疫寛容"という。この仕組みを利用して、アレルギーの原因食物を少しずつ食べてアレルギー耐性を獲得する治療法があるが、同様に、健康な皮膚から少量の抗原を塗りこんで花粉症などを治療する経皮免疫療法も研究が進んでいる。
「大人でも経皮感作により食物アレルギーを発症する可能性がある。湿疹ができたら早めにステロイド外用薬で治療を」と松本部長。年齢を問わず、湿疹治療は重要と強調する。

この人に聞きました

国立成育医療研究センター研究所免疫アレルギー研究部 部長。高知医科大学医学部卒業。同大学医学部付属病院小児科、国立小児病院小児医療研究センター、理研免疫アレルギー科学総合研究センターなどを経て現職。日本アレルギー学会指導医。
(ライター 牛島美笛)
[日経ヘルス2015年1月号の記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連キーワード