尿路結石、運動不足や過食が誘発も コロナ下は要注意

体内の水分が不足して尿が濃くなると発症しやすいのが尿路結石。新型コロナウイルス禍での在宅勤務による運動不足や食生活の変化が誘発する可能性もあるという。激しい痛みを伴うだけに、気を付けたい。
「最近は外出を控えるようになり、体を動かさなくなった」「在宅勤務のストレスでつい間食してしまう」。コロナ禍をきっかけに、適度な運動やバランスのとれた食生活が続けられなくなった人もいるだろう。こうした変化は生活習慣病の原因にもなりかねない。さらに「生活習慣病と尿路結石には相関関係がある」と指摘するのは千葉大学医学部付属病院(千葉市)の坂本信一医師(泌尿器科)。尿路結石の発症リスクが高まる可能性もあるという。
尿路結石は男性の7人に1人、女性は15人に1人が発症するとのデータもある身近な病気だ。腎臓や尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道といった尿の通り道(尿路)で、尿中のシュウ酸やカルシウムといった成分が固まって結石ができる。腰から脇腹や背中にかけて突然の激痛や血尿が起こることがある。
「結石で尿管が詰まって尿の流れを塞ぐと、圧力の上昇や尿管のけいれんによって激しい痛みが起こる」と坂本医師は説明する。結石が尿管下部や尿道にあると、頻尿や残尿感、排尿痛といった症状もみられる。一方で結石が腎臓や膀胱にあって尿の流れを塞がない場合には多くが無症状だという。
発症のリスクが高いのは肥満、尿酸値が高い、糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病を抱える人だ。コロナ禍での生活習慣の変化を踏まえ、坂本医師は「運動不足や過食による肥満には特に注意が必要だ」と呼びかける。

一般的に男性よりも女性の患者の方が少ないが、みたか南口泌尿器科クリニック(東京都三鷹市)の長尾慶治院長は「閉経後の女性も要注意」と話す。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの減少が発症に関わることが明らかになっているのだという。
予防には生活習慣の改善が欠かせない。まず水分摂取。1日に2リットル以上を心がけたい。水や麦茶がいいようだ。夏に発症しやすいのは体内の水分が不足して尿の濃度が高くなり、結石が生じやすくなるからだ。普段以上に水分摂取を意識する必要がある。
コーヒーや紅茶、高級な緑茶、ホウレンソウといった食品には結石の原因となるシュウ酸が多く含まれる。取り過ぎは控えよう。カルシウムは結石の成分でもあり、かつては摂取制限の動きがあったが、今では適度に取るよう推奨されている。カルシウムが腸内でシュウ酸と結合し、便として排出されるため、尿中のシュウ酸が増えにくいとされる。例えばコーヒーを飲むときには牛乳を入れるのがおすすめだという。
アルコールも要注意。坂本医師は「ビールに多いプリン体が尿酸値を高め、結石を誘発しかねない」と忠告する。
もちろんカロリーの高い食生活や運動不足での肥満にも気を付けたい。
治療については結石が小さかったり、無症状だったりした場合、運動や水分摂取で自然に排出されるのを待つことが多い。痛みがある場合は鎮痛薬や結石の排出を促す薬を使って出るのを待つ。
ただ結石が比較的大きくて自然排出を期待できない場合は体外から衝撃波を与えて砕いたり、尿道から内視鏡を入れてレーザーで砕いたりして摘出する。背中から腎臓に穴を開けて内視鏡を入れて砕く手術法もあるが、体への負担は大きい。
尿路結石は再発率も高いという。長尾院長は「結石が見つかったら、専門クリニックで予防指導を受けるのが望ましい」と話す。
(ライター 仲尾匡代)
[NIKKEIプラス1 2021年5月22日付]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。